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第2章 幕間:クリアカラー事件

この物語が始まる前、四季彩威はまだ四人だった。

それは後から「事件」と呼ばれることになる出来事。


2012年。

東京・渋谷。スクランブル交差点。


世界で最も人が行き交う場所のひとつで、“それ”は唐突に現れた。


最初は、誰も異常だと気づかなかった。

空気が歪んだように見えた気がした者もいたが、雑踏に紛れて錯覚として処理された。

次の瞬間、市民の数人が、理由もなく倒れた。


出血はない。

爆発もない。

ただ、命だけが消えていた。


現場に急行したのは、色彩機関所属の隊員。

青色以上の『画彩能力』保持者が二名。

彼らは即座に事態を異常と判断し、“ナニカ”へと接触を試みる。


結果は秒殺。


画彩能力による迎撃は通じず、物理的距離も意味をなさない。

二名は、まるで存在を否定されるように消えた。


被害拡大を防ぐため、機関は即座に判断を下す。

無色に属する者―生まれながらの異端―黒色《閃黒》部隊二名を投入。


だが、状況はさらに悪化した。


“ナニカ”は、学習していた。

攻撃手段、速度、距離、反応――

すべてに対して、次の瞬間には最適解を返してくる。


閃黒二名もまた、抵抗らしい抵抗を見せることなく排除された。


ここでようやく、機関は理解する。

これは局地対応ではない。


規格外だ、と。


機関は総力戦を辞さないとして更に無色の

『黒・白・赤紫』の混成戦力が投入されたが


それでも――足りなかった。


最終的な被害は、

市民10名。

警官4名。

黒色15名。

白色13名。

赤紫12名。

青色以上53名。


計107名。


生存者0名


“ナニカ”は、すべてを置き去りにするように、その場から姿を消した。


色彩機関は、この「ナニカ」対しすべてにおいて規格外であるという意味でクリアカラー『透明』というコードネームを付けた。


――クリアカラー《透明》。

目的、思想、行動原理。

そのすべてが不明。


判明している事実は、ただひとつ。


単独での討伐は、

無色でさえ不可能。


それから、時が流れた。


事件は未解決のまま封印され、

《透明》は捜索対象として、機関の最上位リストに名を連ね続けた。


そして――

一週間前。


郊外で、ひとりの無色の死体が見つかった。


単独行動中。

“誘導”された末の戦闘。

『国家最大戦力』の一人。


その名はまだ公表されていない。

だが後に人々は知ることになる。


その死が

色とりどりの世界を、静かに――確実に、狂わせ始めたのだと。

次回はこの『透明』との戦闘中の『黒』『白』『赤紫』の会話と『覚悟』を描きます。

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