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陽暦1488年4月〜王都への旅④

王都に到着です。

 翌日、サンマイ県の「金獅子亭」をチェックアウトした一行は、そのまま街道を南下し、現在のヤーマス王であるヴィクトル・ヤーマスとその長子ジェイナス・ヤーマス王子が直轄しているテリスウエスト州に入った。


 県境の関所では衛兵による厳しいチェックが行われているが、サイ先生がハクヤ込みの出張命令書をドルス市で作っていたので、多少ギョッとされつつも公務として問題なく通過できた。


 テリスウエスト州はヤーマス王国最大の州で、全人口は約300万人だ。

 文字通りテリス海という巨大な湖の西側に位置している。

 王都ヤーマスに至るまで、街道沿いにはジョージ市、アルフレッド市と大きめの都市が続く。


 街道沿いは広大な小麦などの穀倉地帯が続いており、ヤーマス王国の豊かさを象徴する光景となっている。



 一行は丸一日かけて街道を南下しジョージ市に入り、そこで再び宿に泊まった。

 子供達はずっと走り詰めだが、慣れたもので特別に疲れたりはしない。



 その翌日も南下し、1日かけてアルフレッド市に入る。

 アルフレッド市は、ヤーマス王国を南北に走る街道と、大陸を東西に走る「文化の道」が交差する交通の要所であり、各国の隊商がひっきりなしに往来する異国情緒溢れた場所だ。

 黒や褐色の肌の者、白人や黄色の肌、世界各地の人々が行き来しており、リョウたちからすると珍しい光景だ。

 

 ここは交易が盛んで、至る所に市場があり、そこでは食料や日用品などはもちろん、その他の見慣れない商品や、驚くほど高価な珍しい魔法の道具なども売られている。

 

 この街でも宿泊することになったが、自由時間が割と長くあったので、ジンはずっと市場を見て回っていた。

 いつもすました表情のジンだが、珍しくホクホク顔で宿に戻ってきたので、ヤナが聞いてみるとジンは「麻痺毒のいいやつが買えた」と言ってニヤッとしていた。


 リョウは自由時間に街をぶらついていたが、隊商の護衛の中に手練がいることに気付き、そのあとはずっと道端で人間観察をして過ごしていた。

 中には達人級の者もおり、だいたいリョウと目が合ってお互いにニコッとすることになる。


 ヤナは焼いた羊肉の串などを露店で買い食いしながらリョウに合流した。

 ヤナが買いに行くとおじさんたちが結構おまけをくれるので、リョウにお裾分けをする。


「あんたも物好きね」

 ヤナがリョウの横に腰掛ける。


「強ぇヤツ結構いるなあ。頭の中で戦ってみてるけどたまに負けそう」


「魔力持ちも何人か見かけるわね」


「世間って広かったんだな」

 リョウはそう言いながらも、セキサイ程の迫力がある者は全く見かけないので、セキサイが如何に強いのか少しずつ実感し始めた。



 一行らはアルフレッド市でも宿に泊まり、翌朝すぐに王都ヤーマスを目指して出発した。 


 

 アルフレッド市から王都ヤーマスまでは約70キロの道のりで、途中から街道も石畳となり、穀倉地帯を抜けるとだんだんと住宅が増えてくる。

 石畳は膝に負担がかかりそうなので、皆、馬車に揺られている。


 昼過ぎ、遠方に王都ヤーマスの王城の尖塔や高い城壁が見えて来ると、子供たちはテンションが上がってくる。


「街でっっっか!」


「お城すごいわね!」


「やっと着いたね」

 サイ先生もお疲れのご様子だ。


「今日からセオドール県の出張所に宿泊するからね。こじんまりしてるけど最低限の設備はあるから」


 王都には中心街に各県の出先機関が集まっている区画があり、セオドール県出張所はその中で一番小さな建物だ。


「よく来られましたね。遠かったでしょう。私は審議員のハリスです。滞在は2週間ほどですね。よろしく」

 出張所では県都ドルスから来ている役人のハリスが出迎えてくれた。

 40代後半の中肉中背の男性だ。



「一人一部屋ずつあるから、ゆっくりできるよ。荷物を整理したら王都騎士団に顔を出そうか。ボクの武術研修名目で来てるんでボクはそっちに宿泊となります」


 サイ先生が下で待っていると、子供達が動きやすい格好で現れる。

 ハクヤはとりあえず留守番だ。


 

 王都騎士団は各県の出先機関からほど近い場所にあった。


 貴族区の手前に壁で囲われた広大な敷地が広がっている。

 外から見ていると、常に軽武装した騎士たちが騎馬や徒歩で行き来している様子だ。


 

「お疲れ様です。セオドール騎士団副長、サイ・ハグーダです。武術指導者研修のため参りました。こちらの3人は、再来年の受験生候補で、見学者です」

 サイ先生が書類を門衛の騎士に見せると、その騎士は手元の名簿と見比べてすぐに通してくれた。

 とりあえず騎士団長に到着報告に向かう。


「さて、今回研修に参加する武術指導者はボクを含めて7人。何をするかっていうと、各国の情勢や最新の戦闘方法の研究、それに模擬戦だね。各派閥から来てるけど、昔から顔を見知っている連中ばかりだ。……着いた。失礼します!」



 男性の低い「どうぞ」の声で一行は騎士団長室に入る。

 中には眼光の鋭い巨漢が豪華な椅子に座っており、こちらを見ている。

 一見して結構な年齢だが、服の上からでも筋肉が詰まっているのがわかる。


「サイ・ハグーダ、武術指導者研修に参りました」


「おお、遠かったろう。久しぶりだなサイ君。して、そちらの子供達は?」


「再来年の受験生です。田舎から出てくる前に王都と騎士団見学をと思い連れ回しています」


 それを聞いて、団長はじっくりと、より一層鋭い眼光で子供達を見つめる。

「分かった。……ふむふむ、3人とも見どころがありそうだな。では、誰かつけてやろう。隊舎内は自由に見学していいぞ。なんなら過去の受験問題など公開されている資料も自由に見ていってくれ。資料室にある」


「本当にありがとうございます!」


「なに、優秀な受験生は多いほどいいからな。サイ君が信頼するような後輩達なら大歓迎だ。文武両道で頑張れよ子供達!」


「はい!」

 ヤナとジンは半ば気圧されながら、反射的に返事をしてしまっていた。

 リョウは「このオッサンどのくらい強いかな」などと考えながら見ていた。


 団長室を出ると、サイ先生は一行から離れた。


 代わりに騎士団のスカウト部隊から伝令員を務めているまだ20歳前の若い騎士が、子供達の案内役になってくれた。

「俺はビスタ。騎士2年目だ。よろしくな。じゃあまず資料室に行こう」


「よろしくお願いします」



 リョウたちがビスタに案内されて資料室に入ると、そこの椅子にリョウたちと同じ年齢くらいの若者が3人、過去の出題資料を勉強しているところだった。

 一斉にジロッと見てくる。



 




 


 






 




 

 


 

 

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