-序章 悪夢の乙女-
プレリュードモンスターズ、遂にプレイヤー100万人突破! 『モンスター実体化システム』の導入で興奮も最高潮!
今なら限定モンスター『アルケミスト』貰える!
名古屋市営地下鉄 名城線金山駅
4月頭の名古屋市営地下鉄。そこには新しい生活を始めて喜び半分、不安半分の学生や社会人達が溢れていた。これから始まる新生活、希望と絶望が入り乱れる初日である。
そんな初日の夕方、悲喜こもごもな戦果を己が胸に抱えて帰路についていた。
『落ち着いて避難して下さい! これは訓練ではありません!』
そんな初日にいきなり阿鼻叫喚。志望校に行けないショックが募りまくって列車に飛び込みでもしたのか。いや、それなら避難の理由がわからない。とにかく、言いようの無い混乱に駅構内は満ちていた。
なぜなら、地下鉄のホームで何かが暴れていたからだ。そう、何かである。何故か屋内なのに暴風雨が吹き荒れていた。そのものは人に近いシルエットをしていたが、背中に翼を生やして、身体そのものはメカニカルで無機質だった。
天使だろうか、無機質な外見は無慈悲さの裏返しなのか。
「フハハハ! 吹き荒れろ! 田舎者共を吹き飛ばしてしまえ!」
その天使の傍にいながら、バリアで雨風を凌いでいたのは高校の制服を着た少年。都会らしくブレザーだ。スマホを手に、天使に指示を出す。
「奴らを逃がすな! エクストリームスロウンズ! 雨を降らせろ! 【ストームバースト】!」
『暴風大雨警報が発令されました! 落ち着いて避難して下さい!』
天使が暴れ回ることで、災害クラスの被害が出ていた。これは天災ではない。少年が引き起こした人災だ。このエクストリームスロウンズなる天使は、少年の操り人形だ。
「てめぇら田舎者がわらわらわらわらわらわらと! こっちの大学に来るもんだから俺様が落っこちちまったじゃねえか!」
まさかの逆恨み。こんなことに付き合う天使も大変だろうが、何故か天使は黙って付き合う。これほどの力がありながら、何故この様なくだらないことに手を貸すのか。甚だ不明である。
「貴様か! 我々の『領土』で暴れるよそ者は!」
「カントリーの領土にした程度で意気がるな田舎者が!」
そこへ、同じ学校の制服を着た男子が現れる。しかし、彼らは敵同士みたいだ。何が起きているのかサッパリわからない。男子はスマホを前に突き出し、何かを叫んだ。
「召喚! メテオドラゴン!」
スマホが赤とオレンジに輝き、巨大な魔法陣が男子の後ろに現れる。そこから、ホームを圧迫するほど大きな蜥蜴が姿を見せる。まだ、前足までしか出ていないのにこの迫力だ。しかし、巨大過ぎて前足より後ろが出られない。ホームの天井につっかえている。
「馬鹿め! そのメテオドラゴンを有利に倒す為にエクストリームスロウンズはガチャに入ってたんだよ! 【ストームバースト】!」
「ぐわああ!」
天使が発動した技で、辺りが暴風雨に包まれる。ここは屋内のはずだ。既に地下鉄の線路は水没。地下鉄のホームというより、船に乗るアトラクションの乗り口みたいだ。
男子は吹き飛ばされ、水没した線路に落ちる。メテオドラゴンはダメージを追い、消滅した。この世の光景とは思えない、冗談みたいな景色だ。
「逃げ遅れの田舎者だ、やっちまえ!」
少年は地下鉄のホームを歩く、一人の青年を見掛けた。フードを目深に被り、素顔が見えない。ただ、ガラケーを操作しながら歩く。その瞳は、一カ所に焦点を合わせない。
そして、青年はガラケーを空に掲げて言った。ガラケーが紫のエフェクトを発し、光り輝く。
「安らかな宵闇が絶望の閃光を覆い隠す。希望の暗黒となれ! 召喚、ナイトメアメイデン!」
青年は妙な前口上と共に何かを呼んだ。
