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負けられない戦い

 先輩に続きエスカレーターに乗る。

 上の階に着くとゲームセンター特有の喧騒が聞こえてきた。

 メダルの落ちる音や、ゲームのナレーション、学生の騒ぐ声などだ。

 けれど今日は平日なので人が多いということはなく、そこまでうるさくは、なかった。


「先輩、何で勝負します?」

「どうしよっか。メダルゲームだと運要素が強いから、レースとか格ゲーとかかな」

「いいですよ、とりあえず移動しましょうか」


 そして、俺たちは格ゲーなどのアーケードゲームが並ぶコーナに来た。


「それで、どれをやります?」

「あっ、これは?『ヘルファイト』私これ好きなんだー」

「いや、僕も好きなんですけど、もうあんまやってないんですよね…」

「そっか、じゃあこっちは?『フローガキング』。私このゲームで大会出たんだよ!2位だったんだけどね…」


 先輩から悔しさのオーラが出ている。1つのことにそこまで打ち込めるなんてかっこいいなぁ。


「僕もこのゲームやってますけど、先輩が強いじゃないですか。今度は負けてしまうかもしれないのでちょっと…」

「もう!誠くんも提案してよ〜!」


 先輩はプクッと頬を膨らませる。…なんか指で突きたくなるな。

 格ゲーは少しやりたくないないので、辺りを見渡すとかっこいい車が映っているゲームがあった。


「先輩、あのゲームやりましょう!……先輩?」

「今度………、今度?」


 先輩はなぜか不思議そうな顔を膨らませブツブツとなにかを話していた。


「先輩、大丈夫ですか?」

「うん、え!あ、大丈夫なんでもない!あれやりたいんだよね?『アクセルバースト』あれ、あんま得意じゃないんだよな…」

「あのゲーム『アクセルバースト』って言うんですか?」


 その瞬間、先輩は困惑のオーラが出て、理解できないという顔をされた。

 え、そんな有名なゲームなの?


「え、もしかして知らないと不味い感じですか?」

「いや、そんなことはないんだけど…まぁいいや!やろやろ!」


 先輩はタタタッと、そのゲームに近寄っていった。

 『ワールドオブドラゴンズ』のためにも負けられないぞ!

 

 それは先輩も同じ気持ちなのか、やる気のオーラが出ている。しかし、その中に少しずつ悪意のオーラが混ざっていた。

 どうしたんだ…?


 ・ ・ ・ ・ ・


 席に座り、100円を入れると激しいエンジン音が流れ、ゲームが始まった。

 隣を見るとめいいっぱい足を伸ばして、アクセルに届かせようとしている先輩がいる。微笑ましい…


 車を選択する画面に移り、沢山のスポーツカーが並んでいる。1つ1つの車に性能が書いてあるが、初めてやるのでいまいちどれが強いかわからない。


「先輩、これ、どの車が強いとかあります?」

「人によって得意不得意があるし、普通、敵に有利になるようなことは言わないよ〜」


 先輩はからかうようにそう言った。

 …とりあえずバランス型ってやつを選ぶか。

 先輩は何を選んだのだろうかと思い、隣を見るとスタミナ型という車を選んでいた。

 ……………スタミナ?車に?競馬じゃなくて?


 次にコース選択に移る。


「先輩が、選んでください。俺、どこがいいかわからないんで」

「私も得意じゃないし、誠くんも初めてやるらしいから1番簡単なところにしよっか」


 先輩はサッとステージを選択したので俺もそれに合わせて選択する。

 するとコースが決まり、ローディング画面になる。

 緊張してきた…


「あ、このゲームってスタートダッシュあります?」

「いや、ないよ。下手に開始前からアクセル踏んでると不味いことになるから気をつけて…」


 角は生えていないので嘘はついていない。

 これで、騙されてスタートダッシュをされるということはなくなったな。

 いや、それより不味いことが気になる。

 不味いこととは何かと聞こうと思ったが気づいたら既にカウントダウンが始まっている。


『3,2,1,BURST!」


 最初から物騒なカウントダウンとともに一斉に走り出す。

 出だしは順調だ。いや、順調すぎる。

 先輩含めて、あと5人対戦相手がいるが(4人はbot)彼らをどんどん突き離し、先に進む。


「先輩、どうしたんですか?俺、このまま勝っちゃいますよ?」


 俺が煽るように言うと先輩から不穏な言葉が飛んできた。


「残念だけど、その走り方だとこのゲームじゃ絶対には勝てないよ」


 え、なんで…。

 まあいい、とにかく今は差をつける!

