佐藤君
佐藤君。
学校で私に唯一話しかけてくれる人。
でも私には彼氏が居るし、一緒に帰るのは断らないと。
放課後、教室から佐藤君以外が帰るのを待ちました。
佐藤君も自分の席に座ってスマホを弄ってます。
皆んな居なくなって二人っきりになって、佐藤君から話しかけられました。
「じゃあ、一緒に帰ろうか」
佐藤君は立ち上がります。
「ちょ、ちょっと待って」
か細い声しか出ませんでしたが、佐藤君は気付いてくれました。
「どうかしたの?」
佐藤君は優しく聞いてくれました。
「あの、私、彼氏居るんです。あ、会った事は無いけど、ネットで知り合っただけの人だけど。大事な彼氏なんです」
佐藤君を恐る恐る見上げると、彼はニッコリと微笑みました。
「あぁ、そうなんだ。じゃあ、一緒に帰るのは彼氏に悪いかな。でも僕は鈴木さんに会いたいからさ、ちょっとずつで良いから、学校に来てくれると嬉しいな」
わぁ、なんて良い人なんだろぅ。
こんな優しい人存在するんだ。
佐藤君が居たら、いじめられなくて済むのかな。
「ありがとう、佐藤君って優しいんだね」
あれ?私笑ってる?
久しぶりに笑顔になれた気がしました。
家ではお父さんに怒られてばっかりだし。
彼氏とだって喧嘩ばかりで、笑顔になる事なんてほとんどないのに。
佐藤君の前でなら笑顔になれるのは何でだろう。
「好きな人には、誰でも優しくするものでしょ?じゃあ今日は校門でお別れしようか」
え?今好きな人って言った?!
私の事?聞き間違い?
混乱しながら佐藤君について行き、下駄箱で靴に履き替えました。
そして校門でバイバイするはずだったのですが。
予想外な事に、帰る方向が一緒で、家も近所だと言う事が分かったのです。
結局私の家の近くまで、二人並んで帰るのでした。
この時佐藤君の事を少しだけ知りました。
150cmも無い私と比べて身長が高い事。
一人っ子な事。
カレーが好きな事。
学と書いて「まなぶ」と言う名前だと言うこと
そして、私が好きなスマホゲームを佐藤君もやっていた事です。
そのゲームの話で盛り上がってしまい、帰る途中の公園で少しだけ止まり。
スマホを取り出してゲームのフレンドになってしまい。
その勢いで、SNSアプリの連絡先を交換してしまいました。
彼氏にバレたらまた喧嘩だ。