コンビニ外周クルーズ
「じゃ、精進しろよ」
俺は、コンビニには向かわず、来た道に踵を返した。
「まって下さい!!」
「なんじゃ?」
うん、もう老獪な感じ限界なんだけど。
「少し練習に付き合って下さい!」
なんの?練習とかあんのそれ?
「まぁ、いいけど」
「ありがとうございます!では私が『私、綺麗?』と聞きますのでそれに対して上手いこと切り返して下さい」
笑点フリみたい。さっき素でやったんだけど。
「私、綺麗?」
「いいねー、パシャ!パシャ!凄いいいよー」
とカメラマンのジェスチャーをする。
「これでも」とどこから出したかおもしろメガネをかけている。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。額に汗が伝う。
俺が拾わなきゃスベる。いや、誰も聞いてないからスベるとかないんだけど。この面白くなさはほっとけない。なぜか懐かしい気持ちを抱きながら、脳がフル回転する。
「い、いや!!マスク!!外さんかーい!!」
…どうだ?
ポタッ、ポタッと彼女の目から涙が溢れる。
「変わらないんだから…」
徐々に、彼女が薄くなっていく。
え?え?急展開過ぎて首とれるんだけど。
「じゃあね」
完全に彼女の姿が消えて。俺はそこに呆然と立ち尽くした。
もしかしたら、あの時こうしていれば、とこの先何十年もこの時のことを思い出しては、彼を苦しめるのであった。
ーーースーパーバットエンドーーー