君は僕のことを知っている 僕は君のことを知らない
「何だってんだよ…」
俺は、翡翠 遥斗。
高校二年生の男子生徒だ。
朝起きて数秒後の言葉が漏れた。
どうやら、俺の部屋全体が荒れ地と化している。
何でこんなことにならないといけないんだ…
「たくっ…」
そう言うと溜め息が勝手に出てくるな…
俺は流石に汚い部屋は好みじゃない
いや、好きな人はどうかしてるか。
ちなみに俺は、A型だからきれい好きではない。
母親譲りの血が騒いでるのだろう。
言っておこう…
俺の家は、俺・長女・次男・次女・三女しか居ない。
何故なら、両親はとっくに他界してるからだ。
どうやら原因は轢き逃げだった。
俺にとっては、本当に大切だった大切な家族それがこの世から居なくなる事の悲しさを分かるか?
俺は、犯人に言ってやったさ。
「どうして、大切な家族の命を盗んだんだ!」
と、その犯人に言ったのさ。
勿論、その後は警察に止められたけどな…
俺は、悔しかった…
それから俺は、この事を忘れないことにした。
優しかった母親と父親だけは、俺にとって…
いや、家族にとってたった一人の支えてくれた人だったから、凄くその時は泣いたさ。
それが、中学一年生の時さ。
母親は、優しくてそれでいて心配してくれた。
料理も上手くて何に対しても優しかった。
父親は、顔はヤクザそのものだった。
でも、意外にも優しかった。
運動神経も良く、部活にも専念していたらしい。
そんな両親に俺は育てられた。
でも、その中にも問題があった…
問題ってのは、もうわかってると思うが
その両親の血を受け継いでいるのが問題だ。
失礼だとは思ってる…でも、どうやら母親と父親に似ているところがある。
母親には料理の腕前を受け継いだものだ。
実は俺は、自分で言うのもなんだが料理が上手い方なのだ。
いつも、作るのは俺で他は誰も作らない。
その為毎日疲れる…でも、美味しいって言われたときは嬉しいがこの頃は言ってくれない為作る気分が削がれてしまっている。
父親からは記念のか良くわからないが、ヤンキーそのものの顔を受け継いだ。
あと運動神経を受け継いだ為、喜べば良いのか悲しめば良いのか良くわからんよ…。
そして、そんな事を思っていたら3日前の事を思い出した。
たった一人の友達が、轢き逃げされてなくなったと
ニュースで言っていた。
流石に、それを聞いたとき俺は絶望と化したように
寝込んでしまったらしいけど…
もうこの世には居ない友達。
もう話すことも、近くにいることもできない…
もっと話したりしたかったと俺は今でも後悔して
いる。
そんな事を思っていたら、学校に行く時間に
なった。
「もうこんな時間かよ…」
正直体が重いのに行かないといけないとなると
気が遠くなるな…
「行ってくるか…」
そう言って俺は外に出た。
また嫌な日が始まったな…。
~~~~~1~~~~~
俺は、学校へ行くため外に出た。
でも嫌なのはこれからだ。
何故なら…
「うわ…、こっち見てるくない?」
「本当だ…怖っ…」
と言われるからだ。
どうも、顔だけで俺がどんな人間なのかを決めつけられてるみたいで、避けられている。
その為友達が誰もいない。
「チッ…」
思わず舌打ちをしてしまった。
聞こえたのだろうか、さらに皆離れていく。
その為、俺の目の前の道路はガラ空きだ。
早く行くために足早に行く。
そして、数分後…
ようやく学校に着いた。
今日も勢い良く教室に入っていった為
驚かれた。まあ、分かってたけどな。
そして、誰とも話すことなく放課後になった。
待っていてもしょうがないので、早く帰ることに
した。
だが、運が悪いのか
「あの、ちょっといいですか?」
「なんだ?」
誰かに呼び止められた。
俺が長身だからなのか凄く低く見える。
でも、顔は可愛らしい。
「やっぱり、遥斗くんだよね♪」
「っ!?」
今なんて?
遥斗って言ったか?、俺の名前を言ったか!?
