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第五話
「先生…先生、おーい。」
「うーん…なんじゃい婆さん、誰か死んだか?」
「誰が婆さんですか。ていうか医者が言うことじゃないでしょ。」
先生は顔にかけた布を取り、大きな欠伸をしながらゆっくりと立ち上がった。結構口は悪いけど悪い人じゃないんだよ。
「なんだ雨音か。今日はなんだ?」
「いや、ちょっと相談があって。」
前に先生には夢のことは話したことがある。まぁその時はふーんて真顔で流されたけど。記憶のことも話したんだけど「俺は脳は専門外だからよくわからんな」てそれだけだった。まぁそれでもちゃんと話は聞いてくれるからいいんだけどね。こんなのなかなか他の人に話したら笑われそうだし。
「お!もしかして困り事?」
突然隣の診察台から声が聞こえてきた。閉まっていたカーテンが勢い良く開けられ現れたその女の人こそが私の夏を大きく変えることになったんだ。