青年の前に紫の魔法陣が表れ、そこから一人の少女が出てくる。艶やかな長い黒髪を暴風にはためかせ、紫の瞳で凜と敵を見据える。黒いながら、花の柄やフリル、深紅の飾り紐で彩られた丈の短い和服が華やかだ。
袖が本体と分割されており、上腕に飾り紐で留められている。つまり、この和ゴス風味の服は肩と背中が大きく露出している。そうする必要がある理由、それは背中から生える漆黒の翼だ。細い手指に刀の柄を絡め、天使に対峙する。
これが、ナイトメアメイデンという少女。
「し、知らないモンスターだと? どんなチートを……」
「お前、このゲーム最大の魅力であるクリエイションシステムを忘れたのかい? ほら、ベースにしたいモンスターと適当なモンスターを組み合わせて質問に答えると新しいモンスターが出来上がるアレだよ。これって普段は既存のモンスターが出来るけど、たまに超クリエイションとかいってサーバーに無いモンスターが生まれるんだよね」
青年は困惑する少年に早口で解説した。つまり、とにかくこれはゲームらしい。ゲームで災害が起きてたまるかという話でもあるのだが。早口のおかげで少年はクリエイションというシステムを半分も理解できなかった。
「チッ、無課金の貧乏人ご用達のチートシステムか!」
「なんでもベースになるモンスターに強い思い入れがあると超クリエイションできるらしいなぁ。クリエイションのベースに出来るのは最大まで強化したモンスターだけだし。つまりモンスターを自己顕示の道具にしてる廃課金者には一生縁の無いシステムだな。特効モンスターをイベントごとに乗り継ぐお前にはぁ!」
うれしそうに語る青年と反対に、少年は忌ま忌ましそうに唾を吐いた。今、少年の横にいるエクストリームスロウンズも、少年は好きだから使っているわけではない。次のイベントが終わるまで特効、つまり能力に補正が付いて強いから使っているのだ。
「どうなってんだよ、サーバーにデータの無いモンスターが生まれるとか!」
「さてなぁ。そこはブラックボックスだし」
「てめぇらみたいな無課金がいるから、このプレリュードモンスターズは『モンスター実体化システム』を!」
少年は青年に吐き捨てた。これは元々、モバゲーやグリーなどで有名な携帯ゲーム、ソーシャルゲームなのだ。しかし、モンスター実体化システムを導入してこの様な状態になったとかなんとか。結果が大惨事である。
「おいおい、それは現実の命を人質に課金させる搾取システムだろうが。ま、俺は嫁のクロノが出てきたからマジでご馳走様ですがねっ!」
青年はナイトメアメイデンの肩を抱こうとするが、彼女に黙って振り払われる。そして思い切りジト目で睨まれる。クロノという愛称まであるようで、超クリエイションとやらのシステムがわかりやすく表れた風景だ。思い入れがモンスターを強くする。
「え? ダメ?」
「っ……」
青年の思い入れと反対にナイトメアメイデンには嫌われているのか。しかし彼女の顔が赤く、拒絶以外に何か訴えて見えた。
このゲームのモンスターが実体化する現状は、ゲームの運営会社が課金して沢山もらうために仕掛けたのだ。確かに現実に課金がフィードバック出来ればプレイヤーはより課金するだろう。そして、その課金した結果で現実を思うがままに出来る。今の少年の様に。
そして、そんなプレイヤーから身を守る為にプレイヤーで無かった者まで課金して防備を固めようとする。課金で回せるガチャから強力なモンスターを手に入れることが、身を守り命を繋ぐことになるのだから。
「ふん、そんなことはいい! 俺様は今猛烈に苛立っている! 田舎者共が大学を占拠する恐ろしい状況にな!」
「学生運動、懐かしいなオイ」
「お前も田舎から来た大学生だろうが! 田舎から沢山のゴミクズが集まり、俺様の邪魔をする!」
「タイショーくんって野良ハムスターなんだよな。今考えると凄い話だ」
