陽暦1481年4月〜毎日全力バタンキュー
今日から学校に行くことになり、今朝は朝6時に家を出た。
道を歩きながら持参してきた朝食をとる。
学校に着いたが、今日は挨拶だけで授業がなかったので、帰り着いたのは、午後1時頃である。
帰り着いたら昼飯を食べた。
その後はヤギ、羊たちを牧草地まで案内し、そこで、セキサイと一緒に、弓の練習をした。
その間重い鎧はずっと着たままだし、ハクヤはずっとついてきている。
セキサイは、ハクヤの親を倒した謎のモンスターが飛べるヤツだったので、それに備えるため、最近では重点的に弓の修練を行っている。
セキサイは、基本的に武器は何でも使いこなせるのだが、弓はアルなどの本職には遠く及ばない。
以前、アルが、動いているウォーベアの目を遠方から射抜いたのを見て、驚嘆したものだ。
リョウは、まだ体が小さいので、大人用の弓は引けないが、セキサイが鍛錬用に子供用の弓を作ってやっており、それを引く練習している。
姿勢と力の使い方を学ぶことが主な目的だ。
リョウは、それでもひたすらに重い弓の弦と格闘している。
セキサイは、大人が3人がかりでも引けない弓を軽々と引いて、200メートルほどの距離では、止まっている的ならまず外さない程の腕前にまでなっている。
しかし、走りながらだと30メートルほどの距離でもよく外れてしまうので、今は走りながら弓を射る稽古に執心している。
ひとしきり弓の稽古を終えると、次は足捌きの稽古だ。
ある程度の丈がある牧草地で、セキサイが棒で突いてくるのを、リョウが避ける練習だ。
草が足元にまとわりつくので動きづらい中、ほどよく難しい速度でセキサイが突いてくるのを、半身の状態から避ける。
リョウは、前に出している足の反対側の足を横方向にスライドさせ、くるりと90度身を躱す。
その最小限の体捌きで、セキサイの突いてくる棒を次々に避ける。
手も使って棒を捌く。
セキサイは時々フェイントを混ぜたり、緩急をつけたり、大人の兵士以上の速度で突いてきたりするので、リョウは常に集中していなければならない。
セキサイは、毎日攻撃のパターンを変えてきて、その日の体調や集中力に応じて、絶妙に難しくしてくるし、しかも必ず前日より難易度を上げてくるので、毎回痛い目に遭わされる。
怪我をしない程度の絶妙のバランス感がいやらしい。
次は、リョウが素手で攻撃するのを、セキサイが避ける稽古だ。
リョウは、何をやっても良いことになっているので、土を握ってセキサイの目に向かって投げたり、蹴りながら靴を飛ばしたりと、あの手この手を考えるが、セキサイには一切当たらない。
セキサイは、攻撃が届くか届かないかを見切っており、いつも惜しいところで外されてしまう。
そこでリョウはムキになってセキサイを攻め続けるのだが、最後の方はいつもヘロヘロになって、ギリギリの体力を絞り出した……先まで追い込まれ、怒りの精神力の限界で捻り出した力……の先にある生存本能による火事場のくそ力……まで出させられてその稽古は終わる。
そこでリョウは気を失うほど疲れつつ倒れ、しばらく休憩となる。
寝転がっていると、風に吹かれて揺れた草が鼻先をくすぐって、こそばゆい。
緑の匂いと共にあるこの時間は、リョウは好きだ。
ハクヤがリョウの汗混じりの顔をザラザラした舌で舐めてくる。
しばらくして回復すると次は、2人は、鎌で牧草を刈り始める。
干し草を作るためではあるが、セキサイは、リョウに、「草であっても、一本一本、丁寧に、生きている命を、その手で自ら殺すつもりで切れ」と教えている。
それは、いざと言うときに、躊躇なく相手を傷つけることができるようになる為の、精神的な鍛錬だ。
戦いの中で躊躇すると、隙を生んでしまう。
常に冷静でいられるように、心の持ちようから鍛えておく必要があるのをセキサイは知っている。
夕方になると、セキサイは、その日のリョウの動きの中から課題を見つけ、家に着くまで歩きながら身体操作の復習をさせたり、補強運動をさせたりする。
1日に何回も体力の限界まで追い込まれるが、リョウは心が折れず、余力が出たら自ら突き、蹴りなどの練習をしてしまうので、セキサイはいつもリョウの稽古の効率と怪我の心配を常に考えながら、ケアしている。
休ませる時は、何もさせない。
夜は、肉メインの食事を終え、風呂に一緒に入って、人体の急所を教えたり、リョウをマッサージしながら、筋肉のつき方を確認したりしている。
寝る前、リョウは自重を利用した補強運動を行って、疲れてから寝る。
セキサイはリョウが寝てから、さらに家を出る。
リョウの鍛錬に付き合っているくらいの運動強度では、自身の鍛錬には足らないから、ここから本気の全力で体を動かす。
さらに重くした土袋を背負って、夜回りがてら山をひとしきり走り回って、その後、槍をひとしきりしごいて、再度風呂で汗を流してから寝る。
明日も学校がある。
リョウがある程度育つまでは登校に付き添ってやろう。
布団の中で、セキサイはそう思いつつ、眠りについた。
一日一日、世界の片隅で、2人は悔いなく全力で過ごしていっています。




