第4章 『最大戦力』一人の死。「四季彩威」では失くなった瞬間。
『凍傷』の死後、現場
空気が異様なほど冷え切っていた。
夜だというのに、吐く息が白く濃い。
地面一帯は凍りついている。
舗装は霜に覆われ、ひび割れた氷の下に戦闘の痕跡だけが残っていた。
倒れている“それ”を前に、男は歯を食いしばる。
「……バカが……!」
拳が震える。
「俺らの到着を待ってろって……言っただろうが……!!」
返事はない。
冷気だけが、遅れて吹き抜けた。
少し離れた場所でもう一人が口を開く。
「……まさか……」
言葉を探すように視線を伏せる。
「あの状態の凍くんを…」
「……一人でさえなけりゃ……!」
吐き捨てるような声。
その時だった。
「……僕、1抜け〜」
場違いなほど軽い声。
二人が、同時に振り向く。
「……どういうことだ」
「四季彩威の一角が崩されたんだよ」
淡々と、事実だけを並べる声。
「つまり、機関の戦力の限界が――
知られちゃったってこと」
空気がさらに冷えた。
「もう証明されちゃったねー。
機関の限界をさ〜」
「このままだと、ジワジワ戦力を削られて、
皆、死んじゃう」
「……させねぇ」
低い声。
「そうなる前に、俺が」
「相変わらずだねー」
わずかに笑う。
「頭まで季節にやられてる感じ」
「……ああ?」
「向こうから来る前に位置を把握。こちらから“無色”以上を随時投入。数で押し潰す……」
冷静な分析が続く。
「そうそう」
すぐに重ねられる。
「上の人達は、そう考えるよ。
“国家相当戦力が一人殺られた”って聞いたら、
質と物量で潰せばいいってね」
「なーんの為に、日々研究してるんだか……」
少しだけ、声が低くなる。
「そんな使い捨てみたいな戦い方…ただの無駄死にじゃん」
「僕は、死ぬなら……もっと意味のある死に方がいいなー」
「……死なせねぇ」
即座に返る。
「発言権はある。全師団を――」
「わかってないねぇ」
ため息。
「そんなの、上にいる“連中”の一言で終わりだよ」
沈黙。
「ってことで、ここでお別れ」
一歩、距離を取る。
「連れ戻されないから、心配しないでー」
ほんの一瞬、氷の地面を見る。
「……まあまあ、楽しかったよ」
「……じゃ」
空間が歪み、姿が消えた。
「……おい……!」
声は、凍った夜に落ちる。
長い沈黙。
やがて、静かな声が響く。
「……彼女には……彼女の人生があります」
言い聞かせるように。
「…でも……もう少し一緒に……居たかったな〜……」
「……」
「一気に……二人もいなくなっちゃいましたね……」
言葉が途切れる。
氷の割れる音が、どこかで小さく鳴った。
このままで終わるはずがありません。
同じ「仲間」が殺されたのですから。




