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カンケイ

 電気の消えた暗い部屋に二人。静けさの中で、パソコンのファンが回る音だけが鳴り続ける


 布団の中で背中合わせに横になる。僕は明日仕事の段取りを考えている。微睡みに負けつつあるときに、彼女は

『子供が欲しい。』

 と、小さくか細い声で呟いた。


 聞こえない振りをしている僕は考る。


 僕が生まれたとき、僕はどんな気持ちだったのだろう。

 彼女が生まれたとき、僕はどんな気持ちだったのだろう。


 …きっと何も無い。何も考えちゃいない。パチンコをしているときの、物理法則に従った玉を、ただ見つめるような感覚。台から吐き出された玉同士がぶつかる音の騒音に身を任せているときのような、考えているようで何も考えていないような感覚。

生きているようで、生きていない。生という状態をただ保っているだけの状態。


 月曜日は仕事に行って、ただ時間を浪費するだけの無駄な会議に出席しながら「あの曲のタイトルは何だっけ?」とぼんやり思い、

 火曜日は帰りに居酒屋に寄って、ビールを一杯だけ頼んで、明日のMTで何を話すかメモをまとめて、


 水曜日はTSUTAYAで気に入ったジャケットのCDを借りて、家でiPhoneに取り込み「どのプレイリストに入れようか」なんて事を考えながら寝つき、

 木曜日は久しぶりに会った高校の同級生と、ニュースで知ったことを劣化した情報で壊れたスピーカーのように話し合い、

 金曜日は珍しく早く家に帰って、気になった単語をインターネットで検索しながら、誰が書いたかも分からない、何を目的としているのかも分からない掲示板のやり取りを見て、

 土曜日は彼女と会い、雑誌に載っていた有名なパフェがあるレストランに行って、隣の子供がおいしそうに食べるアイスを同じように注文して同じように食べて笑って、TSUTAYAで今人気のDVDを借りて部屋を暗くして何も話さず見入り、結末の余韻に浸りながら少しだけセックスをして、今に至る。


 こんなことをしている間にも、世界では戦争だとか、餓死だとか、犯罪だとか、なんだかよく分からない事がたくさん起きている。

 でも、とりあえず僕はここにいる。


 ここに生きている。

 ここに在る。


 でも、ここに在るだけ。


 なんとなく生きているけど、つまらなさだけはとにかく積もり、でも、それを変えようなんて面倒なことはできなくて、不満と不安だけが強くて、幸せだとか、そんなものには無頓着。


 パソコンのファンの音だけがする部屋の沈黙を破り、

「子供なんていらないよ。」

 と僕は小さく答えた。


『なんで?』

「僕みたいなつまらない人間を生み出したくないんだ。」 

 彼女は、もそもそ動きながらこっちを向いて、少し笑ってこう言った。


『あなたみたいな人間が生まれたら、少なくとも私みたいな人間はきっと嬉しいわ。』






 それも悪くないな。と思って、僕たちはまたセックスをした。


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