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水見式をやってみた結果、変化系だという事が判明したので、子供の頃に本気でキルアを目指していた時の話

作者: 十日兎月

○このエッセイにはあなたの黒歴史を再び呼び起こす危険性があります。かつて右目に闇の力を宿らせていた方などは特に注意しながらお読みください。



 皆さんは水見式という言葉をご存じだろうか。

 かの名作、ハンターxハンターを知っている方なら言うまでもないと思うが、「念」という特殊な力の性質を知るために用いられる、言わば儀式のようなものだ。

 その水見式と呼ばれる儀式であるが、グラスいっぱいにいれた水に葉っぱを浮かばせ、そこに「練」という力を加えると自分の念能力の性質を知る事ができるという仕組みになっている。

 ちなみに液体が入る物ならグラス以外でもいいらしく、水じゃなくてコーヒーでも可。液体の上に浮かべる物は葉っぱではなく紙でもいいらしい。詳しくは原作かネットで調べて頂きたい。


 話を戻そう。


 作者がまだ小学五年生だった頃、ハンターxハンターのアニメ(旧版)が放送されており、当時はその奇抜なストーリーと魅力的なキャラクターにどハマりしていた。友人との会話もどのキャラがカッコいいとかそんな話ばかりしていたように思う。

 そんな中、ハンター試験と呼ばれるストーリーが終わり、次に「念」という新しい設定が出てきた時、私はとても熱中した。

 それはもう「ふおおおおおおカッケぇぇぇぇ!!」とばかりに両手に拳を作って興奮したものである。というか男なら興奮せずにおられまいて!

 そうして主人公たちが「念」という新しい力を学ぶ中、それは世に放たれてしまった。

 というか原作が週刊連載だったので、アニメよりもっと早く世に放たれていたのだが、ともあれ、私はそれを見てしまったのだ。


 水見式という、男の子の心を最大限に擽ってくれる特殊な儀式を……!


 水見式については上記に書いた通りだが、当時アニメで放映された時、私は目が釘付けになっていた。むしろガン見だった。

 何せ、この水見式とやらを行う事で、誰もが持つオーラ(原作上では)の属するタイプがわかるというのだ。

 こんなのを見せられたら、ワクワクするなというのが無茶という話である。

 これはさっそくやらざるをえない!

 そう決断した私は、すぐ本屋に行って水見式が出てくる巻だけを購入し、めちゃくちゃ読み込んだ。おまけページに水見式のやり方も解説してあったので、それも何度も読み直した。


 ここまで来たら、あとは水見式をやるのみだ。


 実際やろうと思ったら、まず「練」という特殊な方法を身に付けなければならないのだが、

「オレなら絶対できる!!!!」

 と何故か「練」どころか「念」の練習すらしていないのに謎の自信に溢れていた。

 今にして思えば、当時からドラゴンボールに出てくる「舞空術」とか、るろうに剣心に出てくる「二重の極み」とかを密かに練習していたので、そういった鍛錬をしている自分なら絶対にできると大した根拠もなく信じ込んでいたのだろう。


 さて。


 そんな自信満々でやってみた水見式──もちろん家族に見られたら恥ずかしいので、家で誰もいない瞬間を狙って(笑)──だったが、当然の事ながら何も変化はなかった。

 もしも成功していたら、水の量が変わるだとか、葉っぱが沈むなどの変化が現れるはずなのだが、どれだけ一生懸命に「練」をやってみても、何も変わらなかったのだ(本人は大真面目に「練」をやっています)。

 しかし、私は諦めなかった!

 確かアニメでキルア(主人公の友達)がやった時は水は甘くなっていた。だったら自分のも、水の味が変わっているのかも!?

 そうして、おそるおそるグラスに指を突っ込んで舐めてみると──


「水が……しょっぱい……? つまりこれは……キルアと同じ変化系という事か──!」


 そう。

 水がしょっぱかったのだ。

 もっともこの時、水見式に集中するあまり、めっちゃ手に汗を掻いていたので、その時の塩分が指に付着しただけだと思うが、小学生の時点ですでに厨二病だった私はガチで変化系なのだと信じてしまったのである。

