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短編小説「余命」  作者: 高山 和義
第1章 終わりへ向かう、すべての始まり。
6/12

その5

プランを考えるのはいいが、なんせ今は入院している病人の身、そうやすやすと一時退院なんてできるものなのか。

結局、話を切り出すのは検査の結果報告の場になってしまった。

横には母親、机を挟んで前には担当医。

ブラインドが下がっている窓に、一面白く飾り気のない部屋。あるものは、今座っている椅子と机、ホワイトボードとレントゲンを見るための光る箱のようなもの。

まるでどっかのドラマで見たような光景だった。

ドラマでこの部屋が出るシーンといえば、高確率でとても悲しいお知らせが来るというのは僕の偏見だろうか。

「―となります。以上の検査の結果―」

何か重要なことを言いそうな言い回しだったので、意識を担当医に戻す。

「以上の検査をもちましても、病名と原因を特定するに至りませんでした」

母親の表情がこわばるのは、ちらっと見ただけで分かった。

一方僕の方としては、やっぱりな、という感想しか出なかった。

あの日突然血を吐いて倒れたくせ、今はなんともなくけろっとしている。こんな謎めいた症状の病名なんて現代の最先端の医療技術をもってしてもあてられっこないと思っていたが、やっぱりその通りだった。

「あの、病名を特定できないということは・・・」

母親の考えていることはなんとなくわかった。つまり、病気を治すこともできずに息子はそのまま死ぬのではないかということだろう。

担当医も、なんとなく察したらしく

「まったく治療できずに直ちに健康を害する、ということは無いと思われます。実際、息子さんの普段の体調に異常は見受けられませんし、むしろ健全者とほぼ同等と思われます」

やっぱり医者にもそう見えていたか。

「もしかしたら、まだ検査で特定できるような症状が出てないだけかもしれません。最悪、また同様の症状が出ないとわからない、という事もあり得ます。私から紹介状を書きますので、より良い設備の病院で検査を受けてみるのも良いでしょう。いかがいたしますか?」

かなり大事になっていることを母親は察したのだろう、考え込むように黙り込んでしまった。

その間を狙って、僕は例の話を担当医に切り出してみることにした。


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