俺の幼馴染は暗い。
道徳の授業で思いついたら思ったよりも構想が出来上がったので連載します…!
朝、カーテンを開けてテレビをつける。そして歯ブラシを咥え、ソファに座って歯を磨く。
『今日の特集はあの!天才発明m―』
耳に入った瞬間、歯ブラシを噛み砕いてしまいながらブチっとテレビの電源を切る。
「何が天才だ…。」
何を隠そう、その天才発明家が今歯ブラシを噛み砕いた主人公である、神楽坂 太救だ。元ヤンながら、幼馴染で同い年の少女の為に発明をしている。
「あいつの役に立たねぇ発明なんか、ただの失敗作だってのに。」
事実、太救が作った発明でその少女が使用しているのは現在まで含めて二つだけだ。
「…そろそろか。」
時計をチラリと見て手元にあったエネルギーゼリーを持って玄関へ行き、カバンを背負ってドアを開ける。
「あ、太救くん…。」
ドアを開けると、そこには鉄の浮遊するカメに乗った浦内 夜空が待っていた。綺麗な顔立ちとカメに乗っている様子から、乙姫。そう呼ばれている。
「おはよ、夜空。」
「おはよう。」
少し嬉しくなりながら次の会話を始めようと―
「ごめんね自分の足で歩けなくて太救くんの発明に頼りきりで地味な私なんかが有名人でカッコいい太救くんを家の前で待ったりして、こんなのストーカーだよねごめんもうしないからねじゃあまた学校で。」
「流れる様な罵倒だ。…俺は嬉しいから大丈夫だ。行くぞ。」
「!…う、うん。」
ちょこん、と手が触れる。
「ごめんね私なんかが」
「待て待て待て。」
夜空は小学5年生の時、事故に遭った。そのせいで右足は思う様に動かせず、左足に関しては完全に動かなくなった。その時に太救は思った。彼女を助けたいと。その日から機械技術を勉強し始め、今では天才と持て囃される様にまで成長した。しかし、彼女の自己肯定感はどん底にある。事故のせいで車椅子生活をしていた時、クラスの男子からいじめを受けたからだ。その男子を脅…問い詰めた時、こう言った。「自分を意識して欲しくて。」…は?知るかよゴミが。と思った。そしてなんと、担任の体育教師までいじめに加担していた。そして太救はブチギレた。まさかロリコンが教師に居るとは。二次元だけかと思って生きていたからだ。それでなんやかんやあって体育教師は遠ーい、遠ーーい場所(意味深)に左遷させた。過去は片付けた。だから、今はアフターフォローという期間なのである。
(いつか絶対に告白する…!)
正直に言えば、太救は告白を何度もしようとしている。だが、告白できていない。夜空が自己嫌悪して逃げ出してしまうからだ。ムードができても自己嫌悪でぶち壊される。何度も続いたのでいじめをしていた男子生徒を鰯のエサに使用した。(特に使う機会が無かったので自宅防犯用に稼働させている。)
「最近調子はどうだ?」
「あっ、えっ…と、私は、元気…だよ?もしかしてたー太の方だった?ごめん私の事なんて興味ないよね太救くんならもっとボンキュッ」
「マジでやめろ。俺は別に胸にも尻にも拘りはない。」
「そう…なの?」
「俺が聞いたのはお前の調子とお前がたー太って呼んでるカメだ。」
たー太…夜空が今乗っているこのカメは太救の発明品
going ride タートル。使用者と共に過ごすことにより成長していく介護用ロボットであり、太救の最高傑作だ。
「たー太は最近、言葉を使える様になったの。」
「どんな?」
ぽちっ、とたー太の後頭部についている操作パネルを押す。すると
[んあっ❤︎あっ❤︎あっ❤︎]
「…一回、端末の情報消すか?」
「大丈夫…です。ごめんなさい…。」
さっきまで生き生きとしていた夜空の目が死んでゆく…。
「ま、まぁ…人の趣味はそれぞれだからな。悪い事はない…と思う、ぞ?」
[大丈夫かい?あんちゃん。]
…普段、どういう感じなのかが少し分かった一幕だった。
(…見てるんだな、エロサイト。)
(あ、ああああんなのっ、太救くんに見られたら引かれちゃうっ…!少し、少しだけ気になってえっ…ちなサイトを見てたら出てきたんだもん!私は悪くな…でも私がクリックしたから出てきちゃったんだしやっぱり私が(以下略))
「学校着いたぞ。おい。大丈夫か?」
「あっ、うん。ごめんねこんな私で。」
「はいはい早く教室行くぞ。」
そうして校門をくぐった。刹那
「「「好きです!付き合ってください!」」」
「俺が見えねぇのか?」
