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兵士たちへ嫉妬する夫

ブックマークと評価、いいね! を頂き、ありがとうございます。

皆様の応援に背中を押され、改稿作業をしております。

※ユリオス・ブランドン視点


 確かに俺は、遠征に出て屋敷にいないことが多い。

 1か月単位でいないのは、よくある話だ。

 だとしても。結婚して3か月経っても、屋敷でマーガレットと話せないのは、絶対におかしい。


 寝る直前、部屋を訪ねれば余計な従者もいないはずだ。ならば今夜、部屋へ行くべきか。

 ……いや、俺でも分かる。それは、やめるべきだろう。

 今の2人の関係では、余計に話がこじれる気がしてならない。

 

 朝、俺が兵士たちの元へ向かう前。今ならマーガレットは部屋にいるはずだ。鏡に映る自分に頷き、戦場へ赴く前と同様の気合を入れた。


 俺が部屋を出る前、何度も鏡で確認を済ませた騎士服に、一切の乱れなはい。


 マーガレットの部屋の前。薄く飾り気のないシンプルな扉。俺は息を止め、少しの音も立てずに耳を澄ます。中に人の気配は、……ある!


 マーガレットは絶対に部屋の中にいる!

 そう確信した俺は、廊下に響き渡るノックと同時に声を掛けた。

「おい、マーガレットいるんだろう!」


 いよいよ会える。

 その期待から、僅かな緊張を感じていた俺の目に飛び込んできたのは、バーンッと音を立てて開く扉。

 俺に怒っている……。

 慌てて中に立っている人物を見れば、食えないメイドたちだ。

 それなら納得、計算済みだ。どうせ、こいつらの隠し立てだろう。

 俺もいよいよ余裕がない。悠長にしていたら妻を逃してしまう。もう、その手は食わない。


「マーガレットは中にいるんだろう」

「いませんよ。掃除をすると言ったら出ていきました」

「嘘だな。中にいるはずだっ! 入るぞ」

 部屋の中に一歩入れば、草の香りがほのかに漂うだけで、……本当に、マーガレットがいない。

 浴室か? そう思い駆け寄った俺は、扉のノブに手を伸ばしかけ、殺気を感じた。


「いないと言っているのに、女性の部屋にズカズカと入るなんて、信じられません。それも、女性の浴室まで覗こうとして。マーガレット様に言い付けておきますからっ!」

「いや、それは違う。マーガレットにどうしても話があるだけだ」

「チッ、掃除の邪魔です。さっさと立ち去ってください!」


 殺気立つ3人のメイドから、マーガレットの部屋を追い払われ、既に打つ手がない。

 屋敷にいるはずだが……、何が起きている。


 屋敷中を探し回っているが、どういうわけか一向に見つからない。


 マーガレットを見つけたと思い、俺が近寄ればいなくなっている。

 彼女は、どんな動きをしているんだ。

 これでは、俺の気持ちを伝えたくても、話もできない。

 あー、駄目だ。気持ちばかりが焦ってくる。


 モヤモヤした気持ちを抱え屋敷を出た俺は、こんな感情でも迷うことのない一本道を歩き、兵士の宿舎に辿り着いた。


 ふと兵士の宿舎の入り口を見やると、茶色い髪の小さな少女が立っている。

「っん?」


 あれは、マーガレットで間違いないだろう。

 女性の立ち入りを禁じている兵士の宿舎に、堂々と少女がいるわけがない。

 マーガレットと一緒にいるのはカイルだろうか。

 ……って、おい。なぜ兵士の宿舎にマーガレットがいるんだ!

 笑い声でも聞こえてきそうなくらい、妻が楽しそうに笑っている。


 ……おいマーガレット。……他の男とそんなに親し気に、何をしている。

 

 カイルがマーガレットの腰に手を当て、彼女を持ち上げた。どういうことだ?


 カイル! マーガレットは俺の妻だ。気安くマーガレットに触るなっ!


 妻と他の男がいるところをうらやまし気に、離れたところから見ている俺。これは確実に嫉妬だろう。


 2人の関係に水を差しに行きたい。

 だが、2人が何をしているのかも分からないのに、一方的にそんなことをしたら、呆れられるだろうか。


 もしかして、マーガレットは俺に用事があり、宿舎まで来てくれたのか?

 いや、そんなことは、あるわけないだろう……。

 俺は屋敷でも、マーガレットと話したことはないのだ。わざわざ宿舎に来る理由がない。


「チッ」

 それにしても、あの2人随分と仲が良さそうだが、何があるんだ。

 俺がマーガレットとのきっかけを作りたいと思っているのに、俺の気持ちも知らずに、どうして他の奴とは、親し気にしている。


 よりによってカイルか……。


 屋敷の奴らでは、マーガレットを落とせないと高を括っていられるが、……カイルは危険だ。

 纏わりつく女性が多いくせに、これだと思う人がいないから、結婚しないと言っている男だ。


「あー……」

 思わず泣きそうな声を上げてしまった。

 駄目だ。駄目だ。

 マーガレット何をしている。


 俺には見せない笑顔で、そいつに笑いかけるな!  

 やばい。こうしている間に、俺の妻が他の男に奪われるかも知れない。

 こんな所で、つべこべ言わず、あの2人の会話を止めに行くべきだ。


 駆けだそうとした矢先。俺の背後から、副隊長のギャビンが声が掛けてきた。

「隊長、次の予定がありますので急ぎましょう」

「あ、ああ……」

 俺は、兵士の宿舎の横にある建物へ、視線を移した。

 近々向かう長期遠征。その作戦会議の時間だ。

 分かっている。だからこそ、早くマーガレットとの関係を正したいのに。差し迫る出陣のことも後に回せず、そちらを優先した。


 俺はこのまま、あの2人を放っておいていいのか。どう見ても親しそうだった。


 部下の手前、見栄を張って声を掛けられない夫など、いい年して何をしているのだ。

 一言声を掛けるだけで良かったのに……。


 ****


 昨日に続いて、また、マーガレットが兵士の宿舎に来ているのか?

 それに一緒にいるのは、またカイルか。


 カイルの部屋で、マーガレットが生活しているわけではないだろうな。


 いや、大丈夫だ。今朝だって俺の稽古を飽きもせずに覗いていた。


 そもそも、マーガレットは俺の妻だ……。

 今は、まだ手違いの妻の宣言を消せていないだけ。


 俺は、妻とまだ何もしていない。それどころか会話もないが、間違いなく正真正銘の妻だし、互いに離婚誓約書へ署名をしなければ、夫婦のままだ。


 せっかくやって来たマーガレットを、俺は逃す気はない。

 


 そうこうしていれば、妻が、あっと言う間に兵士の奴らに取り囲まれている。

 あいつらマーガレットに何かするつもりではないだろうな。

 一体何があればあれだけの兵士が、マーガレットの周りに集まる。


 宿舎の管理をしているのは、副隊長のギャビンだが、奴は俺の妻がここに来ているのを知っているのか? 知っているなら、どうして報告しないんだ。


「――!」

 下心が顔に出ている兵士が目に飛び込んできた。

 他にもよく見れば、マーガレットに鼻の下を伸ばした兵士たちがいるようだ。

 そこにいる奴ら、俺の妻から離れろっ!




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クソ辺境伯よりカイルが夫だったらいいのになと思いました。
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