君は俺の事を信じる 僕は君の事を助けに行く
「たくっ…」
夜中1時になった今日、俺は気絶から起き上がった。
全然良い気分ではなく、イライラする…。
勿論、今日の事が原因なんだろう。
いや、日にち変わってるか。
とにかく、起き上がることにした。
「どうするか」
さすがと言うべきか、傷はあまりついていなかった。
まあ溝を一撃食らっただけなんだけどな。
あの時の俺は油断をしていた。
それが問題だったんだろう。
でも、香苗を救うにはどうすれば?
多分、香苗は不良達に捕まって連れて行かれたんだろう。
そうとしか考えられない。
とにかく、まず問題なのはどうやって探すかだ。
勿論情報がほしいが、夜中に起きてる人なんて少ないだろう。
それに、もしさっきのやつを見ていたとしても俺を助けるのが先だろうから、不良達は目に入ってないはずだ。
「くそっ…、どうしろってんだよ…」
そうやって血迷いそうになってた時…。
「やあ、こんばんわ」
「…っ!?」
俺は驚いた、いきなり目の前に現れたソイツは
俺の前へと来た。
「なんだ?」
「遥斗君、お困りのようだね」
でも、近くに来たらようやく分かった。
どうやら、小柄な背の女の子のようだ。
でも、背が凄く低い。
「だからなんだよ?」
「手伝ってあげてもいいんだよ?」
その小さな女の子は何者なんだろうか。
「君は誰なんだ?」
俺の目の前に現れたその子は、凄く小柄だ。
小学4年生としても良いんじゃないだろうか。
それくらい小さい。
「私は、君の事をよく知る者だよ」
「俺の事をよく知る者?」
何言ってんのかよくわからん。
俺の事をよく知る者ってなんだよ。
頭おかしいのか?
それとも…
「君は、ある女の子を助けたいと思ってるんだよ
ね?」
「…っ!?」
なんで知ってんだ!?
一言も言ってないのに…。
いや、偶然かも知れないか。
そうとしか考えられない。
でも、この子は誰なんだ?
「私は、木梨 雛音」
「木梨 雛音…」
やっぱり、名前を聞いても知らないものは知らない。
なんでこう、毎日曖昧なことばかり起こるんだろうな…。
正直よくわからんな…。
「俺は、忙しいんだ。だから、あっちに行ってくれな
いか?」
「大人にそんなことを言ってもいいのかな?」
大人?
こんな、俺よりも遥かに低い女の子が?
戸籍上では、大人って事なのか?
よくわからん。
「なら、お前のことを教えろ」
「いいよ、教えてあげるよ」
そう言って、俺の近くへとその女は来た。
「お前は何者だ?」
「私は君の…」
俺に関係があるみたいだな。
「守護霊なんだよ」
「はぁぁぁぁっ!?」
守護霊!?
何言っちゃってんの!?
俺の守護霊ってこんな小さな女の子なの!?
「私は、25歳で亡くなった」
「マジかよ!?」
小学4年生位の背のくせに25歳とかマジかよ!?
って言うか、なんで見えんの!?
普通見えなくね!?
どうなってんの!?
「何故、君に見えてるのかは知っている」
「何でなんだ?」
「それは…」
それは?
「君が困ってるからだよ」
「えっ?」
俺が困ってるって…
もしかして、それを察しての事なのか?
「とにかく、私は君の守護霊。なにか困ってるの?」
「まあ、それはな」
そう言われたから、俺は全てを話した。
香苗が不良に連れ去られた事。
香苗とのトラブルの事。
それらを全て話した。
どうやら、この守護霊は俺が困っている時とか以外には眠っている状態らしい。
その為、全てを知っているということはないらしい。
「分かりました。では、助けましょうか」
「おう」
そして、ここから香苗を助けるための作戦が開始される!
~~~~~1~~~~~
作戦は以下の通りに実行される。
1,守護霊と共に不良達を探す。
2,不良を見つけたら事情を聞く。
3,香苗の前で謝らせる。
凄く簡単なように見えるが、流石に俺は怖がってます。
誰か、代わりにやってくれない?
