釣り2
「あの......これ、私何やってんですか......」
「え、釣りだよ釣り。釣れたもので君にあった鎌がわかるから」
何故か連れてこられたのは釣り堀。到着するなり竿を持たされ、具体的な説明も受けずに釣糸を垂らされていた。既に二十分この状態だ。一緒に来ていたピーターはいつの間にか消えていた。
「釣りって...ルアー?ってやつ、つけなくていいんですか?」
「...あ」
アクアが小さく声を漏らす。しかし、その次にボソッと漏らした声を文月は聞き逃さなかった。「やっべ」という一言。
「......この二十分返せ」
「ごめーん」
アクアがルアーを取りに行く。竿を置いて伸びをし、辺りを見渡す。客らしき生き物は多く、そこには明かな人外も居る。皆、明後日の入社試験に向けての準備なのだろうか、それにしては試験までかなりギリギリだと思うが。
「あれ、フヅキ様、アクア様はどちらへ?」
「あっえっあっ...はい」
急に声をかけられて驚き、声が裏返る。急にいなくなったピーターと、白髪の男性がそこに居た。
「えっと...ルアーを取りに行きました」
「そうですか、切れてしまったんですね」
「いや、もともとつけてなかったので...」
そう言うと白髪の男性が苦笑する。
「アクアさん、そういうとこありますからね。はじめまして、アクアさんの後輩、ベリー・オルドと言います」
シグナとはまた違ったふんわりとした雰囲気。ふんわりというよりも穏やかと言うべきか。少し白く濁った青色の目。少しクリーム色の混ざった白髪。少なくともアクアよりはいい人だろうと文月は思った。
「あの、ピーターさんはどこに居たんですか?」
「ベリーさんを見つけて話してたんです。」
そしたらかなり時間が経ってしまっていて、と申し訳なさそうに笑う。
「いやそれ職務放棄じゃ...」
「大丈夫です!アクア様はお咎め無しで許してくれるので!」
そこに反省の色は見られない。ピーターは主君に従順、というイメージがあったので少し驚く。アクアさーん、完全になめられてますよー。




