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セバス、街に行く

書き方を変えると言ったのぅ。

ありゃ嘘じゃ。

夢枕に神が降り立つという想定外の慶事に、目が覚めた直後こそ大いに慌てたセバスだったが次第に落ち着きを取り戻しつつあった。

なにしろ自身が神すら把握してないイレギュラーでここに来ているのだ。御本人に会ったとしてそれがどうした、たまによくあることじゃないか。こんな無茶苦茶な理論で自身を納得させる事が出来るのもある種の才能の様にすら感じさせる。

地面に降りたセバスは神の助言に従い川沿いに進んで行く事にした。現在彼は右手に抜き身の片手剣を持ち、アーマードベアから剥いだ皮を背負っている。当然皮の方がセバスよりも大きいので引きずって歩いて……はいなかった。引きずらない様に内側に繰り返し畳み込み、両前足を首の前で結び、両後ろ脚を腰に結んでいる。この為背中の方がかなり分厚くなっていてなかなか不気味なシルエットになった。そんな幼児が森の河原をズンズンと進んで行く。森の獣たちは強者であるアーマードベアの匂いを怖がって近づいて来ず、アーマードベアを襲う事もある強者たちは縄張りから離れて行くソレを見送る事にした。




「おぉぉーー!! 橋だ、橋がある!! 」


小川はここまでに来る途中に幾つかの小川と合流し、水量と勢いを増して流れていた。その流れで地面は削られた結果、小川は3m程の谷を形成していた。当然のようにセバスはこの谷底を歩いており、もしこの谷間に人工物である橋が無ければ彼は気が付かずに通りさってしまっただろう。

視界に人工物を見てテンションが最高潮に至ったセバスは早速谷底からの脱出を試みるが、なかなかうまくいかない。それというのも崖を形成している土が水分を程良く吸っていて非常に脆くなっているのだ。何度か失敗したセバスは頭に来たのか


「道は自分で作るのだ!!」


と切り崩し始めた。どうやら肉体年齢が下がったおかげで、精神的にも幼くなり始めているようだ。しかしこの幼児はただの幼児ではない。剣を工具の代わりに使いガンガン崖を削っていく。


「オオラオラオラオラオラオラオラオラーーー!!」


たぐい稀な筋力による力押しを行う事で、自身が歩いて上がれる道を作るのに2時間ほどしか掛からなかった。廃土は河原に積み上がっており、少しずつ水に流されて行っている。この切り開いた道? も、ひと雨降れば崩れてしまうだろうが、セバスには関係ない。

まさに己の道を己で切り開いたという、言い様のない達成感に包まれ満足しご機嫌なまま街道に向かって行った。




「お? おお!? おおおおお!!」


アイノツセ王国の山岳都市、タルトの西門をセバス視認したのは、太陽も傾き沈み始めた所だった。ついに街へたどり着いた嬉しさを爆発させて門へと走り出すセバス。街に近づくに徐々に背の低い柵に囲われた畑などが姿を現して行く事も、彼の速度を加速させていく要因の一つだ。

その一方、タルト西門のその日その時の門番だった新人のカレヴァ・クーシ(15)の視界には徐々に大きくなってくるセバスの姿を見て思わず


「先輩!! 賊が、山賊が1人で突っ込んできます!!」

「「「なぁにーー!?」」」


と叫んでいた。ここでセバスの今の恰好を思い出そう体はアーマーベアの毛皮に覆われている。毛皮の大部分は折りたたまれて背負われている状態とはいえ、前に回している足の部分でも小さなセバスの身を包むのには十分だ。左手こそ空手だが右手には抜き身の片手剣が握られている。

逆光という事も相まって経験不足な新人門番が誤認する事になっても不思議はない。しかし終業時間にほど近い時間に騒ぎを起こした事で、先輩に彼が叱られるのは不可避の出来事だろう。




「この!」

「スットコドッコイ!」

「あれほどしっかり見極めろって言っただろが!」

「うぐ。す、すいません……」

「「「すいませんで済むほど門番は甘くねぇんだよ!!」」」

「何? この状況??」


セバスの視点だと1人だった門番が、中からの増員で4人になり、近づいて行くと後から出てきた3人に最初の1人が叱られているという状況だった。これを前情報なしに理解できる人はいないだろう。呆然とするセバスに漸く気が付き、年嵩の男が手を打つと残りの二人が新人君を詰所に引きずり込んでいく。説教は終わっていないらしい。

残った男はばつの悪そうな顔をしながらセバスに声をかけてきた。


「あー、すまないな嬢ちゃん。新人が見間違いを起こして、お嬢ちゃんの事を山賊だと誤認したんだ。ようこそタルトの街へ。街に入るにはステータスカード見せて貰う決まりなんだけど持っているかい?」

「あー……。持ってないです。あと俺男です」

「おう坊ちゃんだったかすまないな。それじゃあちょっと来てくれ。」


そう言って年嵩の男はラウムの左手を取り、先ほど新人君が引きずり込まれた詰め所に連れて行かれた。

石製のその小部屋には長机で半分に分けられていて、机の向こうには奥へと続く扉がある。男は机の前にある椅子にセバスを座らせると、机の上に水晶球を取り出した。


「この水晶球は“真偽の玉”といって、この玉に手を載せて答えてもらうと嘘が分かるんだ。これから幾つか質問させて貰うから、これに手を載せながら答えてくれ」

「はい」


数分ほどのやり取りで聞かれた事は犯罪歴の有無位だった。聞き取りが終わると男は書いていた羊皮紙を丸めて蝋で封をしてセバスに渡しながらこう言った。


「この書類を持って、ここからまっすぐ道沿いに行くと、街の中央の広場がある。そこにある役場に行ってくれ。受付にこの書類を渡せば、この街での滞在許可を得る手段を取ってくれるはずだ」

「ご丁寧にありがとうございました」

「よしてくれ。ここまで仕事さ」


どこかむずがゆそうに照れる門番と別れを告げて、セバスはついに町へと入る事が出来た。


すみません、語り口調に挑戦したら全然書けなかっただけです。


今後は火曜日更新にしていこうと思います。

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