表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日君が見せたかった景色は  作者: 雨音
第三章 猫と少女
15/28

第十四話

第十三話の鳴神の年齢設定と喋り方を変更しました。

 再び外に出ると地獄のような暑さが待っていた。神社までの一本道はゆっくりとした上り坂になっていて徐々に体力を奪っていく。上るたびに見える少し先の景色は蜃気楼となってグニャグニャになっている。

 道の両側には黒い瓦屋根の家が転々としており、ある程度上り後ろを振り返れば海が顔を出した。潮の香りとともに運ばれてくる穏やかな風は今の暑さを癒してくれた。上と下に広がる青が混じり合っており、その堺を通っていく船はとても小さくて可愛らしく見えた。


 「うーん、気持ちいいね。ここ。」


 凛さんはぐーんと背伸びをしながら呟いた。


 「はい。…私、海は好きです。」


 「へー。…なんで?」


 「なんでって…なんでだろう?なんとなくですかね。凛さんは?」


 「私も好きだよ。」


 「やっぱりいいですよね。」


 二人でじっと眺めていると先を行っていた千尋ちゃんの声が上から聞こえてきた。


 「ねぇ、早くいかないとぼちぼち夕方になっちゃうよ。」


 時計を見ればやがて四時を回ろうとしている。太陽を見れば真上というよりも西に傾いていた。


 「あぁ、ごめんね。今行くから。」


 「海なんていつでも見られるよ。あいつは逃げないんだから。」


 「確かにそうだね。ごめんごめん。」


 明ちゃんは千尋ちゃんの少し後ろでそわそわしている。一刻も早く行きたいんだろうな。私は再び上り始めた。



 「………忘れられるしね。」


 「?」


 「…ううん、何でもない。」


 すれ違いざまに何か凛さんが呟いた気がしたけれど何も聞きとることができなかった。でも笑顔になる一瞬の間に見せた凛さんの顔が忘れられなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