目覚め2
「.........冥界...ってなんですか.....?魔界みたいな?」
初対面の怪しい人を前にして普通に会話のできる自分に驚きつつ目の前の情報源を頼る。急に現れた彼女を信用できないし、まだ驚きで鼓動が早い。
「冥界がわからない?冥府とかまぁ.....あの世とも言うらしいね。ニンゲンが死後に行く世界だよ。つまり君は洪水で流されて死んじゃってるね」
「そんな.......子供騙しのようなものはやめてくださいよ.........w血は通ってるしそれに......ほら!会話もできる....!」
文月は、死後は機会がプログラムを失うように生き物も"無"になると考えていた。それ故、周りの非現実的なことを前にしても自分が"死んだ"と認めることはできなかった。
「そんなこと言われてもねぇ。死んでるものは死んでるんだよなぁ.......あ、というかこんな所で固まってていいの?ここに居るとそろそろ面白くない生活が始まっちゃうけど?つまらない日常を送りたくなければ私に掴まってよ」
そう言って手を差し出してくる女性。言っている意味がわからなかったがここに居るのはまずいという解釈に至った文月は、「生きていればなんとかなる...!」と言った精神で女性の手を掴んだ。すると女性は満足気に笑って、
「君は賢いね」
と、言うと同時に体を引き寄せ地面を強く蹴り空へ飛び出した。
「これは飛んでるわけじゃなくて跳躍力が上がって長く空中に居ることができるだけ。途中途中で障害物を蹴ったりしないと飛び続けることはできないんだよ。」
そう言って器用に横に来た背の高い木を蹴る。大会で優勝するような体操選手でもこんなことはできないだろう、と文月は思う。
「これは.......夢......ですかね...?」
「さぁ?夢にしては鮮明だね」
女性は、文月が困惑しているこの状況を楽しんでいるかのように含み笑いを漏らした。