何で俺の事を知ってんだ!?
俺は、この子を知らないぞ?
「遥斗くん、ごめんね」
「なにがだ?」
何に謝られているのか分からず疑問しか出ない。
「いや、ただ会えたからよかったよ。またね」
そう言うと、その子は帰った。
「なんだったんだ?」
俺は、疑問を胸に家に帰ることにした。
~~~~~2~~~~~
そして、30分かけて家に帰ってきた。
さっきの女の子を思い出す。
俺より身長が低く、可愛らしい顔の女の子。
いきなり声をかけられて、何が言いたかったのかも分からなかった。
そんな事を考えていると…
「おにいちゃん!、早く晩飯作ってよ?」
そう言うのは俺の弟、颯だ。
家の事情が悪いのは事実だが、なぜか頼ってくる事が多数ある。
まあ、頼られてるのは良いことだよね。うん。
と言うことで、俺は台所へ行くことにした。
今日の晩飯はもう決めてあった。
その為、作るのは早かった。
ちなみに、今日はオムライスにしておいた。
「「いただきます」」
と、男二人だけの晩飯。
他の三人はと言うと、近くの家でお泊り会とか言って家には居ない。
その為、少し静かな夜となった。
そして俺は、明日の用意をして寝ることにした。
だが、今日の気になることをおさらいをした。
1,あの女の子は誰なのか。
2,あの女の子はなぜ俺を知っているのか。
3,なぜ最後に悲しそうな顔をしたのか。
これくらいかな?気になることって言ったら。
まあ、重要なのはあの子が一体誰なのかと言うことだろう。
俺は、あの子とは会ったことがないはずだ。
そう、“会ったことがない”はずだ。
「明日、会ったら聞いてみるか」
そう、決意して俺は明日言うことにした。
だが俺は、何かが違っていたなんて思ってもいなかった。
~~~~~3~~~~~
次の日、俺は昨日気になっていたことを話そうと思い学校へ向かう。
やっぱり今日も、道行く人に嫌な目で見られる。
だがいつもと同じなので気にせずに学校へ急いだ。
そして放課後を待つことにした。
そして、放課後になり待っていたのだが来ない。
「あれ?、今日は休んでんのか?」
まあ、休むくらいしょうがないよな。
まあ、家に帰るか。
そして道中に、不良グループを発見した。
「おい、何ぶつかってんだよ」
「おい、聞いてんのか?アァ!」
と怒鳴りあげる一角の不良グループを発見。
さすがに止めにいこうとする者は居ない。
自分がなにかされれば意味がないとか思ってるんだろうけどな。まあ、俺も誰が責められてるのか知らないしいいか。
と思い、帰路につく。
そう、歩いたんだ。
でも、責められてる人をチラ見してみたら、俺が昨日の呼び止められた女の子だと分かった。
でも、流石に俺は助けられる勇気がなかった。
何故なら、俺はヤンキーフェイスなだけで喧嘩とかしたことがなく、出来ない。
みっともないだろうけどな…
そうして、俺は足早に家に帰る事を決意した。
だが、事はそう上手くはいかない。
「あっ、遥斗くん…」
「「アァ?」」
と、まさかの俺に気付いた女の子。
それが問題で不良グループ皆が俺の方へ見る。
ヤバイ…ヤバすぎるだろ…
どうしよ…、俺は戦えないぞ?
