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あの日君が見せたかった景色は  作者: 雨音
第二章 なんでも屋
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第八話 

 「行ってきます。」


 そう言って閉じた見慣れたドアは少し重く感じた。心配をかけたくなかったとはいえ黙って家を出ることには少しの申し訳なさがあったからかもしれない。今の時間は午前五時。土曜日ということもあってまだあまり人はいない。日が出て間もないにもかかわらず、どこかの蝉はもう鳴き始めている。


 「あれ?雨音ちゃん?今日はやけに早いねー」


 「あ、おばちゃんおはよう!ちょっと夏休みだから旅行でもと思って。」


 「そうかい。気をつけるんだよ。」


 「はーい。」


 昨日まで毎日のように通っていた青く広い海はとても穏やかで、オレンジ色の朝日を反射させてゆらゆらとしている。ふと思い出して私は赤いリュックサックの中から一枚の紙を取り出した。この一枚の紙が私に今回の出発を決意させたのだ。家を出る前にも何度も確認したし、他に忘れ物もない。大丈夫。私はリュックサックを再び閉めなおし、立ち上がった。背中の中頃まである長い髪を後ろでまとめ、大きく深呼吸をすると胸いっぱいに潮の香りが広がった。


 「よし、行くぞ。」


 私は決意を新たにまだ眠っている町を歩き始める。私の中に欠けたものを探しに、そして何か新しいものが見つかると信じて。

 しばらく行くと人影が一つ目的の場所に立っていた。


 「よっ!おはよう。高崎雨音ちゃん、だよね?」


 「はい、おはようございます。」


 「…準備はいい?」


 「…はい!」


 この時私は踏み出したのだ。ひと夏の小さな冒険に。

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