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ゲーム部

 部室に桐原先輩の透き通った声が響く。しっかりとよそ行きスマイルを浮かべながら。

 俺の隣には眼鏡が居心地悪そうに座っている。

 ふと目が合い耳元で話しかけてきた。


「なあ、なんで桐原さんがいんだよ。え、なにこの設定、ラノベじゃんw」

「ちょっと黙れよ、ほらさっさと質問に答えろ」


 桐原先輩は穏やかに笑っているものの、イライラのオーラが出てる。早くさせないと後で俺が怒られる…


「まずは名前を聞いてもいいかしら?」

「え、あ、はい、田中俊樹です……」


 きょどりすぎだ。あと下向くな。


「それじゃ、田中君。どんな依頼なのかしら?」

「え、いや、あの自分、ゲーム部てのをやってるんすよ」


 その言葉を聞いた途端、俺の前の座っていた辻本先輩がぴくっと動いた。オーラからとても興味があるのがわかる。

 しかし、桐原先輩の顔は少しひきつっている。なんか自慢げでキモかったもんな。本人は下向いてて、気づいてないからセーフ。


「でもまだ三人しかいないんで正式な部じゃなく……、先生とかの雑用を手伝うを条件にやらせてもらってるんすよ、でもいい加減、活動実態なさすぎてもう廃部になりそうなんす…。だけどなんかのゲーム大会で優勝すれば免除しくれるらしいんですけど…」

「けどなんだよ」

「うちの部員みんながやってるかつ、リミットまでに大会があるゲーム1つしかなくて、その大会が5人一組でチーム作らなきゃなんだよね」


 俺の方見ながらだったらいきなり饒舌に話始めるのキツイ。


「だから助っ人がほしいという訳か」

「そゆこと」

「じゃあ丁度良いんじゃないか?俺と辻本先輩はゲーム好きだし」


 すると辻本先輩から怒りと焦りのオーラが出た。え、俺まずいことした?

 辻本先輩は席から立つと、こちらに歩いてきて耳元でこう囁いてきた。


「ちょっと!ゲームが好きってこと言わないでって言ったじゃん!」

「あ!すっかり忘れてました……」

「ひどいな〜。まぁ、あの人、友達いなそうだから多分、広めることはないだろうけど」


 いや、先輩も大概、酷いこと言ってますよ…

 けれど、桐原先輩が田中を本気で嫌がっているから、頼めるのは辻本先輩しかいない。

 辻本先輩も相当オタクだろうから田中には親近感すら覚えるはず…!

 すると桐原先輩が口を開く。


「とりあえず、今回は私の出る幕は無さそうね。力になれなくて申し訳ないのだけれど今回は二人に任せてよろしいかしら?」


 桐原先輩はとても無念そうな表情を浮かべている。

 でも申し訳ないとか言っているけど内心喜んでいるのを俺は分かるからな。角、出まくってるし


「うーん。なぎちゃんに言われちゃったらしょうがないな~」


 しょうがないとか言ってるけど内心喜んでいるのも俺は分かるからな。

 あと、辻原先輩は元々表情隠せてないし


「あ、じゃ、お願いしまーす」


 おい、田中。平然装ってるけど桐原先輩来なくてがっかりしてるの分かるからな。

 あとキモい。


 ・ ・ ・ ・ ・


 話を効き終わった俺と辻本先輩は田中に案内され、ゲーム部に、向かっている。

 ゲーム部は2階のPCルームで活動しているらしい。

 隣でフラフラと歩いている田中に目を向ける。

 しかし、なんで俺らの部活の存在をこいつは知っていたんだ?

 

