番外 センター試験の頂上決戦
鉄鬼姫モミジ
属性:鉄
レア度:Sレア
コスト26
スキル:鬼徹斬(敵1体に致命的ダメージ)
説明文:鉄鬼達を束ねる姫君。愛刀の鬼徹は鬼にしか扱えない妖刀である。
シスター・ミィ
属性:光
レア度:Sレア
コスト24
スキル:セイグリットスラッシュ(敵1体に致命的な光属性ダメージ)
説明文:バーレリア協会所属の、近接戦を専門とするシスター。『アイ』と『マイ』を含めてトリオで動く。
2013年1月 某大学 センター試験会場
今日は大学入試センター試験の日。音色凜子は自分が試験を受けた日を思い出しながら、試験の準備を手伝うアルバイトをしていた。
「これでよし……と」
一通り、時計の調整が終わった。時間は正確にしなければならない。
外ではモンスターの攻撃を警戒し、受験生の家族が警備に当たっている。センター試験は大事な時、モンスターに邪魔されては適わない。
外では朝凪とモンスター達がパトロール。受験ノイローゼになった馬鹿がモンスターで攻め込んだら大惨事になる。弟やクラスメイト達が受けるので、高校の先生に頼まれて来た。
「異常無し、と。しかし刺激的に寒いな。ピザまんとコンポタ無しじゃやっとれん」
「人間にはキツイかも、なの」
「バイト代出るからいいけど、家に帰りたい」
朝凪は完全防寒装備で、ピザまんとコーンポタージュで寒さを凌いでいた。一方、クロノはいつものゴスロリ和服。薄手なので寒いはずだ。イヴもいつも着ているレザーのナース服。モンスターは寒さに強いのか、暑がりなのかわからない。
「ブラックアッシュドラゴンを見ろ。マフラーに帽子で防寒だ」
「ドラゴンは爬虫類なの」
ブラックアッシュドラゴンは寒そうにマフラーまでしていた。巨大サイズのドラゴンが寒さに震える光景はシュールの一言。
「あんたしっかりしなさいよ。雪山にいるティガレックスを見習いなさい」
「ティガレックスは普段、砂漠とか暑い場所にいるぞ。亜種に至っては火山だし。雪山は狩りに行くだけだ」
某狩りゲームの看板モンスターを引き合いに出されても、ブラックアッシュドラゴンにはどうしようもない。顔が恐竜っぽいため、余計にティガレックス扱いされ易い。
「クルル……」
「ハッタリが効くとはいえ、ブラックアッシュドラゴンじゃ厳しいか」
ついにブラックアッシュドラゴンはおでんを大鍋で抱えて食べ始めた。炎のドラゴンでさえ凍えるほど、今日は寒い。雪まで降っている。
「暇だな。そうだ、クロノのお姉さんってどんな人なんだ?」
「えっ? それは……凄く素敵な人。二刀流で強くて、かっこよくて綺麗なの」
朝凪はふと、クロノの姉が気になった。彼女は度々、姉のクロードを話題に上げる。姉の話をするクロノはいつも、少しはにかんでいた。重度のシスコンに違いない。
「でもさ、私達は死人がモンスター界で転生した姿でしょ? 姉ってのは生前の話? それともモンスター界で会ったの?」
「会ったのはモンスター界だけど、お姉ちゃんは私を妹として迎えてくれたの。私は小さい時に死んだから生まれたモンスターだし、生前の記憶は無いの」
「ま、血より濃い絆の繋がりってやつだな」
モンスターは死んだ人間の魂から生まれる。クロノは死んだ胎児から生まれたため、自分が生きていた時を知らない。
「よ、見回り終わったよ」
「仁機さん達、頑張ってるかなー?」
パトロールを終えた弟のモンスター達と合流する。参機のモンスター、鉄鬼姫モミジと仁機のモンスター、シスター・ミィだ。
武器は両方共に刀だが、ミィは小柄なため背負った刀が大きく見える。モミジは派手な柄の着物を着ており、ミィはシンプルな修道服。服装自体はまともだが、寒そうなのは変わり無い。
鉄鬼姫なだけあり、モミジは夜空の様な髪が美しい和風美人。ミィは金髪で、小柄なのと言動から幼い印象を受ける。
「スピンスピン」
「え?」
「なんかそんな問題出たらどうしような。小説の問題とかで。ま、出ても作中劇か」
朝凪は何かの電波をキャッチした。まさか公のセンター試験が、ニコニコ動画で『公式が病気』のタグを付けられるような真似はしまい。
「まさか、真面目なテストで……」
