第15章 『 一 年 越 し の 絶 望 』
⬛︎ニュース⬛︎
二週間ほど前から、国家公式機関「色彩機関」に所属する職員が、相次いで変死体として発見されています。
昨夜二十三時四十分頃にも、街近郊の林で変死体が見つかり、これで9人目の被害者となりました。
警察と「色彩機関」は同一犯による連続事件の可能性が高いとして――。
……。
テレビのニュースを前に、炎夏は腕を組んだまま沈黙していた。
「……来たねー」
秋夜が、どこか軽い声で言う。
「しかし以前と様子が違います」
春塵は画面から視線を外さず続けた。
「こんなやり方は、今までの『透明』だとしたら効率が悪すぎます」
「しかも今回は『無色』や『色持ち』だけじゃない」
今度は秋夜が指摘する。
「研究者やオペレーターも被害に入ってるよ」
「……学習してんな」
炎夏が低く呟く。
「だね」
秋夜は短く同意した。
「一度目は渋谷のスクランブルで無差別」
炎夏が状況を整理する。
「二度目は街中で『凍傷』と戦い、場所を郊外に移した。そして今回は……」
「人目につかない場所……」
春塵が続きを受ける。
「しかも、わざわざ死体を『残してる』」
声が険しくなる。
「誘ってるな」
「……僕達だねー」
秋夜は冗談めかした口調で言ったが、その目は笑っていなかった。
「奴は気付いてる」
炎夏は断言する。
「『自分』に匹敵する者が複数いること。そして、そいつが死ねば機関を潰せるってな」
「……上等じゃん?」
秋夜の口元が僅かに吊り上がる。
「ええ。『地獄』を見せてやります」
春塵の声には、一切の迷いがなかった。
そのやり取りの中で、炎夏だけが言葉を止めていた。
(……凍傷……)
胸の奥に、同僚であり戦友の名前が沈んでいく。
⸻
「良いやつ」
〜夕方〜
「僕は帰るねー」
秋夜が軽く手を振り、身を翻す。
「? おう。お疲れ」
炎夏は少し間の抜けた返事を返した。
「はい。気を付けてくださいね」
春塵が穏やかに声をかける。
次の瞬間、秋夜が瞬速で炎夏に近づく。
(……ちょっと、もう合図忘れたの!?)
秋夜は小声で毒づき、炎夏に顔を寄せる。
(僕、バカみたいじゃん!)
(あ、あ〜……そうだな)
炎夏は小声で考え込む。
(確か、あれは……)
「……喉乾いた?」
炎夏が、思い出したように言う。
「今夜ウチに来てねだ! バカ野郎ォォ!!」
秋夜が勢いで叫んだ瞬間、我に返る。
「……っ!」
その様子を、春塵が楽しそうに見ていた。
「仲良しですね。宅飲みですか?」
「そ、そう! それ!」
秋夜は慌てて取り繕う。
「ハルも来る!?」
「あー、私今日は用事がありまして」
春塵はあっさりと首を振った。
「また誘ってください」
「そ、そうなんだ! 残念だなぁ〜」
春塵はにやにやと笑う。
「いや、これ無理あんじゃね」
炎夏が正直に漏らす。
「とりあえず! 今日はお先〜! おつー!」
秋夜は逃げるように去っていった。
「とりあえず了解だ。お疲れ」
「お疲れ様です」
秋夜の背中が見えなくなってから、炎夏はぽつりと聞いた。
「……どこまで知ってる?」
「なんのことですか?」
春塵はとぼけたように答える。
「相変わらず、良い奴だな」
炎夏は小さく息を吐いた。
「ふふ。秋ちゃんは恥ずかしがり屋ですから♩」
「違いねぇ。悪いな」
「秋ちゃんが幸せなら、それで何でも良いですよ」
「……そっか」
炎夏は、少しだけ肩の力を抜いた。
次章『 開 戦 』




