終章 『透明』ー帰り道の残影と決意ー
どこかの屋上。
夜景を背に、春塵と透明が向かい合っている。
「まあでも…」
春塵が淡々と切り出す。
『透明』は何も答えない。
「戦果はありましたね。」
沈黙。
「『物理』と『色彩』を混ぜて作った『混合色の拘束具』です。」
反応はない。
「あなた『中途半端』なものが苦手ですよね?」
問いかけは確認に近い。
「あなたは相手が『洗練』されていれば、『完成』されていればいる程に学習ができる。」
透明は視線を動かさない。
「機関はあなたを『排除』か『研究』で揉めるでしょうね。私は『排除』ですが。」
一方的な宣告。
「全て話してもらいます。あなたの『在り方』全てを。」
沈黙。
「思考中ですか?精々頑張ってくださ——」
「 1 人 じ ゃ な い 」
その時、透明が初めて言葉を発した。
春塵がわずかに眉を動かす。
「…………はい?」
「『観測者』のキミには多分『視』えない。」
春塵は口を閉ざす。
「同じだ。」
「キミが私に『外を視過ぎ』と言ったように。」
「私が内側を『視て』いなかったように。」
「キミ達は『日常』を視ていない。」
春塵は理解できず、言葉を失う。
「私も…視ていなかった。」
透明が言う。まるでそれは自身のやり方を『省み』ているように。
春塵の内側で、観測が崩れていく。
(……色が分からない……
観測ができない……
言葉の意味を……
把握できない……)
「 終 わ ら な い 」
その言葉と同時に、異変が起きる。
春塵の視界に、炎が立ち上る。
(炎を……自分自身に!?)
透明の身体が燃え上がる。
「……!」
春塵が反射的に制御を試みる。
「『青』及び『藍いろ—!」
癒し、清流の『画彩能力』を使用する。
しかしーー
「無駄」
遮るように、透明が告げる。
「………あなた…!!」
「……あなた…一体…!一体何がしたかったんですか!?」
問いは、悲鳴に近い。
透明は燃えながら、静かに返す。
「……先程の言葉を返す。」
炎の中で、微笑む。
『 精 々 頑 張 れ 』
春塵が息を呑む。
次の瞬間、透明の身体が崩れ落ちる。
春塵は一歩近づき、確認する。
「……死亡……確認…」
(これは今は……私の中に……)
春塵は通信を開く。
『報告。クリアカラー《透明》の討伐に成功。時間は同刻より。死亡要因は——』
一拍。
『死亡要因は「四季彩威」秋夜との戦闘での肉体的・精神的による消耗。駆けつけた同じく『四季彩威』の春塵による「蒼炎」が対象に直撃。先の戦闘による治癒力の著しい低下により、「蒼炎」の炎焼度が治癒力を大幅に上回る。結果徐々に自壊。のちに『行動不能及び生命機能の完全停止』を確認』
『なおこの報告は国家及び国民・機関内での一般職員、「虹色」、「無色」への開示を『四季彩威の権限』持って禁ず。上層部のみ開示できるーーー
《最重要機密:カテゴリー原色》とする。』
『……………………………………承認シマシタ。』
通信が切れる。
春塵は、その場に立ち尽くす。
⸻
『終わり』
現場に到着した無色部隊の前で、炎夏が腕を組んでいる。
「お出ましか、遅えな。」
黒の無色が一歩前に出る。
『……申し訳ない…『透明』は?』
炎夏は肩をすくめる。
「今頃、『春塵』と仲良く夜景眺めてるだろ。」
赤紫の無色が息を呑む。
「凄い…あの『透明』を…」
炎夏は背後を親指で示す。
「おいおい、1番の功労者はコイツだ」
黙ったままの秋夜。
「…顔出せよ…」
「無理、目がウサギ」
黒の無色が状況確認に入る。
「衝突ポイントは2ヶ所だな?」
「……ああ…渋谷とココだ。」
赤紫が問う。
「渋谷では死傷者が多数出ています。抗戦者は?」
「…俺だ」
「え?」
一瞬、秋夜が炎夏を見る。
「……秋夜、俺は今日…人を——」
そこに春塵が割って入る。
「『透明』の五感錯覚能力によって市民が『消された』と誤認された事による2次的被害です。」
『私がいても解像するのが困難だったでしょう』
赤紫が驚く。
「…..そういう事ならば仕方ない『被害』ですね。」
「それで『透明』は?」
春塵が足元の袋を落とす。
「コレです。」
「……殺ったのか春。」
炎夏が確認に入る。春塵にしては段階が感情寄りだ、と。
「はい。虫酸が走ったもので。」
ーそれが嘘だと知る者はいないー
「僕もめっちゃ走ったー」
秋夜が軽い口調で同意する。
「…これは審問会で一波ありそうですね」
「あんた達、大丈夫か?」
春塵は一切迷わず言い切る。
「なぜです?元々クリアカラー『透明』の討伐は常時任務に入ってます。それにーーー」
「もし私達に『不利』な状況を作った時は色彩機関ごと潰します。」
無色たちが息を呑む。
「…了解した。現場の回収・情報操作は無色が総動員で対処する。」
「御三方は速やかに——」
「私の家が良いですね。」
「賛成ー」
「右に同じ」
赤紫が肩を落とす。
「…はぁ…どうぞお好きに…」
春塵は何も言わず、歩き出す。
⸻
「帰り道」―残影と決意ー
「らしくない春を見れて新鮮だな」
「ねー」
「私あんなゴリ押しキャラじゃないですもん…」
「………永い夜だったな。」
「……うん」
秋夜が炎夏に抱きつく。
「あら秋ちゃん、大胆。いつもの恥ずかしがりは?」
「炎夏が死んだって思った時よりマシだもん」
「…お、おい秋夜」
「あらあら、お熱い」
「炎夏、ダメ、死んじゃ、ずっと、一緒」
「なんで区切ってんだ」
「いかんいかん、鼻血が」
「なんで出血してんだ。」
⸻
ーそして
「なあ、春」
「はい?」
「アイツは結局何だったんだ?」
「………」
「今は…解りません」
「……」
「ですが、死んだのは事実です。」
「…春…お前は…」
「すみません。『決めた』んです。」
「…そうか、なら良い」
「ハルが決めた事なら多分間違いないしね」
「2人とも…」
「…………腹減ったな。」
「僕もー」
「…私が腕によりをかけましょう。」
「肉くれ肉」
「デザート付けておくれーい」
「ふふ、了解です」
(今は……これで良い……)
春塵の責任
(……何を見たかは聞かねえ……)
炎夏の『沈黙への肯定』
(でも……もしもまた……何かあれば)
秋夜の本気と覚悟
【 俺(私)が2人を護る 】
第一部 完
これにて第一部終了です。
最後までありがとうございます。
第二部はちょっと換気したいのでしばしお待ちいただければ。
ちなみに『色が力になる世界で 「最大戦力」と呼ばれた者達が最も怖いのは 何者にも染まらない色だった』の
公式設定はこちらhttps://note.com/yoro4649
本番より3人のプロフィールが詳細に記載されているので良ければどうぞ。




