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硝子とルージュ  作者: 藤子LPちゃん
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無伴奏チェロ組曲

 私は魔法のルージュを落としてしまうことにすると化粧台の前に座り、私の体中に充溢している魔法の気配を消してしまうと口紅を化粧落としで落とした。

 ストンと体が若干重くなる。

 雨で若干濡れている素肌にその雨粒が浸透していくのが分かった。二十九歳の自分に戻ったのである。

 やがて湯沸かし器がお風呂が沸いたことを告げると私は浴室へ向かった。


 いつもより高い温度でシャワーを浴びる。

 それからいつもと同じくらいの温度の浴槽に入った。

 お風呂を出て着替えると時刻は午後二時十分であった。

 私は頭を扇風機の風で髪を乾かすことにして扇風機の前に座り込んだ。

 そういえば薫風に借りたCDがあるな、と思いリュックサックを開けCDを取り出す。ケースから取り出しオーディオのCD取り出し口を開くと中に入れ、音楽を再生する。

 空の曇天模様の薄暗がりのなか音楽が聞こえてきた。

 ヨーヨー・マはチェロ奏者であり、このCDはチェロのみの演奏、無伴奏チェロ組曲であった。

 チェロの持つ温かさが十全に生かされ、かつ紳士的でエネルギッシュ。胸の内が何か温かなもので満たされていくようであった。それは流したばかりの涙にも似ていて、今降っている小雨にも少し似ていた、温度は違うが。

 暗がりにチェロの音色が振動しながら際限なく行き渡る。

 私は扇風機の風を下に向け床に寝転がる。

 風が気持ち良い。

 音楽もとても気持ち良かった。

 雨音がポツポツと音を立てていた。


 葬場には多くの制服姿の生徒がいた。また私は魔法の口紅を付け、十七歳になり制服を着てそこにいた。お坊さんが読経をしているのが聞こえてくる。

 シンと場は静かで心根がピンと背伸びを続けているように薄い緊張感がそこにあった。私は生徒に混ざり焼香を済ました。薫風の友達三人が座席の前列の方で座っていた。薫風はいない。

 薫風はいくつも置かれてある座席の後ろで背中を壁にもたらせ立っていた。

 私は薫風に近寄り話しかける。

「実はこの事件、続きがあるかもしれないの。気をつけて」私はそう言って葬場から出る。

「え?どういうことですか、順子さん」薫風はそう言って追いかけてきた。

 外に出るとやはり静かに雨が降っていて私は傘をさした。

「あのね、犯人は少女の首をコレクションしようとしているの」私は追ってきた薫風にそう言う。

「それって次もあるということですか?」

「ええ」

 風にともない雨粒が唇にとまった。ふと私は自分の唇が深紫色なことに気がついた。

「犯人は連続殺人事件を起こそうとしてる?」

「そうよ。私はそれを食い止めるために努力するわ。けど今のままじゃ犯人の目星が何もつかない。お手上げよ」私は傘を握りしめた手を強くする。

「私も手伝います」

「あなたも危険だわ。手伝っても手伝わなくても。それだけ、外出は控えなさい」私はそう言うとそこから立ち去った。

 九秒程歩いてるとスマートフォンから着信メロディが流れてきた。私はそれに出る。

「順子さん私も手伝います」薫風の声がスマートフォンから聞こえた。

「あなたには無理よ。私にだって無理なのかもしれないのだから。でも出来ることがあったら頼むことにするわ。ありがとう。あなたは気負わないで普段通り過ごしなさい。それとあなたに借りたCD良かったわ。もうしばらく貸してちょうだい。じゃあ今日はこれで」私はそう言って一方的に電話を切った。

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