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第11話:虚無のファッションショー

 数日後、アレクの出演するファッションショーを観ようと、友人の氏神のシロを誘ってリビングでノートパソコンを開きました。


「アレク兄ちゃんすごいね! ファッションモデルなんてカッコいい!」


「そうですよね、ワタクシも弟として鼻が高いです!」


「あ、ショーが始まったよ!」


 画面の向こうでは美しい衣装を着たモデルが、光に包まれながら颯爽さっそうと歩いています。


「はぁ、すばらしい。……華やかな世界ですねぇ」


 ワタクシがうっとりしていると、シロが急に大声をあげました。


「ねぇ! これって、アレク兄ちゃんだよね……?」


「え……何ですかこれ⁉ どういうことですか⁉」


 そこには、大きなモコモコの着ぐるみに包まれて舞台の上を歩くアレクの姿がありました。

 せっかく鍛えた体は、全身を覆っている着ぐるみのせいでまったくわかりません。


 丸くくりぬかれた穴から顔を出す彼の表情に、虚無を感じるのは気のせいでしょうか。


「なんだか、こういうの見たことありますよねぇ……何でしょう」


「僕知ってる! 観光地にある顔出し看板だ!」


「それですね」


 結局、アレクの出番はそれだけで、彼は一度もダイエットの成果を披露することなくショーは終わりました。


「……アレク兄ちゃん、出番少なかったね」


「まぁ、人生そう都合よくはいかないもんですよね。しかし、どう慰めればいいものか言葉が出ません」


 ――せめて、アレクが帰ってきたら彼の大好物のハンバーグをたくさん作って、好きなだけお菓子を食べさせてあげよう。


 ワタクシとシロはパソコンを閉じて、一緒に食材やお菓子を買いに行く相談を始めました。


 そして数日後。


「ただいまー、おぉ、今日はすげぇご馳走だな! パーティか?」


「え、えぇ。そんなもんです。ねぇ、シロ?」


「うん、そうだね」


「そういや、良い報告があるんだよ!」


 やけに上機嫌のアレクの様子に、ワタクシとシロは顔を見合わせました。


「お兄ちゃんさ『実写版パン男ロボ』に、ゲスト出演することになったんだよ!」


「えぇぇぇぇぇぇぇ⁉」


 パン男ロボはアレクの大好きなアニメです。まさかそれの実写版に彼が出演することになるとは。

 驚くワタクシ達に、アレクは笑顔で説明を始めました。


「実はな、ファッションショーで着ぐるみを着たら、たまたまパン男ロボの監督がショーを見ててさ。その着ぐるみをうちの新作映画にも登場させたいって……」


「何があるかわからないもんですね……」


「アレク兄ちゃんすごいね!」


「だろ、だろ? まさか憧れのパン男ロボと共演できるなんて……最高に幸せだ!」


 そして彼は大好物のハンバーグをぺロリと平らげ、満面の笑みでお菓子をパクパク食べました。


「ふふ、今日はパーティですね」


「そうだねぇ」


 ワタクシとシロは、その様子を見て心からホッとしたのでした。

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