物語の始まり
こんばんは。朝倉と申します。のんびりだらりと書いていくつもりです。
この作品が処女作になりますので、いたらない点も多いかと思いますがよろしくお願いします。
その日は12月31日。大晦日だった。
彼、城山浩太は、近所にあるゲームショップの片隅にあった“異世界トリップ“という新作ゲームを買った帰りだった。
新作の割に埃をかぶってたりとか、聞いた事のない会社だとか、レジに持って行った時店主のおっさんが怪訝な顔したとかは関係ないのだ。
年の終わりにゲームを買い、大晦日と新年初日に買ったゲームをやり続ける。これが浩太の年越しの儀だ。だれにも邪魔させない。この為にすでに大掃除は済ませてある。
「我が野望、阻む者は無し!」
ずいぶんと小さい野望もあったものである。
それはさておき。暫く浩太が家に帰るまで時間があるので、彼の事を語るとしよう。
彼、城山浩太は所々残念な子だ。頭は掛け値なしに良い。物事の要点をつかむのが上手く、大抵の事はさっさと出来るようになる。しかしそのせいか物事を続ける気力と言うか根性というか、そういった物が掛けているので成績で見ると中の下の辺りを横ばいで飛行している。身体能力は低くはない。特に鍛えている訳でもないが、通学の為に毎日徒歩で30分程歩いている位だが、そこそこ引き締まっている。顔については……置いておこう。武士の情けだ。
さて、家についた浩太は早速パーソナルステーション5(以後PS5)を起動して買って来たばかりのソフトをセットする。
ヴォォォォと唸りを上げながら作動していくPS5。やはり新型機種の初期ロットは安定さに欠ける。しかし浩太は
「だが、そこがいい!!」
と声高らかに宣言して残りの両親から冷たい目で見られている。しかし自腹で買っているのだから、とやかく言われる筋合いはないと開き直っている浩太だった。
起動画面にはセットしたゲームの他に、あらかじめセットされている全機種の名作ゲームが表示される。世代毎の互換を投げ捨てて、ネット回線で格安に売る事になってから幾世霜。当然のようにこのPS5にもそれは適応されており、さっそく浩太はいくつか全機種で持っていないソフトを買っていたのだ。
そんな画面の中から“異世界トリップ“を選択しプレイを開始する。
“異世界トリップ”はネットで検索しても出てこなかったが、製作会社の欄にあった『GOD』の名前は有名であった。『GOD』はアメリカのゴールド社、インドのオリオン社、日本の大和ネットの三社が出資してできたゲーム会社で、資金力及び技術力の高さから世界中に愛好家がいる。
浩太もその一人で、その事が今回の購入理由の7割を占める。残りは2割の好奇心と1割のお祭り精神だ。
何しろ今回買ったこの作品は、ネットをめぐっても一切情報が見つからなかった作品だ。一応オカルトサイトが引っ掛かったが、どう考えてもゲームの情報は乗ってないのでスル―した。これだけ何もない所を見るとクソゲー、無ゲーの予感がビンビンする。年の終わりにクソゲーを買う。本人曰く
「ゾクゾクして、たまんないんだ!!」
だそうだ。病院に行け。
浩太がM気質なのはさておき、内容の方に移る。
プレイヤーキャラクター(以下PC)は異世界ハルモニアにトリップした現代人である。PC達はその身に降りかかったその現象の謎を解き明かし、元の世界に帰ることが目的になる。これが王道的エンディング。
それ以外にもトリップした世界で産業革命起してもいいし、世界同時革命を巻き起こし鉄と鎌の赤い旗の下に世界を降してもいい。そんな典型的ファンタジー世界だ。
ん? どこがファンタジーって? 魔法もあるし、魔物もいるよ。勇者が魔王を退治しにもいくよ。ほらファンタジー。
……すいません石投げないで下しあ。激しく痛いです。とはいえその説明があながち間違ってもない。現実にはいない空想上の生き物が跋扈し、空気中に漂うマナの力で変異して繁殖した魔獣が闊歩している。文化レベルは全体的に中性ヨーロッパ程度とけっこう低く設定されている。科学的文化はほとんどなく、代わりに魔術が似たような働きをしている所も多い。
ね? 典型的ファンタジー世界でしょ。
そんな世界に行くPCはトリップ時に補正が入り、特殊能力やスキルを身に付ける事になっているらしい。浩太が必死にTV画面の中にあるキャラクターエディットと格闘している。
また暫く時間がかかりそうなのでこのキャラクターエディットの事も説明する。
キャラクターエディットでは、名前に見た目、性別とパラメーターそして種族とスキルを選択する。この中で説明が必要なのは後半の三つ位だろう。
……手抜きはNGだそうです。お願い、パイ投げないで。結構首に来るのコレ。
まず名前だが、入力は全てカナ。前に名前後ろに名字。最も名字を持っているのは貴族か、国王もしくは貴族から名字を名乗る事を許された騎士や豪商、豪農位だ。また貴族になると名前と名字の間にヴァンが入る。例えば田中太郎ならタロウ・タナカになり、さらに貴族になるとタロウ・ヴァン・タナカになる。
浩太のキャラ名は、セバスにしたようだ。
続いて見た目の設定に入る。まずプレイヤーは基本となる型を選ぶ。男性型か女性型の2択だ。型が決まれば、その型に特徴を付けていく。顔、頭、胴、腕、足といった各パーツを選びだし、そこに細かい調整を加える事でプレイヤーが好きな様にカスタマイズできる。そして完成した型に年齢の加減を行い見た目の年齢を決める。上は80、下は4まで下げる事が出来る。
