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プレリュードモンスターズ  作者: 級長
学園闘争編
3/61

プロモーション 朝凪一機編

以前、連載していたドラゴンプラネット2で掲載したものです。

 古代ギリシャ ある研究室


 古代ギリシャのある部屋で、一人の老人が何らかを書いた紙を凝視していた。そして、不意に立ち上がる。

 「やったぞ! これで人間の営みを戦乱から守れる!」

 彼は何を見つけたのか、それは誰にもわからない。


 現在 名古屋駅太閤通り口


 『プレイヤーの皆さん、おはようございます。私はプレリュードモンスターズ運営、ユートピア社の代表です』

 名古屋駅の太閤通り口は通勤、通学の人々でごった返していた。その近くには巨大なモニターがあり、そこでスーツを着た人が会見をしていた。付近の家電量販店のテレビも同じ映像を流しており、異様な光景を朝の爽やかな時間帯に浸透させる。

 『我々はゲームをより楽しんでいただくために、モンスター実体化システムを実装しました。モンスターが現実になれば、より多くのプレイヤーにガチャなどを利用していただけるかと』

 ざわめく群集。今日はエイプリルフールではない。その群集からある光が放たれた。あるプレイヤーがモンスターの召喚を試したのだ。

 『早速ご利用いただけて嬉しい。マイページの召喚ボタンから、ぜひ召喚してほしい。ゲームが現実になる様を、体験いただきたい』

 召喚されたのは5メートルほどのドラゴン。群集はパニックに陥る。召喚したプレイヤーは何を思ったのか、突如叫んだ。

 「さあお前ら! 命が惜しければ金を出せ! さもなくばドラゴンがお前らを殺す!」

 『楽しんでいただけてるようで何より。彼は強いモンスターをガチャで手に入れた。強いモンスターを持つプレイヤーが犯罪をする可能性など計算済み。身を守るために、皆さんもガチャを回して強いモンスターを手に入れようじゃありませんか』

 テレビの男はニヤリと下品に笑った。群集は抗議の声を上げた。命を人質にガチャを回させようとしているのだ、この男は。

 ソーシャルゲームは一度コンプガチャを規制されたほど阿漕な商売。それが今度は命を盾にし始めた。

 『命のためなら金など惜しくないでしょう? さあ回して! 出来なければ死んで下さいよ!』

 別の場所にモンスターが召喚され、さらに混乱が深まる。人々は逃げ惑い、課金すべく急いだ。


 岡崎市 東岡崎駅『コンビニ解放戦』


 そんな混乱は他にも波及した。混乱で電車が止まり、一人の高校生が渋々駅を出た。

 「歩くか」

 学校どころではないのだが、律儀に彼は学校へ向かおうとする。ブレザーの制服を慣れた様に着こなし、長い前髪で顔を隠した眼鏡の男子高校生。雰囲気は暗く、イヤホンで音楽を聴き、周りとの関係を閉ざした。

 「あ、コーヒー買おう」

 高校生は朝にコーヒーを飲みそびれたので、コンビニで買うことにした。彼はコーヒーを飲まぬば、夕方くらいに頭痛がするほどカフェインに依存していた。確かに雰囲気が薬物中毒者みたいだ。

 「さあ、コンビニに入りたくば金を出せ!」

 「入れてくれー!」

 「課金させて!」

 駅前のコンビニでは、店員がモンスターで客を脅していた。ソーシャルゲームの課金には、コンビニなどで販売されているカードを買って、それの番号を入力することで課金に使うコインを手に入れる。だからこの非常事態が起きた段階で課金を考えた人々が現れたのだ。

 「さあ、いくら出す!」

 既に課金していた店員はこれを利用。足元を見て店への入場料を取ろうとしたのだ。高校生はすたすたとコンビニに歩く。自分の生徒手帳を確認し、この事態で学校をどうするか考えていた。