「そんなテスト受けた医者の指示で看護するの私嫌だよ。よってありえん」
「だろうな」
「おほほほほほほほほほほ」
「あはははははははははは」
モミジとイヴは笑い合っていたが、その嫌な予感は今年度と来年度に的中した。
「アリだー!」
「敵襲だな」
他愛のない話などをしていると、敵が襲ってきたとの知らせが入る。敵はアリなのか。朝凪達は声のした方に向かうが、ブラックアッシュドラゴンはおでんに夢中で置いてきぼり。
「アリじゃねーじゃん」
朝凪達が目にした敵の姿は非常に不気味だった。妙に手足が細く、脳が肥大化して露出している。平たく言えば、妖怪人間ベムを気持ち悪くした感じだ。
「出た! 受験戦争の犠牲者、パーフェクトブレイン!」
「知っているのかイヴ」
「ありとあらゆる薬物を幼少期からドーピングした結果、頭はよくなったが人間性は失われたという設定のエネミー!」
「設定なんだ」
イヴによると、モンスターとは違うエネミーという存在らしい。朝凪もこれは聞いたことがある。モンスター界には戦いのための区画があり、そこで戦いの相手をしてくれる役である。人間の魂からではなく1から人造で作られた存在がエネミーだ。ブラックアッシュドラゴンもエネミーに類する。
「それがこんなにたくさん!」
「で、対策は?」
「とにかく潰す! 暗黒救急車!」
イヴの出した対策は倒すことのみ。頭はよくなったが肉体は弱そうだ。暗黒救急車がイヴの隣に立ち、巨大な黒いメスを口から出した。
「本気モードで手術を開始する!」
黒いメスの柄から触手が伸び、イヴの腕に絡み付く。メスはその生物的フォルムを表した。触手は身体にまで巻き付く。
「このメスは使用者からエネルギーを吸い取ってパワーに変換する。因みにこの手のエナジードレインは気持ちいいから、つい逃げるタイミングを失って死ぬ奴が多いのよねー」
メスの一振りで3体のパーフェクトブレインが切り裂かれた。他のモンスター達も応戦するが、反撃によってボロボロにされていく。
「私達しかいないの」
「元よりカタギに戦わせるつもりはない!」
クロノが翼を広げ、モミジは鬼の力を解放して敵に切り掛かる。モミジの額には角が生えていた。
「えーい! 仁機さんの邪魔はさせません!」
ミィも刀でパーフェクトブレインを切り伏せた。朝凪陣営は徐々にパーフェクトブレインを撃退していく。
一方、モンスターが出現したために避難している人間もいた。音色凜子もその一人である。モンスターを所有する高校生が応戦中との報告があり、試験は続行。いつ何時モンスターが襲い来るかわからない時代、こんなことで試験を中止していてはセンターが成り立たなくなる。
「なんでみんな逃げないのかな……下手したら死んじゃうのに」
凜子は逃げない受験生に困惑しながらも、その理由がわかる気がした。将来を決めるための戦いだからだ。しかしこうして命懸けでも、夢があるならまだしも、何の目標も無くいい大学に行けさえすればよいとする姿勢は異常とも取れる。
高卒で就職することが不幸のような、現場には幸せなど無いかのような発想こそ病理。実際は下手に大学出て、就活の難易度を悪戯に上げているだけだ。凜子も夢があったが、親の反対で面白みも無い大学に行く羽目となった。
「きゃあっ!」
逃げていた凜子は突然、沼の様なものに嵌まってしまった。黒い泥みたいなものに足が埋まり、動けなくなる。
「ひっ……」
泥の中からパーフェクトブレインが姿を現す。他に避難していた人間が泥に埋まり、力尽きていた。
沼が広がる中心には、泥の山があった。そこに埋まっているのは、かんたん携帯を持って高笑いする老人だ。騒ぎの犯人はこれだろう。
「ふん、わしが若い頃には大学など一握りの男しか行けなかった! それをなんだ、わしらが経済成長を遂げた途端、それを食い荒らす若造が!」
老人だろうと携帯がネットに繋がればモンスターを召喚出来てしまう。つまり、自分勝手な思想を持った人間がいともた易く武力でそれを押し通せる危険性がある。
凜子は身体に力が入らず、沼から脱出出来ない。泥から出るガスは悪臭がして、それに毒が含まれていたのだ。
(私……死ぬの?)
