聖女として召喚されたけど、必要とされなかった件
ある日突然光に包まれ、見知らぬ場所、見たことのない格好の人達に囲まれていた。
何かしたのか、直ぐに言葉が分かるようになり、
「聖女様、我々をお助け下さい。
魔獣に対抗する為、聖女様の御力をお貸りしたいのです。」
と、懇願された。
私知ってる。
今流行りの異世界召喚だよね。
お話しとして、大好物です。
でも、ここで調子に乗ってしまうと痛い目に遭うんだよね。
謙虚な心で、聖女ムーブしないと。
と思ってたら、いきなり武装した兵士達が乱入、召喚術士の一部を除いて皆殺し。
殺伐すぎるでしょ、異世界!
私も殺される?
良くて奴隷?
恐れ慄いていたら、なんと、普通に拉致被害者として、送り返して貰えるそう。
ただ、送還先の確認と魔法の準備の為、一月程掛かるそう。
その間お世話してくれるのは、禁書庫の管理人だというお爺ちゃん。
送還魔法陣も禁書庫の資料をあたって見付けてくれるらしい。
イケメン王子様じゃないのはガッカリだが、気持ちを切り替えよう。
それで、折角の異世界だし、滞在中に何かお手伝いをと、申し出たけど必要ないとの事。
えーと。
お世話になりっぱなしは心苦しいので、
聖女として、いつの間にか手に入れてた治癒の加護の活用しませんか?
管理人さん曰く、
「結構です。
魔獣に対しての対策方法は確立されております。
幾ら強力でも、短期間しか使えない力は、確立された手順や手段を崩す事になりますし、短期間しか使えない力を当てにする気持ちが芽生えたら困ります。
兵の足並みを乱す一因になりかねず、かえって邪魔になります。」
役に立つ異世界の知識なんかはどうでしょうか?
「こちらの世界の事も知らないのに何が役に立つのか分かるのですか?
社会情勢や論理に混乱をもたらす知識は困ります。」
えーと、例えばこんなのはどうでしょうか?
「民主主義?選挙?
王権国家ですが何か?
我等が国を否定するおつもりか?」
「料理の知識?
材料が全く違いますが?
片端からあたって、開発?
そんな贅沢は遠慮頂きたい。」
「化学の知識?
魔法理論が確立されていますが?」
…で、では、聖女ムーブ…じゃなくて、聖女として、社会の安寧の為に何か出来れば。
「命の尊さを訴えたい?
召喚者を殺害した件?
魔獣に対抗する為、全国民が一丸となっている今、余計な手間は割けません。
重犯罪者を養う余裕はございません。」
「第一、異世界人召喚は重犯罪です。
召喚は禁呪であり、使用者は極刑です。
国として召喚を否定しているので、
聖女様には活躍されては困るのです。
聖女様が活躍すれば、犯罪者が図に乗りかねません。
今後、同じ事を起こしかねません。
異世界の知識も表に出せません。
ですから、禁書庫の管理人である私がお世話係なのです。
役に立つと思われたなら、異世界に帰すなという強硬派がでてくるかもしれません。
何もされずにそのままお帰り下さい。」
こうして一月後、思惑が思いっきり外れされた私は、
何も成さず、何も残さず帰りましたとさ。




