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短編小説「余命」  作者: 高山 和義
第1章 終わりへ向かう、すべての始まり。
2/12

その1

今日という日は、いつも通りの一日だった。

 授業を四コマ受けて、サークル活動もないので、いつも通り帰る。

 いつも通りの日常だけど、最近、心配なことがあった。

 疲れだ。

 ここ一週間で、毎日少しずつひどくなっていた。

 最初は些細なものだった。

 ちょっと頑張りすぎたかな?程度のものだったのに。

 寝れば治ると思っていたのに。

 日付が変わるよりずいぶん前にベッドに入った翌日、その疲れ治るどころか、ひどくなっていた。

 授業中の居眠りが増えた。

 眠りが浅かったのか、とネットで調べた快眠・安眠法を調べて、実践した。

 さらに翌朝、目の下の隈は濃くなる一方だった。

 あまりにも集中することができず、指名にも気づかないありさまだった。

 安眠法なんて意識するから寝れないんだ、といつも通り寝る。一応、睡眠導入剤を近くの薬局で買ってきて、それを服用して寝た。

 改善はしないものの、悪化することはなくなった。やれやれだ。

 でも、事件が起きたのは、その三日後だった。

                   *

 その日も、重い体を引きずるようにして登校していた。

 午前中の二コマの授業を板書写しマシーンと化しつつも受けきり、学食に向かう。

 と、そこでの出来事だった。

 急に胸が苦しくなった

同時に激しい咳も出る。

一緒に授業を受けてた友人達が、あまりにも激しい咳に心配そうに声をかけてくるが、反応する余裕もない。

胸の苦しさはやがて焼け付くような痛みに変わり、激しい咳に喉まで痛み出す。

そして、ごはっ、と何かを吐くような音とともに、唐突に咳が止まる。

何か嫌な予感がして、生温く湿った手を口元から離す。

胸の痛みも喉の痛みも、咳き込みすぎて荒くなった息も、それらすべてが始まりに過ぎなかったのだと、その手のひらを見て思った。


僕の手のひらは、血で真っ赤に濡れていた。


驚きに思考回路が停止する。友人が、周りを歩いていたほかの学生が、研究室に戻る教授が、僕のありさまを見て悲鳴を上げる。

その悲鳴を聞いて、あぁ、今僕はやばいんだな、と感じた。

やばいの詳細までは分かるはずもなかったけど。


そして、視界がゆっくりとフェードアウトしていき、三半規管が地面と平行になりつつある僕の体の角度を知らせる。

                 *

一時キャンパス内は騒然とした空気に包まれた。

突然咳き込みだした学生が、血を吐いて倒れたのである。

生徒を知る教授が担任の研究室に走り、はたまた他の教授が救急車を呼んだ。

五分くらいして、けたたたましいサイレンと共に開け放たれた正門から救急車が入ってくると、学生はストレッチャーに乗せられ、病院へ運ばれていった。

                 *


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