まあ、流石に夜中2時なら誰もいないな…。
何でこんなことに…。
「では、行こうか。遥斗君」
「分かった…」
正直気乗りしない…。
でも、こんなことになったのは自分のせいでもあるわけだ。
そりゃ怖いけど…。
何も出来なくて何が“助けに行く”なんだろうか?
そういうわけで俺は怖がりつつ、守護霊と行くことになった。
流石に、俺が行かないと香苗を助け出すことは出来ない。
「そう言えば、守護霊なら守ってくれるんじゃないの
か?」
「私は、あくまで助言をするまでだ」
助言ね…。
はいはい、分かりましたよ。
やればいいんでしょ?やれば…。
そうして、不良達を見つけた。
「あいつらだな」
「よし、香苗を助け出すぞ」
「分かってら!」
これより作戦が開始された!
~~~~~2~~~~~
俺は、香苗をさらった不良の元へ走った。
だが走ったのがいけなかったのかもしれない。
そう、俺は考えていなかった…
「おい、待てっ!」
「なんだ?」
俺は、声をあげた。
怒号とまではいかないが、声をあげた。
「お前はあの女が言ってた男か」
「香苗の事か…」
「その子しか居ないだろうな」
でも、あの女ってどう言うことだ?
正直、よくわからん。
「なんか用か?」
「香苗は何処だ?」
「確かにここには居ないだろうな」
香苗が居ないって事に気がついた。
何故なら、あの女って言ってたからに決まってる
あの女って事は、ここには居ないって事だろ。
一体何処に連れていったんだよ!
「あいつは俺の知ったことかよ」
「なんだと?」
「俺は、あくまで足止め何でね」
「くそっ…」
俺は、少しずつイラついてきてる。
そりゃそうだろ…。
イラつかないやつなんて居るのかよ。
でも、イラついてる俺とは逆に目の前の男は…
「俺は別に気にしないから、この先に行きなよ」
「どういう意味だ?」
「俺だって、許せる状況じゃないしな」
どうやら、目の前の男は香苗を救おうとしてるのかもしれない。
一体どんな真意があるんだ?
「俺も、あとについていくから行くぞ」
「分かった」
~~~~~3~~~~~
「どこら辺に居るのか知ってるのか?」
「まあ、大体はな」
不良のグルに居た男はどうやら、中学時代香苗と同じ学校に通っていたらしい。
そして、香苗を拐うと分かった為俺はこの男と協力することとなった。
柊 広戸。それが彼の名前だ。
外見は、爽やかイケメンで頭の良さそうであり、誰からも持てそうな雰囲気を持ち合わせている。
こういう奴は、友達多いんだろうな…。
俺とは違ってさ。
そんな話は置いておこう。
実は、不良達の元へ行く前に作戦を立てた。
それは以下の通りとなっている。
1,不良のグルの元へ行き捕まったふりをする。
2,不良に殴られている隙に、広戸が香苗を助け出す。
3,香苗が居ないことに不良達に気付かせる。
4,俺が不良に恫喝を入れる。
5,不良を観念させる。
以上が、最終的な作戦だ。
「あれだ」
「あいつらか」
約4人ほどのグルだ。
果たして作戦は上手く行くのだろうか。
「作戦開始だ」
「おうよ!」
だが、これが仇となるとは思わなかった。
~~~~~4~~~~~
「先輩」
「あぁ?」
作戦を開始した俺達、ついに不良達に接触することに。
「捕まえました」
「くっ…」
「よくやったな」
俺は、捕まえられたふりをする事になった。
そして、そのあと俺が殴られる前に香苗を助け出す。
「お前が遥斗ってやつか?」
「それがどうした」
「威勢がいいな」
俺は、あくまで逆らうことにした。
そうでないと香苗を助け出す事が出来ないからだ。
犠牲なしで香苗を助けられるなら良かったけど、何事にも犠牲は必要だ。
小さなものだとしても。
「もう一度だけ聞く、お前が遥斗ってやつか?」
「それがどうしたって言ってんだよ?」
「ふざけんなよっ!」
「…っ!?」
その瞬間拳が顔に当たり激痛が走った。
