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硝子とルージュ  作者: 藤子LPちゃん
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はじまり

 トイレに着くと私は鏡を確認する。唇にカツサンドの油が付いていた。私はそれをハンカチで拭い、ポケットにあるリップクリームを唇に付けた。それからトイレを出ていった。



 会社であるビルを退社すると外は常闇の全身に微弱なランタンを付けたかのようにほんのり明るくそして暗かった。

 パラパラパラと雨が落ちる音がする。私は髪を耳の後ろにかき上げると、耳にひんやり湿度がのしかかった。首元に空いた服の隙間から背筋へとするりと風が冴え渡る。

 私は傘を持ってきていないので近くのコンビニで買うことにして小走りに目的地へと向かって駆け抜けた。

 黒色の鞄を頭の上に掲げ、雨よけにする。手首に付けてある時計は防水仕様なので壊れないだろうと高をくくり、のしのしと雨の中進んでいく。

 靴下がじんわりと湿って、足首が軽くなる、硝子の靴を履いたシンデレラのように、とまでとはいかないけれど。

 コンビニに着くとベルの音がして私の入店を知らせた。コンビニはむわむわとし、エアコンが強くは利いていないようであった。私は傘を探すと店内入り口の左側に何本もささって置かれてあった。私はそれを一本取り、何か他に買うものを考える。

 久しぶりに小説を書いてみることを考えた。私は趣味で小説を書くことがあるが、一度も完成したことはない。店内の奥へ進み空色のシャープペンシルと白色のノートを手に取るとカウンターへと向かった。

 会計を済ますと店を出て、傘のビニールを取り、ビニールをゴミ箱に捨て傘をさした。

 パタパタパタと傘に雨が落ちていくのが分かる。

 私はどんな小説を書こうかと少し考える。今日は雨が降っているので、雨から始まるストーリーにしよう、なんて考える。

 私の家はここからバスで二十分程の距離にある。私はバス停へとゆっくりとした歩幅で歩いて行く。すれ違う人が自分と同じ会社の人であるか分からないが、時々すれ違っていく。みんな傘をさしている。今日は雨の日だと天気予報が予想していたのだろうか、私は今日はテレビを観ていないことに思い当たった。明日は観ておこう、そんなことを思って歩いているとバス停に着いた。

 傘を閉じバス停の屋根のある場所に身を委ねると後方からひたひたと音がした。私は振り返るがそこには見知らぬ男がやはり屋根の下ににいるだけだった。

 この音は何か良からぬことが起きる前触れのようなものである。そして私は魔法使いでありこの音を察知することが出来る。

 女魔法使いである。魔女と言った方が正しいのだろうか。バス停の天井からパンパンカラパンと水鉄砲の炸裂のように雨粒が落ちていく音が広がっていた。

 私は背筋がゾクッとした。ひんやりうなじに冷気が触れかかる。

 この町の空気が変わっていた。

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