 ついでに言うと、のちにヒソカというキャラがオーラ別性格分析なるものを発表するのだが、変化系の特徴は気まぐれで嘘つきだという事を知り、

「なるほど。ミステリアスなオレにピッタリだな(ニチャア)」

 と、勝手に決め込んでいた。どう見ても強化系の特徴である単純で一途のバカヤローでしかないというのに(笑)。


 さて。


 こうして変化系だという事が判明したわけだが、当時、主人公のゴンよりもキルア派だった私は、当然のように「こりゃキルアになるっきゃないな!」と決意してキルアを真似るようになった。

 たとえばワックスの代わりにリンスで髪をツンツンにしてみたり(あの時はワックスという存在そのものを知らなかったので、代用でリンスを使用)、「暗歩あんぽ」という足音を消す技を練習してみたり、当時まだ幼稚園園児だった弟に心臓を奪う暗殺術を試してみたり(!?)と、真似できそうなものは色々とやってみた。

 特にキルアがやっていた念能力のひとつである電気の操作は、自分も下敷きなどで頭や脇を擦り付けて静電気を発生させる事によって、少しでもキルアに近付こうとしていた。

 特に冬場、ドアノブに触れた際にバチっと静電気が走った際は、

「ふっ。とうとうオレも下敷きを使わずして電気を発生させられるようになったか……」

 と、ひとりでほくそ笑んでいた。痛む手をさすりながら(笑)。


 で。


 そんな変な事ばかりしていたせいか、言わずもがなではあるが、クラスメートから変な目で見られるようになってしまった。特に女子からは「何あいつキモいしキモい上にマジキモい」という奇異な視線を向けられるようになってしまった。

 まあ女子の評判なんてどうだっていい。

 そんな事よりクラスの男どもに、

「こいつぁ只者じゃあねぇぜ!」

 と思われる事の方が重要なのである。

 と、本気で考えていた。あの頃は。

 実際は、当時からクラスメートたちにバカな奴だと思われていたので、

「バカな奴がまたバカな事やってんな」

 くらいの認識だったと思う。

 そんなバカな自分でも、長くやっていたらさすがに違和感というか、なかなかキルアみたいに上手くできないのを変に思う時が来るもので、

「あれ? 実は自分、変化系じゃないんじゃね?」

 と疑問視するようになったのである。

 大人になった今なら「違う。そうじゃない。変化系どうこう以前にお前は『念』を使えねぇんだよ」と突っ込んでいたところだろうが、当時の自分はまだ本気で「念」が使えると信じていた。

 そうして二度目の水見式を行なった際、それは起きた。


 なんと、葉っぱが揺れたのである!!!!


 と。

 ここでネタバレというか、当然ながら「念」で葉っぱを動かしたわけでもなんでもなく、あの時はグラスにめちゃくちゃ顔を近付けていたので、単に息で葉っぱが揺れただけにすぎなかった。

 が、大人になった今なら気付けた単純な真相も、子供で厨二だった私は、

「そうか! オレは変化系じゃなくてズシと同じ操作系だったんだ……!」

 と別の可能性に希望を見出したのである。

 とは言ったものの。

 とは言ったものの、である。

 先ほど話に上がったズシというキャラ、実はアニメ放送時は大した活躍はしておらず、正直自分の中でパッとしないキャラという印象しかなかった。

 いやでも、この先、大活躍するかも!

 と期待に胸を膨らませながらアニメを視聴するも、結局ズシの活躍は描かれず、グリーンアイランド編を迎える前にアニメは終わってしまった。

 その頃にはあれだけ熱中していた念能力という不思議な力に対する憧れも急速に冷めてしまい、別の事に興味を抱くようになった。アニメ好きな子供のあるある事項のひとつでもある。

 ちなみにそのグリーンアイランド編だが、私は未だに原作もアニメも見ていない。社会人になってからなかなか時間が取れず、十年近く前にやっていたリメイク版も結局一話すら観れずにそのまま放送は終了してしまった。

 転職してある程度時間が空いた今なら、また観れるかもしれないが、さすがにリメイク版で140話以上もある話をレンタル屋などで借りてみるだけの余裕はない。また週一か週ニくらいのペースで放送してくれたら観れるかもしれないが、その可能性は低かろう。

 そして漫画を全巻揃えて読むほどの時間的余裕もないので、今でもまだグリーンアイランド編辺りからどうなったのだろうと、悶々としている今日この頃である。

 最後に一言。



 ああああああああ一度でいいから「念」を使ってみたかったなああああああああああああ!!!!!!






大人になった今、もう一度水見式をやってみました。


何も起きませんでした。 


何も……本当に味すら変わらず一切何も……。

(でも私の心は折れました☆)

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