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第2話:アンティークの店

 兄のアレクサンドルの頼みでお店を始めることになったワタクシは、彼と一緒に開店準備をしていました。


 家の一角を改築して装飾の施されたアンティークの家具を並べてみるとそれだけで店らしく見えます。

 壁側には動物の剥製と植物の標本を展示して、棚には珍しい魔術書や錬金術で使う薬品の瓶を置いて……好きな物を並べるのは楽しいものですね。


「ジェル。このドラゴンの牙、なんか虫歯があるんだけど売り物にしちゃって大丈夫か?」


「ドラゴンも虫歯になるんですねぇ。まぁドラゴンスレイヤーの隣に並べておけばそれらしく見えるでしょう」


「そういうもんか。よいしょっと……」


 アレクは大きな牙に開いた黒い穴を、微妙に見えない角度にして竜殺しの剣の隣に並べました。

 ワタクシ達は、神話に登場するような珍しいアイテムもたくさん持っているのです。


「……さて、お店もワタクシも準備ができました。これでいつでも開店できますよ」


「そういや、どうやってお客さんが来るんだ? この店は結界を張って外から見えないようにしてるんだろ?」


 そう、この店はワタクシの魔術で空間を捻じ曲げて特殊な結界を張っているのです。

 そのおかげで、店やそこに繋がっている家も外からは見えないし存在しません。


 そんな状況でも特定のお客さんだけが来られるように、ワタクシはある特別な仕掛けをしていました。


「うちにある商品たちに、お客さんを選んで呼んでもらうことにしました」


「どういうこった?」


「魔術を使って『店の商品と縁が深い人』が招かれるように条件付けしてみたのです」


「じゃあ、たとえばだけど、この古い本が商品だとどうなるんだ?」


 アレクは手元にあった一冊の本を手に取ってたずねます。


「そうですねぇ。前の持ち主が来店するかもしれませんし、もしかしたらその本の著者がやってくるかもしれません」


「変な仕組みにしたもんだな」


「だってこの店の商品は全部ワタクシ達の大切なコレクションですから、大切にしてくれそうな人にしか譲りたくないじゃないですか。ワタクシ達よりも相応しい持ち主が現れた場合は素直にお譲りしようと思うのですよ」


 この仕組みはきっとワタクシ達に面白い出会いを呼んでくれる、そんな気がしていました。

 兄のアレクと二人で暮らしているので孤独に思うことはありませんが、それでも長い間生きていると、新しい出会いや驚きに飢えていくものなのです。

 だから最初は、スローライフな日常にちょっとした変化を……といった軽い気持ちでした。

 ところがこの店はとんでもない非日常をもたらしたのです。


 ――まさか神様がワタクシを探しに来店するなんて。

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