「誰だ?テメェは」
「えっ?」
どうやら、これは大変な事になった。
完全に、完璧にヤバイだろ…おい。
何でこんな事になるんだ…
いや、確かに責められてる子とは話しをしようとは思ったけど…でもこれはヤバイだろ…
「おい、誰だ?テメェ!」
「おい、聞いてんのかオイ!」
と俺は、不良に話しかけられている。
でも、返す言葉が思い付かない。
その前に話したら何かされそうだし…
今にも拳握って殴りかかってきそう…
どうしよ…何も言えないどころか逃げたい…
「おい、コイツ震えてね?」
「本当だな、顔怖いくせにダセェ、ハハハッ!」
等と言い不良達は笑う。
まあ、笑われようが気にしない。
だって俺は、本当に怖いのは間違ってないから…
勿論、恥ずかしいけど怖がってる時点でそんな考えなんて無意味だろ…
俺なんて昔からそうさ。
誰かに笑われては、逃げていた。
そんな自分が嫌だったさ。
「おい、お前逃げんなら今のうちだぞ?」
「こっちは忙しいんだよ!」
「…っ!」
そう言うと、俺を殴ってきた。
俺は、勿論殴られるしかなかった…
俺にもう少し勇気があれば良いのに…
「大丈夫!?、遥斗くん!」
「五月蝿えんだよ!」
「…っ!?」
不良が大声で怒鳴りあげて、責められてる彼女が怯える。
そして、次の瞬間…
「きゃっ!」
ドカッと言う擬音は、俺の目の前で鳴った。
俺が殴られた事をいい気に、彼女を殴ったのかそれとも押したのかは知らない…。でも、彼女は地面に倒れた。
それを、止めようとする者は居ない。
なんだよ…なんだってんだよ!
「じゃあな、ははは!」
「いや~、楽しかったな」
等と言ってる。
それが、俺は許せなかった…
女の子に暴力なんて普通しないだろ…
何故なら、“理由がないからだろ”!
だから、俺はこいつらを許さなかったんだ。
俺は、人と殴り合ったことも言い合ったりもしなかった。
何故なら、俺が臆病だったからだ…
「おい、待てよ!!」
「「っ…!?」」
だから、俺は今まで平穏に生きてきたつもりさ。
でも、それだけじゃ誰かを守れる力になんてならない…ただ自分が助かればいいなんて思うのは誰だって出来る。
でも、誰かを守るってのは難しい。
だからと言って怯えないままで守るなんてもっと難しい。
だってそれが“本当に守るべきもの”だからさ!
「人が倒れてるのをいい気に女の子に危害加えてんじゃねえぞ!!」
そう言って、近くにあった看板を蹴った。
まだ、真新しい看板だろうか綺麗な看板だ。
それが俺の蹴りで穴が開いた。
俺は、父親が少し嫌だったと言った…。
でもそれは、ただの“勘違い”だったんだろうか…
そう思うほど俺はその嫌な気分が去った。
力は暴力とばかり思っていたからさ。でも、うまく使えば何か大切なものを守れると思えた。
「「おい、ヤバくね…!?」」
俺が看板を破壊したのをみた不良は、怖じ気づいたのか驚きを隠せないのか足を微かに震わせている。
「おい、なんか謝れよ」
俺にじゃない。責めていた女の子に謝れよ。
俺はどれだけ何をされてもいい。でも、二人ががりの男が女の子に危害加えんなよ!
恥ずかしいだけだろ!
「「ご、ごめんなさい!」」
と、観念したのか責めていた女の子に土下座して謝っている。
バカな不良だなと思った。
最初からこんなことしなけりゃいいのにな。
「こちらこそ…」
「「すみませんでした…」」
そう謝り終わると、不良達は俺にも謝りに来た。
「「すみませんでした…」」
「なら、許してやるからどっか行け」
「「はいっ!」」
少し言い過ぎたかも知れないが、不良達はそれに従い何処かへ急ぎ足で行った。
そして、周囲の皆から拍手が贈られた。
「良いぞ!」
「やるな、お前」
「あの青年大したもんじゃな」
と言われて、少し気分がよくなった。
「ありがとうね、遥斗くん」
「ああ」
そう、目の前の女の子にお礼を言われた。
人と殴り合ったことも言い合ったこともなかった。
でも諦めない事でこの子を守れたんだと俺は思う。
そして、この子は誰なのか聞こうとした
だが…
「そういえば―――」
「あっ、ごめんね。今日は用事があるの。
また話そうね」
「あっ…」
と彼女は言い、急いで何処かへ行った。
なんか告白して失恋した彼氏みたいになったな…
まあ、お礼を言われたから良いか。
またいつか聞けば良いよな。
さて、家に帰るか。
いつか聞けると信じてな。