 更にアクセルを踏み続け加速していく。


 しかし、突如ボンッという爆発音が鳴り、車体がグルグルと回って壁に衝突した。

え、何が起こったんだ。

 アクセルを踏んでも全く動かない。

 そうしているうちにどんどん抜かされていく。


「先輩!なんですかこれ!」

「ふっふっふー、実はこのゲーム、急激にスピードを上げすぎるとタイトルの通りアクセルが壊れるんだよね~」

「それ先に言ってくださいよ!」

「ちょっと待ったら復旧するから追いつけるように頑張ってね~」


 くそっ!一気に形勢逆転されたか。

 だが大丈夫だ。俺なら巻き返せる。

 大切なのは焦らないこと。徐々に加速しつつ、相手のミスを待とう。


 その後、最後の一周に差し掛かったころ、俺は2位に順位をつけていた。

 4人のbot達は俺と先輩に半周程、差をつけられている。


「ま、誠くん。本当にこのゲームやったことないの?」

「やったことないですよ!もうあんま余裕ないんで黙ってやりません?」


 先ほどの感じだといとも簡単に順位をあげれたみたいなニュアンスが入っている気がするが実際は今までにないくらい集中している。

 加速しすぎてもダメだし遅すぎると置いて行かれる。

 しかも先輩は今のところ1度もミスをしていない

 正直、先輩についていくのでやっとだ。だけど俺は少しでも早く『ワールドオブドラゴンズ』をやるために負けるわけにはいかない。


「ごめんごめん、………でもこのゲーム初めてやる人はゴールできたらかなり上手いって言われるくらい難しいはずなんだけど…コンピューター達もレースゲームの中じゃトップクラスで強いし……でもまだあれがあるから…」


 先輩が何か言っている。

 最初の謝っていたのは聞こえたが、その後は急に声が小さくなり何と言ったか聞き取れなかった。


 少し先輩のほうを見ると疑いと焦りのオーラが出ている。いや、疑われたって本当に初めてやるしな…

 あと、焦ってるということは先輩も余裕がなくなってきてるということだ。人は余裕が無くなるとミスが増える。これはまだ勝負はわからないぞ。


 しかしもっと気になることがある。先輩の悪意のオーラが増えている。

 敵意じゃなく悪意なので何か企んでいる可能性が高い。でも先輩はそんなこと考えなさそうだけどな…


 おっとこんなことを考えている場合じゃない。

 ゲームはラストスパートだ。先輩が俺の少し先にいる。

 しかし、車の特性か、俺の車の方が少し速く、ジリジリと距離を詰めていく。

 長い最後の一直線の奥にはゴールが見えていてこのまま行ったら多分勝てる。

 だが先輩も甘くないので最後のひと加速した。

 あぁ、もうだめだ。これじゃ追いつけない。既にエンジンが壊れる寸前のスピードで走っているのでこれ以上加速できない。

 『ワールドオブドラゴンズ』今日のうちにやりたかったな…


「あ!!!」


 という先輩の叫び声とともに爆発音が聞こえる。そしてクラッシュした車が横に転がった。

 先輩は初めてミスをした。


「っしゃあああ!」


 やはり勝負は最後まで分からない。先輩も焦ってミスをしたんだ!

 俺の勝ちだ!

 勢いよく先輩の車を追い抜く。


 が、その途端俺の車が減速し始めた。そのまま加速することができず遂にゴール10メートル前くらいで、止まってしまった。

 いくら強くアクセルを踏んでもびくともしない。そしてよく見ると画面の端に『燃料切れ』の文字。


「先輩!これどういうことですか!?」


 先輩は少し困った顔をすると、


「誠くんはね、上手すぎたんだよ」


 といい、アクセルを踏んで(つま先立ち)、直った車を走らせ、ゴールへ突っ込んでいった。 

話に出てきたゲームは実際のものとは関係ないので、もし同じ名前のゲームがあっても許してください…

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