第十四話
第十三話の鳴神の年齢設定と喋り方を変更しました。
再び外に出ると地獄のような暑さが待っていた。神社までの一本道はゆっくりとした上り坂になっていて徐々に体力を奪っていく。上るたびに見える少し先の景色は蜃気楼となってグニャグニャになっている。
道の両側には黒い瓦屋根の家が転々としており、ある程度上り後ろを振り返れば海が顔を出した。潮の香りとともに運ばれてくる穏やかな風は今の暑さを癒してくれた。上と下に広がる青が混じり合っており、その堺を通っていく船はとても小さくて可愛らしく見えた。
「うーん、気持ちいいね。ここ。」
凛さんはぐーんと背伸びをしながら呟いた。
「はい。…私、海は好きです。」
「へー。…なんで?」
「なんでって…なんでだろう?なんとなくですかね。凛さんは?」
「私も好きだよ。」
「やっぱりいいですよね。」
二人でじっと眺めていると先を行っていた千尋ちゃんの声が上から聞こえてきた。
「ねぇ、早くいかないとぼちぼち夕方になっちゃうよ。」
時計を見ればやがて四時を回ろうとしている。太陽を見れば真上というよりも西に傾いていた。
「あぁ、ごめんね。今行くから。」
「海なんていつでも見られるよ。あいつは逃げないんだから。」
「確かにそうだね。ごめんごめん。」
明ちゃんは千尋ちゃんの少し後ろでそわそわしている。一刻も早く行きたいんだろうな。私は再び上り始めた。
「………忘れられるしね。」
「?」
「…ううん、何でもない。」
すれ違いざまに何か凛さんが呟いた気がしたけれど何も聞きとることができなかった。でも笑顔になる一瞬の間に見せた凛さんの顔が忘れられなかった。




