桜の降りしきる中僕は
高1の春。
僕等は出逢ってしまった。
桜が満開のこの季節。
皆遠足気分で門を通る。
友達作りに勤しむ者。勉強馬鹿。孤独好き。
様々な個性的な奴等が騒いでいる。
僕は孤独好きの部類に入る。
クラス発表がされそれぞれのクラスに移動する。僕も渋々移動した。
クラスは和気藹々とした所だった。
僕が一番苦手とするタイプが集まったところだ。早く帰りたい。
自己紹介を教卓で奴らは行う。僕もしなければならない。非常に面倒。
「私は冴島 春霞。よろしく。」
澄み切った声。小さいがよく響き渡る。
魅力的でいて繊細。いつの間にか僕は彼女を目で追っていた。
彼女は見れば見るほど不思議で満ち溢れていた。
仕草や行動、声質、姿。
どれも興味を引くものばかりだ。
彼女は僕の中で人間から〝興味〟のある人間へと変わっていった。
数日後、僕は美術部に入った。
親が推薦を通りやすくしたいと言って部活に無理矢理入れたのだ。逆らうと面倒なので仕方なく入った。
入ってみると僕と似たような人間が集まっていた。
そこは何だか心地の良い場所であった。
何故か彼女も入っていた。
彼女は元美術部らしく、絵を見てみると今にでも動きだしそうでリアル味がましている。
そんな彼女はいつしか僕の話し相手になっていた。
僕は心を他人に開いたことがない。
開きたくもない。
でも彼女は周りと少し違う。
繊細で話しやすく、話題も振ってくれ、飽きないのだ。
そんな彼女に僕はだんだん会うのが楽しみになっていた。
高2の中頃。
周りも受験生になっていき、焦っている。
クラスや人も変わり友達作りをしている人もいた。
僕は1人…が良かったのだが、遊ぼうやら話そうやら何やらで絡んでくる男子達と友達(仮)と話していた。
この時期ぐらいからだろうか、僕に告白してくる女子が増え始めた。
昔からそうだが、僕は何故か人を惹きつける習性があるらしい。正直こんなの邪魔なだけである。
部室に行き彼女に愚痴った。
「なんで僕に好意を持つのだろう。僕なんかよりずっといい人がいるだろうに。」
口を尖らす。彼女は少し笑い
「きっと運命を感じたからじゃない?」
冗談混じりに言った。
最近の奴らは皆そうだ。君とは運命を感じるんだ、君しかいない。
果たして本当にそうだろうか。そう言ったやつは大半浮気しているが。僕の周りは…。
「…解んないや。」
「そのうち解る時がくるよ。あなたにも。」
少し淋しそうな笑顔だったのは気のせいだろうか。何だかいつもと違う気がした。
幾月が経ち、僕は彼女の言った感情が解ってきた。
毎日逢いたい。いつも一緒がいい。誰にも取られたくない。…独占欲。
きっとこのような感情なのだろう。
そして僕は彼女に〝恋〟をした。
「ねぇ。すきなんだけど。」
唐突に彼女に告白した。彼女は口を開けて
ぼうっとしていた。
その光景がなんだか笑えてきてクスっと笑った。彼女は耳まで真っ赤にして笑った。
「…私も好き。馬鹿。」
それからは逢う度にニコニコして僕に話しかけたり、人には言えない事したりと毎日が充実していた。
笑う度に悲しそうな笑顔を見せて。
一ヶ月後。
僕は彼女の誕生日を祝うために部室で待ち伏せていた。
しかしその日は来なかった。風邪だろうか。
次の日に祝おう。そう思って帰った。
次の日。
やはり彼女は来なかった。
熱でも出したのか。またその日も帰った。
二週間目。
おかしい。何故か学校にも来ていない。
先生に言っても知らないの一点張り。家族はどこに住んでいるのかわからない。
どこにいる。どこだ。春霞は、春霞はどこ。
変だよ。また笑って見せてよ。楽しかった日に戻ろう?
空に問いかけても何もでてこない。
一ヶ月半探したが出てこなかった。
クラスの皆は騒ぎ出す。
冴島幽霊説、元からいなかった説。
馬鹿なんじゃない…いなくなってそんなに面白いか?お前ら楽しんでんじゃねぇよ。
心の中でイライラしていたとき自分でも気づかないうちにそいつ等を殴っていた。
冷静になって初心に戻ろうと決めた。
部室に行く。行くと思い出すから最近は行ってなかったのだ。
「…スケッチブック…あったっけ。」
ゆっくりとページをめくる。
そこには僕が初めて興味を引いた絵が描かれていた。
「春霞の…春霞の絵だ。」
めくるたびに思い出すあれやこれ。
楽しかったなぁ。そういえば描いたなぁ。
感傷に浸っているとページから何かが落ちてきた。
「…手紙。」
裏を見ると春霞から。僕宛てで書いている。
僕君へ
久しぶりだね。元気にしてる?無気力状態になってない?心配だなぁ〜。
多分僕君は私を捜してるんだよね。ありがとう。何か嬉しいや。淋しいよね。ごめん。
私ね、今遠いとこにいるの。僕君でも探せないところ。まだ来てはいけないとこなの。
私ね、僕君に直接逢いたい。…とか思ってるけど…抱きしめたいけど。無理なの。
我儘だよね。ごめんね。
家族に聞けば分かるかもしれない。けど、忘れないで。自殺とかしたらだめだよ?貴方にも大切に思ってくれてる人がいるから。だからまだ来ちゃダメだよ。いい?
貴方がちゃーんと後悔なく生活して、十分生きたら迎えに来てあげる。
それまでは楽しく人生送るんだよ。
じゃあまた会える日まで。
春霞
「…馬鹿だよ。まじ。…驚かせようとしてくれたんだよね。告白の仕返しかな。」
ここでずっと待ってくれてたんだね。
ありがとう春霞。僕も頑張らなくちゃ。
楽しい人生過ごさないといけないね。君の分まで。
僕が十分と思ったらちゃんと迎えにくるんだよ?違う人を迎えに行ってたらおこるんだからね。
一人で呟き、手紙を抱いてその場に崩れ落ちる。
大好き春霞。
その日まで待ってて。
頑張った…下手だけど。