 「さすがに無いよな」

 生徒手帳には高校生の名前、『朝凪一機』と書かれていた。手帳には『ソーシャルゲームが実体化した場合』の対応方法など書かれておらず、自分で考えるしかないようだ。

 「大学をAOで受かったと思ったらこれか。ツイてないな」

 コンビニに向かったのは、自販機のコーヒーが悉く売り切れていたからだ。それも含めてツイてない。

 「さあ貴様! いくら出す!」

 朝凪がコンビニに近づくと、店員がいきり立つ。脅しに使われたモンスターは『スケルトン』。このゲーム、プレリュードモンスターズをやり込んでいれば無課金でも恐れる必要は無い。店員はこれから始める、モンスターを持たない人間向けにこれを出したのだ。

 「金を出せ!」

 店員は朝凪に手を出す。朝凪はそれに向かってあるものを突き立てた。

 「ナイフだあぁぁぁあああッ!」

 「ええええぇぇっ?」

 朝凪はなんの抵抗も無く、ダガーナイフを店員に刺した。あんまりな事態に全員が絶叫した。このナイフは朝凪が事前に召喚した『シーフガール』の持ち物。朝凪はプレリュードモンスターズのプレイヤーだった。


 シーフガール

 レア度:ノーマル

 属性:風

 コスト10

 スキル:ナイフ

 説明文:盗賊団の少女。身軽な動きとナイフ捌きで敵を翻弄する。


 シーフガールはセミロングの茶髪を揺らし、スケルトンに飛び掛かる。厚手の長ズボンを穿いた下半身とは対照的に、黒いタンクトップを着ただけの上半身は細身で引き締まっていた。スケルトンをシーフガールに任せ、店員が落としたスマホを壊しながら朝凪はコンビニに入る。

 「こういう時はツイてるんだよな。初陣の相手が馬鹿で助かった。さすが『岡崎一悪運の強い男』。あそこに万が一で用意したスナイパーが無駄になった」

 「これは酷い」

 「さっきの店員とてここまでは」

 救ったはずの人々から非難轟々で入店。何故なら、失敗した時の為に弓を番えたエルフの少女、『リトルエルフ』まで召喚していたからだ。

 朝凪は悠々とコーヒーを選ぶ。しかし、他の店員もグルだったのか店でもモンスターや店員が待ち構えていた。

 「うわ、たっけー。入場料取った上で値段吊り上げかよ」

 「よくも仲間を!」

 朝凪が課金に使うカードの値上げにドン引きしていると、店員が強そうなモンスターを集めて彼を囲んだ。

 「さて、ここに多数の『リトルボマー』がいる」

 「えっ?」

 しかし朝凪は臆病にして卑怯。既に手は打ってあった。いつの間にか爆弾を背負った兵士が店にたくさんいた。これが爆発したら大変マズイことになる。

 「考え直せ小僧!」

 「ちょ…まっ!」

 懇願する店員を摺り抜け、朝凪は店を出た。そして爆発。しかしリトルボマーが背負っていたのは癇癪玉。デカイ音を立てただけで終わる。店員は爆発したものと思い、気を失っていた。


 リトルボマー

 レア度:ノーマル

 属性:炎

 コスト5

 スキル無し

 説明文:訓練中の爆破工作員。訓練の為に普通の爆弾より重い癇癪玉を背負っている。


 「いやー、おめざのコーヒーはいいですな」

 「外道だー!」

 朝凪はコーヒーを飲みながら、その場を後にした。唖然とする人々を残しながら。しかし、それを許さない人物がいた。

 「死ねぇえ! 『スタードラゴン』ッ!」

 ナイフで手を刺された店員が逆上して、輝くドラゴンを召喚した。だが、朝凪は携帯を操作するだけ。

 「召喚、『ナイトメアメイデン』」


 これから始まる物語は、シナリオライターを目指す大学生、朝凪一機とその仲間達の、戦いの記録である。

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