第3話 性格の悪い天使と、ターゲットの男
セラの視線の先に、女と笑っている男がいた。
「さっきのやつか。」
「そう。赤石紅希よ。」
「でもさ、破滅はやめておこうか。」
「さすがに可哀想じゃない?」
セラは少しだけ目を細める。
「曜日別彼女よ。」
青斗は少し黙った。
「清純派の私から言わせると、無理ね。」
「正直、なんでモテてるのかわからないわ。」
「それに、やっぱりついてる。」
「何が?」
「性格の悪い天使。」
青斗は目を細めた。
「……見えない?」
「あの白い女の子か。」
「そう。」
「あれ、天使よ。」
少しだけ間を置いて、セラは言う。
「ラエルっていうの。」
「私とは犬猿の仲。」
「私の仕事、邪魔してくるのよ。」
「天使だから、いいやつじゃないの?」
「それがそうでもないのよ。」
「見てたらわかるわ。きっと。」
通り過ぎようとした、その時だった。
「あら、こんばんは。」
軽い声がかかる。
「また会ったわね、セラ。」
振り向くと、そこには白い少女が立っていた。
「いつもかわいいわー。セラのこと、私大好きなの。」
「でも、なんで悪魔なのかしら。」
「天使だったら、一緒に遊べるのに。」
「まあ、私は天使でも悪魔でも気にしないけどね。」
セラは少しだけ眉をひそめる。
「あんたとは遊ばないから、大丈夫よ。」
少女はくすっと笑った。
「今度は、この男についてるの?」
「この男についてるわけじゃないわ。」
「ちょっと同居してるだけよ。」
「同居ね。」
「私は紅希と同居してるの。」
「イケメンでしょう。」
「ラエルも好きね。イケメン。」
「私はイケメンが好きよ。」
「格好いいもの。」
……確かに、セラの言うとおりだ。
「私、任務があるから。」
「私も。」
「人間を幸せにしなくちゃいけないの。」
「じゃあね。」
ラエルは軽く手を振る。
「……邪魔すぎるわ。」
セラが小さく吐き捨てた。
ラエルは振り返りもせず、軽く言う。
「紅希。」
「次、褒めたほうがいいと思うわ。」
紅希は少しだけ間を置いて――
「かわいいね。」
女は頬を赤らめた。
「……。」
「あの子、なかなかやるな。」
セラは少しだけ口元を緩める。
「でしょう。」
「しかも、軽い感じでやってるのよ。」
セラは少しだけ眉をひそめる。
「ムカつく。」
青斗は小さく息をついた。
「何か……お前の気持ち、少しだけわかったよ。」
「でも、きっと悪い子じゃないんだよ。」
セラは小さくため息をつく。
「青斗、お人よしすぎるわ。」
「だから、あなた悪魔と同居することになってるのよ。」
青斗は少しだけ言葉に詰まった。
「……それは、否定できないな。」
セラは肩をすくめる。
「私が清純派の悪魔じゃなかったら、どうする気だったの?」
「騙されちゃうわよ。」
「そんなこと言ったってさ……。」
セラは少しだけ肩をすくめる。
「それに私は、天使じゃないから。」
「いいアドバイスなんて、してあげられないわ。」
「使えないのよ。」
少しだけ間を置いて。
「破滅はできるけどね。」
そう言って、セラは紅希に向けて、何かをした。
きっと、破滅の何かだったんだろう。
ほんの少しだけ。
悲しそうな顔をしていた。
「お前さ、本当はこういうの向いてないんじゃないの?」
セラは少しだけ視線を逸らした。
「仕方ないでしょう。」
「悪魔なんだから。」
「任務は任務よ……。」
小さく、言い聞かせるように続ける。
「仕方ないの。」
ほんの一瞬だけ、間があって。
「それに――」
「私は、悪魔になったんだもの。」
「俺は、お前がなんでそれを選んだのかはわからないけど。」
「それなりに、理由があったんだろうとは思うよ。」
少しだけ間を置いて、続ける。
「別に、悪魔は悪魔でもいいんじゃないか?」
「まあ、そうなんだけどね。」
「私は、悪魔を選んでよかったと思ってるわ。」
「そうか。」
ピピピ。
何かが鳴った。
「あ……ちょっと待って。」
セラは、何かよくわからないものを見ている。
「さっきのは、七割成功したみたいね。」
「少し、破滅に近づいた。」
「彼女、ゲットできなかったのかしら。」
「それ、なんだ?」
「さっきの攻撃が、うまくいったかが出るの。」
「色々わかるのよ。」
少しだけ得意げに言う。
「悪魔グッズよ。」
「いや、それやばいでしょう。」
セラはあっさりと言う。
「任務だから、仕方ないでしょう。」
「とりあえず、これ以上関わると面倒そうだから……。」
「今日は、撤退したほうがいいんじゃない?」
セラは軽く頷いた。
「そうしましょう。」
少しだけ考えてから、言う。
「これからどうするかは、後で考えるわ。」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回はついにターゲットの赤石紅希と、性格の悪い天使・ラエルが登場しました。
セラが言っていた通り、ラエルは“ちゃんといいことをするのに性格が悪い”タイプなので、これからかなり厄介な存在になっていきます。
そして、紅希もただの女好きでは終わらない予定です。
青斗は相変わらずマイペースですが、この三人(+一人)に巻き込まれてどうなっていくのか、楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は少しだけ関係が動きます。
引き続き読んでいただけると嬉しいです。