初めて、自分の死ぬ可能性を考えた。今まで、自分が死ぬなどカケラも考えたことが無い。だが、人間というのは積み上げた人生に反比例し、時に呆気なく死ぬのだ。
諦めかけたその時、上空にドラゴンが舞った。銀の粉を振り撒き、泥を水に分解する。
「誰だ?」
「墓場に片足突っ込んだ人間が、未来に植える種を炒って喰らうんじゃないよ。ハードボイルドにやりな、オキシダントシルバードラゴン!」
ハードボイルドなオッサンがバイクに乗り、ドラゴンに指示を出す。銀色のドラゴンは粉を強く撒き、徐々に泥を消した。銀には泥に反応する性質がある。その銀がドラゴンの力で強化され、解毒作用を持ったのだ。
「逃げれる!」
「あ、くそ! 誰だ!」
捕まえた人間に逃げられ、老人は憤る。凜子も泥から脱出した。ハードボイルドなオッサンはマッチでタバコに火を付ける。ちゃんと燃え滓は携帯灰皿にしまう。
「貴様、役立たずの若者から命を奪い、私が君臨し続ける作戦を!」
「材料の時点で役立つものなんざねぇよ。俺はこれでもバイクのメカニックで、部下もそれなりにいる。お前より若者の鍛え方はわかる。さて、お邪魔虫は退散しますかね」
ハードボイルドなオッサンはそれだけ言うと、オキシダントシルバードラゴンと共にバイクで退散。空からは朝凪のブラックアッシュドラゴンが来ていた。
「グルルルッ!」
「ひー! 物の怪じゃー!」
寒い中、空を飛ばされてブラックアッシュドラゴンはおこぷんぷん丸などというレベルではない。暑いを通り越した熱い場所に住むブラックアッシュドラゴンの翼は大きく、放熱の役割があるから冬に飛ぶと寒い。手足や翼が赤く色付き、ムカ着火ファイヤーに到達した。
「ガキシャアアアァァァァアッ!」
遂にカム着火インフェルノォォォオオオウに到達。咆哮だけで周りのパーフェクトブレインが消し飛ぶレベルだ。老人も鼓膜が破れ、脳を揺さ振られる。
「ガウガグルガァァァアアァァッ!」
そして怒りレベルが激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームに。咆哮で地面から熔岩が吹き出し、周りに熱が放たれた。寒いのが苦手だからといって、怒り過ぎだ。
それもそのはず。彼はおでんで寒さを凌いでいたが、それがパーフェクトブレインの攻撃で鍋に穴が空き、つゆが流れてしまったのだ。具を食べてもすぐに冷めてしまい、それに腹を立てていた。
「マヌケめ! 私の本気を見よ!」
老人は泥をかき集め、一つの巨大なゴーレムになった。『ドラッグベノムゴーレム』。先行販売されたユニバースレアのモンスターだ。エナジードレインが可能で、プレイヤーに自分が吸い取ったエナジーを分け与える。身体は毒物で出来ており、獲物を逃さない。
ブラックアッシュドラゴンと同じサイズとなり、老人はドラゴンに殴りかかろうとした。
「ぬべし!」
しかし、ブラックアッシュドラゴンの本気は圧倒的。拳に炎を燈したパンチで体勢を崩す。
「グルル」
ブラックアッシュドラゴンは翼を広げ、巨大な炎の塊を自らの頭上に作り出す。それを身体に纏い、ラッシュやコンボを決めてドラッグベノムゴーレムをた易く粉砕した。
「ま、待て、話せばわか……ぼぶべッ!」
ブラックアッシュドラゴンは最後に倒れたゴーレムから老人を引っこ抜き、空の彼方にブン投げた。老人はお星様になりましたとさ。
プレイヤーを失ったパーフェクトブレイン達は消滅した。ブラックアッシュドラゴンの咆哮で試験会場のガラスが割れたが、受験生はあのPat様が数学に降臨なさったため、それどころではなかった。
「いやー、さすがだブラックアッシュドラゴン。敵の本体を叩くなんて」
「ほれほれ、もっと食え」
ブラックアッシュドラゴンは小型し、イヴにコンビニおでんのウインナーを食べさせてもらっていた。今回は無尽蔵に湧き出るモンスターの本体をブラックアッシュドラゴンが叩き、見事解決した。
「ブラックアッシュドラゴンにあんな力があったとは、食い物の恨みは怖いな」
朝凪が携帯を確認すると、ブラックアッシュドラゴンのカードに『激昂』モードが追加されていた。まさかの新戦力である。
「パワーアップ理由が一機のモンスターらしいな」
モミジはおでんがきっかけのパワーアップに呆れていた。ただ、悲しみを背負うことで覚醒するより穏便で前向きなパワーアップであるのは確かだ。
「やっぱり俺の相棒は最高だな」
朝凪はポケットからモンスターラプソディのカード『業炎龍ブラックアッシュドライブドラゴン』を取り出す。結局発売に至らなかったブースターのカードだが、昔からの相棒であるブラックアッシュドラゴンの可能性としてお守りにしていた。
「さて、どんな進化を遂げるのかね、こいつは」
皮肉にも念願が叶い、自分の隣にブラックアッシュドラゴンはいる。このプレリュードモンスターズで、ブラックアッシュドラゴンはどんな可能性を見せるのだろうか。
ドラッグベノムゴーレム
属性:毒
レア度:ユニバースレア
コスト10
スキル:ベノムドレイン(体内に取り込んだ相手の命を吸い取る)
説明文:毒沼に化学物質を注いで生まれたモンスター。稀少な毒属性の使い手であり、沼で出来た身体はまさに無敵。
激昂のブラックアッシュドラゴン
属性:火(水属性ダメージ等倍化)
レア度:?
コスト?
召喚したブラックアッシュドラゴンにコストを注いで『激昂』。注いだコストだけパワーアップ。
スキル:ブレイバーブレイズドライブ(ステータスを10倍に引き上げる)
説明文:怒りに燃えるブラックアッシュドラゴン。手足が紅く染まり、膨大な熱を放つ。