少年がこの惨状を引き起こしたのは、単に自分が大学に落ちた逆恨みだ。しかし支離滅裂な発言で青年に伝わらない。青年の受け答えもぐちゃぐちゃだ。恐らく少年の発言から連想した話題なのだろう。
「貴様ら田舎者がこっちの大学志望するせいで、俺が合格できねーだろが! 押し出されたんだよ!」
「ところてんって有名だけど実際食べたことないな。とりあえず警察呼んでお薬増やしますね」
青年は大人しく警察を呼んだ。正しい判断だ。普通に少年はヤバい奴だろう。青年は気を取り直し、声高らかに宣言した。
「とにかく! 俺にはお前を倒す必要がある。小牧大学創造文化学科一年生の俺には!」
「それはこっちの台詞だ! それ俺の志望校だ!」
その青年、朝凪一機は床にドンとある機械を置く。それはコンビニによくあるホットフードを入れるフライヤーという機械だ。ボロボロに破壊され、ガラスも割れている。
「お前の暴風でこの機械が破損、中のアメリカンドッグの尊い命が奪われた。よってお前を許さん!」
「学科関係無ぇ! こんな奴に負けたら恥だ! 召喚、エデンナイトランス、エデンナイトソード!」
少年はスマホを掲げて召喚した。白いエフェクトが輝き、魔法陣が2つ現れる。鎧の騎士がそこから出てきた。天使の翼もある。
「クロノ! 【絶閃】!」
朝凪がクロノに指示すると、彼女の刀が怪しく煌めく。それが2人のナイトと1人の天使を切り裂く。
「モンスターが持つスキルは効果的に使うべきだよなぁ。召喚直後とスキル使用後はしばらく使えないからなあ!」
「おのれ、闇属性か!」
モンスターには属性がある。光と闇はそれぞれ互いが弱点なのだ。見事弱点を叩き込まれた騎士は崩れ落ちる。少年のモンスターは光属性で統一されていた。故に全員が大ダメージだ。
「使える! 喰らえ、【ストームバースト】!」
しかし、闇属性のクロノは光属性が弱点。エクストリームスロウンズのスキルを喰らえば危険だ。少年はクロノを朝凪ごと狙う。クロノが召喚された瞬間に使えなかったのは、メテオドラゴンに使ったからしばらく待たないといけなかったのだ。
「当たらなければ、どうということはないぃ!」
「貴様!」
しかし、クロノは朝凪を抱えて少年を守るバリアに入る。ストームバーストは空振り、しかもしばらく撃てない。
「召喚! デンピヨ! クックックッ、動いたら命はねぇぞ!」
朝凪がガラケーを振り、適当なモンスターを召喚する。郵便局員の帽子を被り、伝票をくわえたヒヨコだ。主を人質にされ、エクストリームスロウンズは攻撃出来ない。
「卑怯だぞ!」
「どんな手を使おうとも、最終的に勝てば良かろうなのだああッ!」
クロノが猛攻を加え、エクストリームスロウンズを切り刻んだ。いくら強くても、攻撃出来なければ勝てない。
「クソがッ! この卑怯者!」
「頂点は、常に一人! あ、待てスマホよこせ!」
少年はデンピヨと油断した朝凪を振り払って外へ逃げる。自分が民間人を巻き込みながら相手には正々堂々を求めるとは、程度が知れる。
「待てコラ!」
名古屋ボストン美術館の前に来た少年は朝凪に追い付かれる。少年の前にクロノが周り込み、後ろは朝凪が固めた。完全に追いつめられた形だ。既に空は漆黒。日は落ちていた。暴風雨はある程度収まり、今はただの雨が降るのみ。
「追い付いた! こっから先はR指定だぁ!」
「クソー! 召喚、ヴェントゥスウイングドラゴン!」
少年はスマホを掲げ、召喚を試みる。緑のエフェクトが光り、空に緑の魔法陣が現れた。そこから姿を見せたのは、純白のドラゴン。ヴェントゥスウイングドラゴン。細身の身体に巨大な翼、スピードは速そうだ。慎重は5メートルくらいか。風属性のドラゴンだ。
「風なら、頼む! 世の不条理理不尽筋違い、晴らして一つの道とする。救世の炎よここに! 召喚、ブラックアッシュドラゴン!」