数名の男子が夜空に告白をした。太救は心底うんざりしながらもツッコミを入れる。結果は分かっているだろう。
「こんな私と付き合ったところで(以下略)ごめんなさい。あなた達とは付き合えません。」
「「「は、はい…。」」」
(やっぱりそうなるよな。)
男子達は頬をヒクヒクさせながら何処かへ去って行った。ザマァ見ろとは思はない。むしろ、同情してしまった。夜空の自己嫌悪は「そんなことないよ。」で解決できるほど浅く無いのだ。それを察してか、夜空に「そんなことないよ。」と言う人はあまり居ない。もし言っても「私なんかが…」の繰り返し。太救の場合はそもそも告白すらさせてくれない。
「っし。さっさと授業終わらせるぞ。」
「授業時間は努力で短くなるの…?」
確かにな、と思った。
「よぉーっっす!」
「い゛っ?!」
「あ、若狭ちゃん。」
今、太救に突っ込んできた彼女は東 若狭。夜空の友達であり…
「若狭。なにやってるんですか。」
「めぐちゃん!おはよー!」
「うちの若狭がすみません…。」
「大丈夫だ。慣れた。」
太救の親友、槙島 廻の彼女だ。
「おい東。突っ込む癖は直せと言ったろ?」
「世界は私を止められないのだよ…。そんなに止めたいなら機械作ってよー。」
「んなもんねぇよ。原因がお前全体なら俺には人格否定以外の治療ができない。」
「うわーん!乙姫様ー!太救がいじめるよぉ…。」
「あ、え、あ」
おどおどしていて可愛いな、と思った。
「今のは絶対に若狭が悪いですよ。」
「ここは彼女の肩を持つところだよ?」
「…今日はどんな説教をしたいですか?」
あーれーと言いながら引きずられて行った若狭に心からの言葉を贈った。
「ザマァ。」
「太救くんって、たまにいじわるだよね…。じゃあまたお昼休み…いややっぱり烏滸がましすぎたよ」
「いつも昼飯は4人で食ってるだろ。」
最近、やっと昼食を一緒に取ることができる様になった矢先、これだ。
「あ、の…ね?今日は、私がお弁当、作ったん…だ。」
「…えっ。」
「食べてくれ…る?あ、嫌とかなら全然」
「食う。昔食ったの美味しかったからな。」
ホッとした表情をして夜空は続ける。
「…そう言うと思って、ハンバーグ入れておいた、よ。」
「マジであ」
いしてる。と言いかけて止める。なんか、ムードが違うからだ。
「…りがとう。」
ぴよぴよとしている。浮遊する亀の上で座ってぴよぴよしている様子はとても庇護欲をそそられた。
「そういえば、この前渡した試作品、まだ使ってくれてるんだな。」
「…あ、この制服?」
「そうだ。」
「うん。お父さんとお母さんが居ない時、いつも寝心地が悪くて大変だったけど、この制服のおかげでとてもぐっすりだよ。」
「そうか。因みに、100点中何点?」
これは恒例行事の様なものだ。彼女の数少ないプラスな意見が聞ける、採点。
「大体…65点くらいかな。」
「高いな。たー太以来の高得点じゃねぇか。」
今までの平均は40点位だったので驚いた。因みにたー太は95点だった。
「私みたいな身体障害者以外も疲れて帰ってそのまま気持ちよく寝られるって言うところが良いと思う。でも、外の服のまま寝たくないって人も多いだろうなぁ…と思って。」
「だよなぁ…ま、そこはどうしようも出来ねぇな。取り敢えず、販売にするか。」
「私以外にもテスターを作った方が…」
「たー太の時と同じで、あのバカップルと実家のメイド達に頼んでる。」
「そうなんだ…太救くんのご両親は元気?」
「毎晩電話かかってくる位にはな。」
久しぶりに、何気ない会話をしながら控えめに笑う夜空を見て教室へと向かうのだった。
ロボット説明
going ride タートル
夜空がたー太と呼んでいるのはたー(タートル)太(太救)だから。
性能
浮遊できる高さは地面から最大50cm。甲羅が3段構造になっていて、縁の部分に足を乗せられる。真ん中の六角形が繋がった部分はバッテリーが入っている。(1たー太につき六角形10個でバッテリー1つにつき12時間使用可能。そこまで大きくはない。)1番上には座ることができて遭難などの緊急時対策に1番上が開けられて中に食料や水などが入れれる。 体積は大体キャリーケース程度。海に浸かっても大丈夫。身体障害者の他にも最大2人まで乗れるので旅行用や会話相手などにもできる。
…思ったより実現できそうじゃね?って思いました。