「なあ、田中。お前なんで俺らの部活知ってたんだ?」

「いや、自分の部活、先生の手伝いしないと活動できないって言ったじゃん?」

「あぁ」

「で、資料室に物を運ばないといけないことがあって4階に行ったら、謎に生活感のある部屋があって、先生に聞いたら教えてもらえた」

「そういうことか」

「まじで、ラノベじゃんwって、他の部員と話してたんだよ」


 …人生楽しそうだなぁ。

 だが、友達にはなりたくない人種だ。ダルそう。これじゃ友達も作れるわけない


「言っておくが今のところラノベみたいな展開は全くないからな」

「なんだよ~2010年から2015年くらいの妄想全開のアニメみたいな展開を期待してたのに」

「……あの頃の電波ソングアニソン帰ってこないかな…」

「…神崎。マジでわかる。」


 俺たちは手を固く握りあった

 前言撤回。こいつはいいやつだ。あの頃のアニソンが嫌いな奴に悪い奴はいない。こいつと友達にならないやつは見る目が悪いな。


「何やってるの…?」


 先輩に軽く引かれた。


 ・ ・ ・ ・ ・


「さあ我が部室に到着だ!」


 田中から羞恥心オーラだ。女子の前だから騒ごうとしてるのかな…見てて痛い。

 すると先輩がちょちょんと袖を引っ張ってきた。前かがみになると、先輩は俺の耳に手を当て小声で、


「田中君、いきなりどうしたのかな?反応した方がいいのかな?」


 優しい…。


「適当に流しとけばいいんですよ。先輩みたいな可愛い子がいるからテンション上がってるんじゃないですか?」

「あ…うん。…え、か、可愛いって」

「ん?なんか言いました?」


 もう前傾姿勢から戻していたのと、先輩の声が小さくて聞き取ることが出来なかった。


「いやいや!なんでもない!さっさと行こう!」

「うおっと、わかりましたから引っ張んないでくださいよ!」


 そしてそのまま俺は強制連行された。


「おぉ!田中殿!遂に我らの同士を見つけたのだな!」


 早速キャラの濃いやつが出てきた。

 今度はメガネデブだ。

 まさにのっしのっし、といった効果音が付きそうな歩き方でこちらにやってくる。

 この人汗がすごい、汗が。


「……………おつかれー」


 奥からもう一人、消えそうなほど小さな声が聞こえてきた。

 部屋の隅の方にポツンと座ってキーボードをカタカタ打っている。指の動き的にWASDを使ってるな…

 どうせこいつもメガネ………じゃねえ!

 とんでもない美少年だ!

 水色のサラサラな髪が少し目にかかっていて、ちらっと見ただけなら女の子に見えそうだ。

 え、なんでここにいるの?こんな陰キャの終着点に!?


「おつー、この人たちが大会に参加してくれるってよ」


 田中が俺たちに自己紹介を促す。


「神崎だ。よろしくな。」

「辻原美優です!はじめまして!」

「うむ、神崎殿、辻原殿、ともに戦ってくれることに感謝する!我は二階堂竜司だ!よろしく!」


 (見た目に反して)やたらかっこいい名前だな〜と思っていたら。二階堂が俺の近くにいたので握手を求めてきた。

 一応握手をすると、しっとりとしていた。

 うわ最悪…絶対手を洗おう…


「おい!佑成殿!辻原殿に挨拶されているだろう!返事くらいせんか!」


 二階堂は後ろにいた美少年をビシッと指さした。

 そして、美少年は嫌そうな顔をしながらヘッドホンを外し、口を開いた。


「えーっと、清水佑成っす。オナシャス」


 名前を聞いてハッとした。

 ある日いつものように寝てる(フリ)時に女子が『清水君マジ可愛いよね~!』と騒いでいたのだ。

 その時はイケメンとか滅びろ程度にしか思っていなかったが、こりゃ女史が騒ぐのも無理ないな。

 まあ、今でもイケメンは滅びろと思ってるけどな!


「うむそれでよい!」


 二階堂は腕を組んで満足げにうなずいている。


「………チッ」


 あ、清水が舌打ちした。オーラは明らかにイライラしてるな…。確かに二階堂のノリはうざいから気持ちはわからんでもない。

 二階堂は気づいてなさそうだしほっとこう。


「それにしても久しぶりだな辻本殿!今年はクラスが違うがここで再び相まみえるとは!」

「…そうだね!一緒に頑張ろう」


 辻原先輩が笑って返事をする。

 先輩、必死に取り繕ってますが、内心相当焦ってますね…。絶対覚えてなかったパターンだな。

 それに俺は忘れませんよ…。自己紹介のときの「はじめまして!」は完全に二階堂も対象に入っている言い方だったことを。

 てか二階堂って先輩だったのか。ネクタイの色でいつもは分かるけど二階堂…先輩はいまジャージだったからわからなかった。


「とりあえずさっさと練習しようぜ。時間もないし」


 田中はそういうと自分の席らしき場所に移動して座った。

 え、てか今時間ないって言ったよな。


「おい、田中、大会まで残り何日だ?」

「二週間」

「はぁ!?そんなの俺らの知らないゲームだったら大会で勝つなんて不可能だぞ!」


 焦る俺に対して田中は落ち着き払った様子でいる。


「大丈夫、ワルドラを知ってるくらいオタクなら、今回のゲームをやったことないわけない」

「で、何のゲームなんだよ」

「『フローガキング』だよ。やったことあるだろ?」

 

 俺は、運命的な偶然に驚愕した。

 なぜなら、今回のゲームは辻原先輩が前回の大会で2位なったものでもあり、

 

   前回の大会で、俺が優勝したものでもあったからだ。

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