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婚約破棄する期間は、もう既に締め切りました!  作者: 無乃海
本編終了後の番外編
58/66

前日譚7 俺の婚約者が可愛過ぎて

 また今回、別の人物視点となります。今回はまた、前日譚に戻ります。

 麻衣沙から漸く、全てを打ち明けられた俺は、樹にも相談することにしたのだ。本来ならば樹は、瑠々華さんから聞くべき話だが、例のあの娘が絡むかと思うと、気が気ではなかった。それに、この前の麻衣沙が男に絡まれた事件は、本来はヒロインに起きるイベント…だったらしい。要するに、ヒロインが…ヒロインらしくなくとも、ヒロインの代わりのような存在が居れば、例え…悪役令嬢キャラであっても、イベントが起きるみたいだな…。


こういう事実を聞かされ、もう一刻の猶予もない…と判断した。この国での斉野宮家の実力は、圧倒的な権力を持っている。幸いにも俺はゲーム設定と違い、その斉野宮家の息子と親友だ。()()()()()()()()か。多少の使いっ走りをさせられている節は、あるのだけれども。それを含めても、案外といい奴ではある。腹黒い部分がある為、扱いには気を付けなければいけないが…。


 「ああ…。ルルには一応、乙女ゲームの話を聞いたよ。麻衣沙嬢が岬に話をしたということは、岬は…信頼されたのだな。」


俺は早速、麻衣沙から聞いた前世の話を、特に…乙女ゲームの話を、樹に相談しようとした。しかし、彼は彼で…瑠々華さんから聞いたという。何だ…。心配する必要が、なかったな。彼ら2人の関係も、少しずつ…改善されているようだ。


 「樹も…だろ?…良かったな、瑠々華さんに信頼されて。」

 「うん、まあ…俺の場合は、無理矢理…聞いたようなもの、だけどな…。」


俺が、良かったな… と伝えれば、樹は眉を下げて、歯切れ悪く…真実を告げたのである。…なるほど。瑠々華さんは…言わざるを得なかった、ということか。しかし俺が思うに、瑠々華さんは樹を、ある意味…神聖化してると思う。その本当の意味するところは、樹のことを特別に思っている、ということではないのだろうか…。


 「それでも、彼女が語ったのであれば、樹を信頼しているのだろう。後は樹が、それにどう応えていくか…ということが、重要だと思う。」

 「そうなの…かな。きっとそのうちにNewヒロインが現れるから、俺の恋を応援する…というような内容を、ルルから言われたのだが……。」


……あ~~。そういうことか。なるほど、瑠々華さん…らしいな。そう…来るか。うむ…。俺の相手が麻衣沙で…良かったな。俺だったら、そういう風に伝えられて、耐えられる自信がない…。樹、頑張れよ…。


 「…はあ~。どう行動すれば、分かってもらえるのかな…。」

 「……お前、きちんと言葉にして、伝えているのか?…瑠々華さんみたいな思い込みの激しくて、恋愛ごとに疎い人間には、ハッキリと言葉にしなければ、絶対に()()()()()()()()()()()ぞ?」

 「……っ!?………」


これは…はっきりと言葉にして、いないのだろうな…。樹のことだから強引でも、違う方面に向けているのだろう。樹は所謂…格好つけタイプだから、言葉よりも行動で実行している節があるようだ。しかし、瑠々華さんみたいなタイプには、それでは通じない。


自分に自信がない人は特に、自分はモテないと思い込み、どんなにアピールされても…スルーしてしまう。その上、恋愛に疎い場合はハッキリ言葉に表しても、冗談だとか気の迷いだとか、相手にされない可能性がある。


樹にそれを伝えれば、頭を抱えていた。まあ、そうなるよな…。ハッキリと言葉にして態度にも出すうちに、何時(いつ)かは…樹の気持ちも伝わる筈だ。俺も麻衣沙に猛アピール中だから、恋愛面は…手伝って遣るつもりはない。瑠々華さんは案外と、自分の本当の気持ちに気付けば、簡単に…堕ちるかもしれない。それでも、それまでの間が大変だろうが…。


 「……コホン。(※咳払い)今は…乙女ゲームの方を、至急何とかしよう。あの女…ヒロインのことだ、何をするか分からない。麻衣沙嬢の強制的なイベントの件もあったし、俺達…攻略対象同士も、結束しなければならないかもな…。」

 「…ああ、そうだな…。麻衣沙のあの事件が、俺ルートのイベントだと言われた時は、驚いたよ。ヒロインの代わりに麻衣沙が選ばれたのは、間違いなく…俺が、麻衣沙のことを想っている…からだろうしな…。」


