表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日君が見せたかった景色は  作者: 雨音
第三章 猫と少女
20/28

第十九話

 「そろそろ切り上げようか。今日はもう暗いし。また明日探そ。」


 凛さんのその一言で今日のミイ捜索は終った。気づけば時刻は午後七時。太陽は西に沈みかけており、最後の残光だけがこの街を照らしている。私達は明ちゃんを家に送っている最中だ。


 「…ここ。」

 

 ようやく辿り着いた。来た道を振り返ると遠くにさっきまでいた神社が見えた。あの楠木は高台からこの街を見下ろす守り神のようだ。


 インターホンを鳴らすとすぐに家の人が出てきた。その様子はどこか慌ただしい。 


 「明!どこに行ってたんだ。心配したぞ。」


 「そうよ。何も言わずに出ていったと思ったらなかなか帰って来ないんだもの。あなたに何かあったら…」 


 おそらくお母さんだろか、少し瞳が潤んでいる。よっぽど心配していたようだ。でも少し過剰な気がするのは私だけだろうか。私のお母さんがあまり動じないからなのかもしれないけれど。

  

 「…めんなさい…『おじさん』。『おばさん』。」


 ん?あれ?明ちゃんの小さな返事の中に私は違和感を感じた。あまりにも小さくて隣にいた私にしか聞こえていないようだ。


 「…えっとあなた方…は?」


 「あ、すいません。私達そちらの明さんに依頼を受けたなんでも屋と申します。」


 そう言うと凛さんはチラシを手渡した。


 「依頼…ですか?」


 「はい。こちらの家のミイちゃんを探して欲しいと。」


 それを聞いて二人は一瞬驚いた表情を見せた。やっぱり明ちゃんは二人には言っていなかったようだ。


 「そ、そうですか。ミイを…それで見つかりましたか?」


 「いえ、まだです。力及ばず申し訳ない…。また明日も探してみるつもりです。」


 「そう、ですか…」


 二人は顔を見合わせて何かを考えている。その表情はどこか複雑そうだ。

 突然私の裾を誰かが引っ張った。千尋ちゃんが小さくある一点を指差している。見ると小さな男の子がこっちを見ていた。あの子は…昼間の子かな?千尋ちゃんが手を振ると慌てて行ってしまった。


 「あ、ちょっと。逃げなくてもいいじゃん。」


 千尋ちゃんは走って追いかけて行った。私は凛さん達にことわってふたりの後を追った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