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あの日君が見せたかった景色は  作者: 雨音
第三章 猫と少女
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第二十話

 「はい、捕まえた。」


 「離せよ!姉ちゃん達何なんだよ!」


 捕まった男の子はやはり昼間に会った満くんだった。千尋ちゃんのナイスランによって意外とすぐに捕まった。聞けば走りも彼女が『割と卒無くこなせる事』の一つだそうだ。私は二人を見失わないようにするので精一杯で、追いついた今は肩で息をして乱れた心臓を整えている。


 「で、何でこっち見てたの?」


 「べ、別に関係ないじゃん。」 


 「あぁそう。そう言う態度なら……よっと!」


 千尋ちゃんは満くんの両脇を抱え上げると、ブンブンと回転を始めた。


 「おぉ!何、ちょ、止めろよ!おい!あ、あぁぁぁぁ!」


 「まだまだ!」


 「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 「言うか!?」


 「い、言わない!」


 千尋ちゃんは更に回転の速度を上げた。満くんの悲鳴は更に大きくなった。


 「言うか!?」


 「い、言わない!絶対に言わねぇ!」


 それから二人はしばらく回転を続けた。お互い意地を張り続けた結果、満くんがぐったりとしたところで千尋ちゃんのホールドから解放された。ちょっとやり過ぎな気がするね。満くんはその場に座り込み、千尋ちゃんはその隣に腰掛けた。私はその場に立ったまま尋ねた。


 「えっと…満くんだよね。どうして隠れてこっちを見てたの?」


 「…ちょっと、気になったんだよ。」


 「何が?」


 「……明が。」


 ははーん、なるほどね。


 「……ふーん、なるほどね〜。」


 「な、なんだよ。」


 「べっつに〜。」


 千尋ちゃんは少し茶化すようにニヤニヤとしている。それが分かってか満くんは顔が赤くなってしまった。

 

 「だってあいつ全然学校に来ないから。」


 そんな満くんの一言で私達は我に帰った。その顔はとても深刻そうだ。


 「昼間も言ってたけど、それどういうことなの?」


 満くんはしばらく黙った後、ゆっくりと口を開いた。


 



 

「…アイツの父ちゃんと母ちゃん、死んじゃったんだよ。」




 

 

 これから私達は知ることになる。小さな身体の背負った悲しい過去も。それを助けようとする少年の苦悩も。

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