どうやら、気に障ったのか殴られたようだ。
流石に不良の拳は痛いな。
「くっ…」
「威勢だけは誉めてやらぁ」
「こいつ馬鹿だな」
流石に少し意識が遠くなりかけた。
でも、おかげで次の作戦にうつれたはずだ。
そう…“はず”だったんだ…
そう、いくはずだった…。
でも甘かったんだ…。
「馬鹿だな…」
「…っ!?」
「助けて!?」
俺は、目の前の光景に疑った…
何故なら作戦が狂っていたからだ…。
見れば、香苗を捕まえていたのだった…。
どうやら、広戸は作戦を無視している
それどころか、香苗を捕まえていた。
「お前!?」
「遥斗、お前も馬鹿だな」
そう、俺はこいつを信じすぎたんだ…。
見ず知らずの人間をすぐに信じた為、逆に作戦に引っ掛かったんだ…。
見事に捕まった俺は、踏まれたり殴られたりの横暴を受けるしかなかった…。
どうすりゃ…香苗を…助けられるんだ…。
「お前が騙せやすくてよかったわ」
「くっそ…!」
俺は、悔しい気持ちが分からないくらい
絶望と化していた…。
立ち上がれる気もない程に…。
~~~~~5~~~~~
俺は、騙されていたんだ…。
仲間だと信じすぎたのが問題だったのかもしれない…。
それ以前に、俺が香苗を怒らせなければこんなことにはならなかったはずだ…。
つまり、全て自分のせいなんだ…。
いつだって俺はそうだった。
誰かを悲しませては自分のせいだった…。
顔が怖いのが原因とかそんなことは無しにして…自分のせいだったんだ…。
「馬鹿なやつだぜ」
「……」
俺は、黙るしかない…。
馬鹿なやつって言われてもなにも言い返せない…。
その通りだからだ…。
香苗を助けるとかいって助けられない…。
何が助けるだ。
「お前が馬鹿なやつで助かったぜ」
「さてと、最後に一発殴るか」
俺は胸ぐらを捕まれた。
勿論、目の前のそいつは殴りかかろうとしている。
でも、このまま殴られて良いのか?
このまま香苗を助けられないままでいいのか?
「おらっ!」
そんな訳がないだろ!
助けようと思ってんなら
“最後までそれを貫き通せよ”!
「グフッ!」
俺は、そう思った瞬間勝手に拳をそいつにぶつけた。
怒りと自分の弱さをぶつけたんだ。
「…っ!?」
「そいつを離せよ…」
「あっ?」
「香苗を離せって言ってんだよ!」
ここから反撃開始だ!
~~~~~6~~~~~
俺は、まず香苗の腕を掴んでるその手を離す為に
一撃与えた。
「くっ…」
「遥斗、大丈夫なの!?」
「あぁ、なんとかな」
何とか香苗を助け出すことに成功した。
作戦は全ておかしくなったけど、最終的な作戦は成功だ。
この男は何を考えてんだよな。
香苗は俺の傷を心配してるのか、大丈夫かと聞いてきた。
流石に大丈夫だけど痛むわ…。
さて、この男は何を考えてるのか聞き出さないとな。
「おい、お前は何で香苗を拐ったんだ?」
「くっ…」
男は、俺の一撃が効いたのか押さえている。
俺の拳って実は強かったんだな…。
いや、だからといって使おうとかは思ってないからな?
とにかく、こいつの話を聞くまで帰ることは出来ない。
「何故拐ったってか?」
「あぁ」
俺は、それを躊躇わずに言ったのを後悔した。
何故なら、意味もなく香苗を拐うわけがないからだ…。
その男の手には刃物があった。
そして、離されたはずの香苗をまた捕まえて、人質にした。
「こう言うことさ」
「お前っ!」
「きゃっ!?」
香苗は身動きがとれない…。
それどころか、動けば刃物で傷付く…。
どうすれば、いいんだ!?
「こいつのせいで、俺の評判は下がったんだよ!!」
「何を言って…」
「お前はもしかして、何も知らないのか?」
「何の話だ?」
「駄目っ!」
そう、俺は最初から分かってたんだ…。
おかしくもなかった…。
何で香苗が俺のことを知っていて、俺は知らなかったのか…。
そして、俺は全てを理解した…。
香苗の全てが明かされるのだった…。