第六話
「へ?」
開け放たれたカーテンから現れたのその女性はとても快活な印象を受ける人だった。歳は私よりも少し上だろうか。髪はボブカットで整えられた明るいブラウンで窓から入る光に当たってとても綺麗だ。片耳を出しているあたりが夏らしい涼しげな印象を受けた。
「私こういうものをやっておるものでして、以後お見知りおきを。」
わざとらしく丁寧な口調で手渡したのは一枚のチラシ。そこには「なんでも屋凛ちゃん、いつでもどこでも営業中!」とカラフルな文字で書いてあった。
「なんでも屋?」
「まぁ要するに困り事の解決に協力しますよってこと。しばらくはこの島にいるから何かあるならそこの番号に電話して下さいな。」
「はぁ…ありがとうございます。」
「じゃあじっちゃん、そろそろ帰るわ。またぼちぼち顔出すと思うけどその時はよろしく。」
「はいはい。どうせ来んなって言っても来るんだからさっさと行け行け。」
「はいはい。またねー。」
そう言ってその人はこちらに手を振りながら出ていった。私はしばらく彼女が出ていった方をボーっと眺めていた。なんか嵐のような人だったな…改めてもらったチラシを眺めた。
「先生、あの人は?」
「小林凛。まぁちょっと前からの馴染みでな。」
「あの人この街の人じゃないみたいだけどここには何しに?」
「ん?さぁな…本人に聞いてみな。」
そう言って先生は立ち上がり部屋の奥へ戻って行った。その顔はなんだか少し暗くて、寂しそうに見えた。
「なんでも屋、ねぇ…」
私はしばらくチラシを眺めたあと四角く折りたたみスカートのポケットにしまった。