鈴木青葉
鈴木青葉は笑えば可愛いのだ。
「じゃあ一緒に帰ろうか」
僕はそう言うと立ち上がって鈴木青葉を促した。
「ちょ、ちょっと待って」
何だ?まだ生徒が居るかもとか恥ずかしがってるのか?
「どうかしたの?」
ここは作り笑顔で。
「あの、私、彼氏居るんです。あ、会った事は無いけど、ネットで知り合っただけの人だけど。大事な彼氏なんです」
は?
マジか、彼氏が居るとは想定外。
だが会った事は無いネット彼氏か。
ここは一歩引いて様子を伺おう。
笑顔を貼り付けるのは慣れてる。
「あぁ、そうなんだ。じゃあ、一緒に帰るのは彼氏に悪いかな。でも僕は鈴木さんに会いたいからさ、ちょっとずつで良いから、学校に来てくれると嬉しいな」
しつこく無い程度にアピールしていこう。
兎に角学校に来てもらわない事には始まらない。
あくまで優しく紳士的に。
「ありがとう、佐藤君って優しいんだね」
うん、好感は持ててる様だね。
笑顔になると意外と可愛いじゃあないか。
ここは一つ。
少しだけ押して、そして引いてみようか。
「好きな人には、誰でも優しくするものでしょ?じゃあ今日は校門でお別れしようか」
うんうん、この慌て方はどうだろう。
満更でも無さげかな?
まぁ、ネット彼氏とやらも、そう長くは続かないだろう。
後ろから鈴木青葉が付いて来ているのを気配で感じながら、あくまで歩くペースを合わせ下駄箱に行き。
靴に履き替える。
そして校門でお別れをするつもりと言うのは嘘で。
家は同じ方向だと言う事は知っている。
何せ家は近所だからね。
別にストーカーなわけではない、たまたまだ。
コレも何かの縁だと勘違いしてくれれば良いが。
無言で帰るのも何だし、軽く自己紹介でもしながら帰ろう。
僕を少しずつ知る事で、僕への興味も少しは出るかもしれない。
身長は170cmだと言う事。
兄弟は居なく一人っ子だと言う事。
好きな食べ物はカレーだと言う事。
学ぶと書いて「まなぶ」と読む事。
そしてあるゲームをやっている事。
それは鈴木青葉がやっているゲームだと言う事は知っていた。
以前鈴木青葉が学校に来た時に、たまたまスマホを扱っていたのを覗き見たからだ。
その事は黙っていたがね。
「嘘?!君もやっているのかい」
なんて大袈裟に喜んで見せた。
ゲームの話で盛り上がれるくらいはやり込んでおいた。
あわよくばゲーム内で繋がって、と考えていたが。
フレンド申請の是非は二つ返事でOKをもらえた。
この反応なら行けるだろう。
「Twitterやってる?良かったら相互フォローしない」
とスマホを顔の横でヒラヒラと傾けてみた。
鈴木青葉は少し戸惑ったが。
直ぐに小さくコクッと頷いた。
動き始めて初日にしては、なかなか順調ではないか。