朝凪も対抗して前口上を言いながら召喚した。地上に浮かぶ赤い魔法陣から出現したのは、漆黒のドラゴン。こちらは身体ががっしりしており、慎重は白いドラゴンと同じくらい。そして、腕が発達している。巨大な翼も力強さを感じる。炎属性のドラゴンだ。
「こっちのレア度はゴッドレア、あっちは所詮Sレア! 吹き飛ばせ!」
少年はドラゴンに指示を出し、攻撃させる。白いドラゴンはブラックアッシュドラゴンに突進する。
「属性には相性がある。風は炎に弱い!」
しかし、属性はブラックアッシュドラゴンが有利だ。このゲームの基本属性は炎、風、土、雷、水であり、『炎→風→土→雷→水→炎』というローテーションを描いて相性がある。炎は風、風は土、土は雷、雷は水、水は炎に強い。
ヴェントゥスウイングドラゴンは全力のパンチをブラックアッシュドラゴンに見舞う。しかし、それは軽く止められてしまう。
予想外の出来事に少年は焦る。
「またチートか!」
「いやスピードタイプは逆立ちしてもパワータイプのアッシュには勝てんよポルポルくーん!」
ウイングドラゴンはスピード特化型のモンスター、対してブラックアッシュドラゴンはパワー特化型のモンスター。レア度やステータスはヴェントゥスウイングドラゴンが上といえ、パワーだけで比べればこんなものだ。誰にでも苦手分野はある。
しばらく地上で2頭のドラゴンが格闘戦を繰り広げる。飛べばウイングドラゴンが相手を翻弄出来るものの、課金で得た高ステータスでごり押し以外考えない少年はじり貧状態に苛立つ。
ブラックアッシュドラゴンはウイングドラゴンの攻撃を真正面から受けてもびくともせず、逆に渾身の一撃を連続で叩き込む。ウイングドラゴンの主戦力はブレス攻撃。肉弾戦にも弱い。弱くても10発以上耐えるのだから、レアモンスターの力は凄まじい。
しかし、ごり押ししか出来ないと同ランクのモンスター同士の戦いでは間違いなく少年は弱いだろう。自分のモンスターが得意とする土俵へ持ち込む技量がこのゲームに必要。だが、少年はわざわざ相手の土俵に踏み込んで勝負している。
「ちゃんと働けよ! お前を手に入れるに30万かけたんだぞ!」
「サラリーマンの平均月収がタウンワークに負けてちゃ話しにならんなぁ! 基本無料のゲームに課金したら負けだなこりゃあ!」
少年は30万もの金を費やして手にしたドラゴンが無様に敗北する姿に戦慄した。このゲームはバランスがおかしいと、自分の戦い方を棚に上げて運営を糾弾する。
このヴェントゥスウイングドラゴンはイベントの入賞者上位100名にのみ配布されたレアモンスター。かかる金に見合った力はあるはず。
モンスターが実体化する前は完全なターン制バトルなので、能力差ごり押しがマストな戦法だった。しかし今は奥行きも高さもある、ターン制ではない三次元のバトル。工夫しなければ負けるだけ。
「ならばスキルだ!」
ウイングドラゴンは空高く飛び上がる。ブラックアッシュドラゴンもそれを追った。
「【ヴェントゥスレイ】!」
少年の指示を受けたウイングドラゴンは風を纏い、ブラックアッシュドラゴンに突進した。強い風で周りの街路樹が揺れる。まるで竜巻。近くの車がガタガタ揺れて浮き上がりそうだ。
「ゲームに金も出せない奴なんざ消えろ! ただ俺達上流階級の歯車になればいいんだ!」
「親の金で偉そうに……人は手前の食いぶちを自分で稼げて一人前なんだよクソガキ! もっともぉ、俺も手前の食いぶちは稼げてないから同じだが、いやいや偉そうにしないだけマシか」
今にもレアモンスターの一撃が迫りそうな中、朝凪は余裕だった。何されても勝つ算段はある。そういうことなのか。
「【フレイムブリーズ】!」
「何?」
