第十一話
「凛さん、今回はどんなお仕事で?」
「ん?それは来てからのお楽しみ。でも多分可愛いと思うよ。」
「可愛い?」
不思議そうにする私の横でニヤニヤする彼女を見ながら、私は更に謎を深めるのだった。私達は現在依頼者の方と近所の公園で待ち合わせをしている最中だ。
しばらくすると公園の入り口から誰かが走って
来た。
「あれですか?」
「そ。」
「というか思ったより小さいような…」
「『可愛い』でしょ?」
あぁなるほど。やっと言ってた意味が分かった。肩で息をしてやって来た『この子』が今回の依頼者なのだ。歳は六、七歳ほどだろうか。髪は肩ほどまでの長さで、全部おろしている。前髪が少し長いせいか目が少し隠れており物静かな印象を受けた。
「君が戸根明ちゃん?」
「はぁ…はぁ…う、うん。お姉ちゃん達がなんでも屋さん?」
「そうだよ。私が凛でこっちが雨音。よろしくね。」
「よろしくね。明ちゃん。」
私は軽く会釈をして少し笑って見せると、明ちゃんはコクリと頷いた。そして同時に
「は、ハックション!」
「おう!びっくりしたぁ。大丈夫?」
「グスッ…あぁえぇ大丈夫です。」
これはひょっとするとだけど『アレ』かもな…
「そう?…で、明ちゃんのお願いは『ミイを探して欲しい』だったよね。その『ミイ』ていうのは何?」
明ちゃんはスカートのポケットに手を入れると、折り畳まれた一枚の紙を取り出した。
「これは…猫?」
それは一匹の猫の絵だった。首には赤いバンダナが巻かれ、色は全身真っ黒だ。私はその絵を見ながら、少し青い顔になっていった。
「もしかして雨音、猫…苦手?」
「…はい。」
「ありゃ、またなんで?」
「…ちょっとアレルギーがありまして、猫が近くにいるだけでくしゃみが止まらなくて。」
「ありゃー。それはきついね。なんだったら今回は私一人でもいいよ?」
「いえ、大丈夫です。なんとかなりますから。」
明ちゃんの手前そんな情けないことは言ってられない。それにお手伝い一回目から放棄しているようでは凛さんにだって申し訳ない。
「そう?で明ちゃん、そのミイちゃんがいなくなったのはいつ?」
「…一週間前。」
「ハックション!…すいません…」
私は探す前にティッシュを買いに行きたいと凛さんに伝えた。




