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第9章 『最大戦力』たちの日常④

ー再認識ー

場所はベランダ。

ふと思いついたように、彼女がこちらを見た。


「あ、ねえねえ。お互いの第一印象、言い合おうよ」


突然の提案に、思わず眉をひそめる。


「ああ? なんだ急に」


「良いじゃーん。はい、そっちから」


逃げ道はなさそうだった。


「……マイペースで飄々としてる、中身が見えねえ喰えねえ女」


一瞬、間。


「そっか♩ ちょっと〈黒雲珠〉」


「お前が言えって言ったんだろうが!」


軽く言い返しつつ、溜息をつく。


「……んで? お前は?」


少し間を置いてから、彼女は口を開いた。


「口悪くて、タバコ臭くて、他人を優先する偽善者」


「マジでただの悪口だった件」


だが、彼女はそこで言葉を切らなかった。


「……でも」


声の調子が、ほんの少しだけ変わる。


「ホントは誰よりも周りを心配してて。そんですごく頼りになる、カッコイイ偽善者で……真っ直ぐで……」


視線が逸れた。


「今まで会った中で、一番優しい人」


沈黙が落ちる。


「あっはは……なんか照れますなぁ!口に出すと! あはは……」


笑って誤魔化しているが、耳が少し赤い。



ー感謝と想いー


しばらくして、低く声を落とした。


「……お前のおかげなんだ」


「……へ?」


「覚えてねえと思うが、言ってくれただろ」


過去の記憶が、ゆっくりと浮かび上がる。


――理不尽な事も汚いとこも、全部ぶっ壊していこうよ。

――更地にしちゃおうぜい!一緒にさ!相性良いよ僕達!


「あれで、色々吹っ切れた」


(覚えてるよ)


心の中で、そう呟く。


(あの日からだよね。こうして友達みたいにからかい合うようになったのは)


「……僕は?」


「は?」


「今の印象」



ーただの本音ー


しばらく考える素振りを見せてから、言葉が落ちた。


「……一人で全部背負い込もうとする、危なっかしくてほっとけねぇ奴」


続ける。


「そんで良い女なのに自信がなくて……でも、そこが可愛いやつ」


「……良い女で、可愛いってホント?」


「ああ」


「誰にでも言う?」


「言わねぇ。お前だけだ」


少し間が空いた。


「……あのさ。ちょっとだけ口説いてる?」


「……まあな。さっき気付いた」


「……バーカ」


小さく笑って、視線を伏せる。


「少しは恥じらいなよ」


「事実だからな」


「……責任……」


「?」


「だから……そんなにほっとけなくて、良い女で、可愛いって思ってるなら……」


一歩、距離を詰める。


「ちゃんと最後まで、責任とってよ……」


「……っ」


一瞬、言葉に詰まる。


「……タバコ、臭せえぞ?」


「もう慣れたって言ったじゃん」


「待て。今日か? 今か?」


「……女に言わせる気?」


沈黙。


「……」


短く息を吐く。


「……こっち来い」



壁の外。


(((((((((((((((((((((((


――完全に張り付いている者がいた。


子どもが母親の袖を引く。


「ママー、こんな夜にマンションの壁に張り付いてる人がいるよー」


「ひっ! 見ちゃいけません!」


その日、

国家戦力の私生活は、

ご近所にちょっとした怪談を提供した。


――日常とは、かくも尊い。

やーっとキマシたー。

さあ明日からは「確実に違う」2人の関係。

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