ちなみに浩太は女性型を選択し、年齢を4歳にしている。濃紺色の髪を肩まで伸ばし、前髪はぱっつんにしてある。目はくりくりとしていて鼻は小さめで、全体的に日本人形的なかわいい子だ。そのテの趣味がある人にとってはたまらないだろう。成長時の体型はツルペタストーンにどこぞの男性モデルがやってそうな髪形で、顔は綺麗系の美人さんで全体的に男装の麗人といった雰囲気に仕上がっている。……おまわりさんこいつです。
浩太を通報したくなった所で、性別の選択がある。そう、型の性別に囚われる事はないのだ。この機能によりガチムチのいい女や男の娘、漢女とやりたい放題が出来る。絶対にこの機能を付けたのは日本人だ。間違いない。そして浩太はしっかりと男性を選択している。ショタ男の娘。……素直に幼女では駄目だったのだろうか? 頭痛がしてきた。
さて、パラメーターの説明に漸く入れる。このゲームにおけるパラメーターはStr、Vit、Agi、Dex、Int、Wis、Lukの7つだ。順番に筋力、頑丈さ、素早さ、器用さ、知力、精神力、幸運を示している。この内VitはHPに関係し、WisはMPに関係がある。
初期パラメーターは全て10からになっていて、これは成人したモブのステータスと同じだ。ここからランダムに表示されるボーナスポイントを振り分けてPCのパラメーターを決定する事になっている。……浩太は最高値100を目指して修羅の道に走っているので、セバスのパラメーターは後述する。
では種族の説明だ。まずこのゲームでは大まかに分けて人種は2種類に分類される。源人系と魔人族だ。
源人系の源人とは、太陽神ネシュペルが創り上げた種族で、知恵ある者となら何とでも子をなす事が出来たと言われる種族だ。その為純粋な源人はすでにいない。そして源人系の子孫である現人種、亜人種、獣人種の3種に細分化されエウロパ大陸中に分布している。
対をなしている魔人族は暗黒神マレンポシュが創り上げた種族で、非常に魔力が高く魔素を扱う術にも優れている。容姿の個人差が大きく見た目での親子の判別は難しい。
魔人族は過去の戦争で数が少なく、エウロパ大陸北部の寒さの厳しい地域に住んでいる。
プレイヤーはこの様々な種族の中からPCの種族を選ぶ事になる。しかも父母の種族から決める事もできるので凝り性ならばすごい勢いで時間が食われていく。浩太がどうなったかはお察し下さい。
最後の説明になるのは皆様お待ちかね、スキルでございます。スキルの種類は大まかに分けて戦闘、魔法、生産、その他の4種。
戦闘は弓や剣、鑓に斧と言った物理攻撃に代表される物が入っている。例えばトゥーソードマスタリーという両手剣手用のスキルがある。この技能は両手剣を使用する事でスキルlvが上がっていく。Lvを上げていく事で斬れ味や命中に補正が入っていく。
魔法は基本の四属性である地水火風に加えて、光闇の上位属性と氷雷に代表される変異属性がある。Lvを上げて行くほど強力な魔法が使えるようになり、威力もあがっていく。
生産は名前の通り生産活動に補正が入るスキルで、上げれば上げるほど良い物が出来るようになる。
最後のその他は……色々ある。上記の3つ以外なら大抵ここに分類される。
これらのスキルを手に入れるには、パラメータの時同様にランダムで手に入るボーナスポイントを使用するのできっと浩太は修羅道に堕ちる事になる。
ではセバスが誕生するまで少々お待ちを…………。
~~~~~~~~~13時間後~~~~~~~~~
年越しまで後3分と言った所で浩太は漸くキャラ作を終えた。浩太渾身のキャラクターをご覧あれ。
名前:セバス
年齢:4
性別:男
種族:ヒューマン(クウォーターエルフ&クウォータードラゴニュート)
Lv:1
HP :105/105
MP :65/65
Str:95+29
Vit:20+3
Agi:10+3
Dex:20+6
Int:10+3
Wis:10+3
Luk:20+6
スキル
木魔法 Lv1
身体強化 Lv3 Str、Vit、Agi、DexがLv×10%上昇する。
魔力強化 Lv3 Int、Wis、LukがLv×10%上昇する。
剛腕 Lv3 StrがLv×5上昇する。
索敵 Lv3 Lv×100m内を調べる事が出来る
経験値上昇 Lv4 経験値を通常の4倍上昇できる。このスキルは初期作成時以外、成長しない。
成長率上昇 Lv10 Lvup時に起きるステータス上昇の時通常の10倍成長する。このスキルは初期作成時以外、成長しない。
鑑定 Lv- 見た物が何なのかを調べる事が出来る。このスキルは成長しない。
スキル獲得率上昇 Lv- スキルを獲得しやすくなる。このスキルは成長しない。
浩太は画面に表示される
「これでよろしいですか?」
の文字に満足げにうなずき、次へと進む。そして
「異世界にようこそ」
と女性の様な男性の様な声が聞こえると同時に、この世に城山浩太いたという痕跡と記録はソフトと一緒に消失した。
誤字脱字がありましたら、ご指摘の程、お願いいたします。
今回は説明もありましたので、4000字を超えましたが、普段の投稿は2000字前後になると思います。たぶん、きっと、めいびー……。
次回は1月3日あたりまでに出来たらいいなーと考えています。