しかし、朝凪はブラックアッシュドラゴンのスキルで迎撃した。激しい炎を口から吐き出す。炎のブレスで焼かれたウイングドラゴンは苦しみながら空を飛ぶ。周りに纏った風で炎が通常より燃え盛ったのだ。空気があると炎は燃える。だから風属性は炎に弱いのだ。
「そんな馬鹿な!」
「風のせいで炎が空気を含んでよく燃えるんだよ! ジャンジャジャーン! 今明かされる衝撃の常識!」
ウイングドラゴンは近くのパチンコ店に墜落して消えた。幸い、客は避難していた。が、台やら金庫の金は燃えて潰れただろう。パチンコ店は完璧な全焼となった。
「うわあああ!」
熱風に煽られた少年は吹き飛び、コンクリートに頭を打って気絶した。朝凪は急いで少年からスマホを取り上げる。
「使えるモンスターは奪う、それ以外は売却だ!」
朝凪は少年の持つ課金モンスター達をプレゼント機能で自分にプレゼントした。残るモンスターは売却。少年は警察に捕まるだろうが、すぐに出て来る可能性もある。その際、即座に動けないよう戦力を奪うのだ。全てを終えたスマホを落とした朝凪は、それを踏み砕く。
ついでに財布から金を抜き、クレジットカードを全て破壊する。高校生、というか浪人生が一万円札を10枚財布に入れてることやクレジットカードを複数枚所有してる時点で異常だが、これも敵の戦力回復を妨げるためだ。
「任務完了!」
「っ……」
全てを終えて満足する朝凪だが、ずっと雨に当たっていたクロノは肩を抱いて少し震える。彼女の服は若干薄着だ。
「クロノ! 大丈夫か? 今タオル出すからな、なんかあったかいもん飲むか?」
「……いい」
朝凪は過保護にクロノへバスタオルを被せて、屋根のある場所に待避する。クロノ自身は過保護に辟易としていたのだが、少しだけ、彼に気付かれない様に微笑んだ。
ようやく電車は運転を再開。朝凪はそれに乗って帰宅した。電車内は帰宅を諦めた大半の人が近くのホテルや友人の家に泊まったため、ガラガラであった。
「まずはヴェントゥスウイングドラゴン。風属性だな」
最初に確認したのは、ブラックアッシュドラゴンが倒したドラゴン。これは風属性で、景品となったイベントのボスモンスターでもある。景品だけあり、高いポテンシャルがある。使う人間がアホでなければ危険な相手だ。
こんな奴を相手にしようと思ったのも、コンプリートガチャのコンプ景品を複数枚集めて手に入る超絶レアモンスターを使っても、アホが使っては意味ないと初陣の日に学んだからだ。
「次にエクストリームスロウンズは売ったから、ボルケーノサタンドラゴン」
エクストリームスロウンズは売却してゲーム内通貨となった。普通に無課金でプレイしても腐るほど余るものだ。手に入れたのはヴェントゥスウイングドラゴンを倒す為にガチャへ投入されたレアモンスター。それを複数集めて『進化』させて手に入る代物だ。
進化とは、特定のモンスターを組み合わせてモンスターを強化するシステム。ボルケーノサタンドラゴンはボルケーノデビルドラゴンを複数集めて進化させると生まれる。クリエイションに似ているが、システムに定められたモンスターの組み合わせが、システムに定められた結果のモンスターになるのが進化だ。
「風邪引くぞ」
「ん……」
翼をしまい、自分の左に座るクロノがクーラーで冷えぬよう朝凪は毛布をかける。何処からそんなもの取り出したのか。クロノは少し、人目が無いことを確認して毛布の下で朝凪の左手に触れる。顔だけは背けたままだ。
「波乱の幕開けだな……」
朝凪は流れる風景を眺めつつ、大学生活の幕開けを迎えた。
本日のキーモンスター
ナイトメアメイデン
属性:闇
レア度:Sレア
コスト25
スキル:絶閃(全ての相手に闇属性で大ダメージを与える。レベルが上がると発動率と威力上昇)
説明文:悪夢の乙女。高い戦闘力を持ち、無事逃げおおせた者も一生彼女を悪夢に見るというほど。