麻衣沙が街で、知らない男に絡まれた事件は、俺を攻略する為のイベントかもしれない。そう言われた俺は、暫し固まった。俺と麻衣沙は婚約者同士だし、イベントなど必要ないというのに。ゲームの強制力はない…としながらも、イベントだけは似た形式で起こる…という状態で。何とも…腹立たしく感じた。


樹からも、瑠々華さんが起こしたと思われるイベントを、聞かされた。彼女の場合は、樹ルートでの流行りの茶店に行く…というイベントと、隠しキャラであるらしい光条ルートの、ダンス教室でペアになるイベントを、彼女は熟しているという。


なるほど…。樹の機嫌が物凄く悪い時があったのは、こういう事情が絡んでいるらしいな…。女性を口説くのが趣味のような光条が、瑠々華さんに接近して来ることは、樹としても…()()()()()()()()だろう。






    ****************************






 悪役令嬢キャラの女性4人で街に行く…と、麻衣沙から事前に知らされた俺と、彼女達に付けている護衛により、彼女達が街に行く計画を立てたと報告を受けた樹は、各々の婚約者を当日朝に迎えに行くことにした。俺は先日の一件が頭を(よぎ)り、俺が麻衣沙に同行すると言い出した為、樹も同行すると言い出したのである。


 「岬が彼女達に同行すると言うならば、俺も一緒に行くよ。岬が麻衣沙嬢を心配なように、俺もルルが心配だ。但し俺はルルを、岬は麻衣沙嬢を迎えに行き、待ち合わせ場所まで強引に同行すればいい。ルル達に内緒で行動されたら、()()()()()()()()()()し、これが一番良い方法だろう。」

 「ああ、そうだな。樹の言う通り、彼女と共に行動すれば、危ない目に遭わないようにと、俺が守ることが出来るな。」

 「その通りだよ。…それに、他の悪役令嬢キャラの女性達や、他の攻略対象達にも会える機会だし、一石二鳥だ。この機会を逃すのは、惜しい。」


それも…そうだな。俺達を含めて攻略対象キャラ達は、前世の記憶はないらしい。当然、乙女ゲームの話も知らない。矢倉という人物だけは、幼馴染から聞いているようだが、彼とも他の攻略対象とも、俺と樹は接点がない。麻衣沙や他の女性達とは、まめに連絡を取り合っており、今回は女性4人が全員集まるらしく、この機会に俺達男性陣も…()()()()()()()()()のが、最も好ましいのである。


こうしてあの日の朝、俺は予定通りに麻衣沙を迎えに行った。当然何も知らせずに迎えに行けば、麻衣沙は…俺の顔を見て固まっていた。…可愛いな。以前は全く反応が見られなかっただけに、こういう可愛い反応をされてしまうと、嬉しくて仕方がない。それだけ意識してくれるようになった、ということだからな。


 「…何故、岬さんが…迎えに来られましたの?」

 「樹は瑠々華さんを、俺は麻衣沙を迎えに来た。今日は、例の乙女ゲームの登場人物達と、会う予定だったな。俺にも、紹介してくれないか?」

 「……紹介?…エリさんと美和乃さんを…ですか?」

 「いや…彼女達も含めて、他の登場人物にも会ってみたいと、そう思ってね。」

 「もしかして……。攻略対象側として、何か…対策されるおつもりですの?」

 「そうだな。樹も出来れば、話し合いたいと言っている。瑠々華さんのことが、心配みたいだな。俺も…麻衣沙のことが、心配だ。また街に出て行く…と、君からメールで知らされた時、心臓が飛び出すかと…思ったんだぞ。」

 「あ、あの時……。岬さんが来てくださらなければ、わたくしもどうなりましたことか…と考えますと、正直…まだ怖いですわ。ですが、今回は他にもおられますし、わたくし1人での行動は、絶対に致しません。」


俺は、麻衣沙と向き合って話していた。途中で席を立ち、麻衣沙の隣に座り直す。彼女は俺が隣に座った途端、急に居心地が悪そうに…ソワソワし出したのである。今現在は彼女の家の客間におり、彼女もこれ以上逃げ場がない。俺は…麻衣沙の手を取り、彼女の目を見つめるようにして、ゆっくりとした口調で話し掛ける。


 「それでも…心配はする。あんなのは、二度とご免だ。麻衣沙、頼むから…こういう時は、もっと俺を頼ってくれ。これでも俺は、君の婚約者なんだから。」

 「………岬さん。」


俺の言葉を理解したのか、彼女の頬が徐々に赤く染まっていく。彼女は何度か何か言おうとして、口を開いては閉じ…の繰り返しであった。…本当に、可愛いな…。俺は、この場が2人っきりなのを良いことに、彼女を抱き寄せる。彼女の驚く顔が一瞬見えたけれど、構わずギュッと抱き締めて。


俺の胸の中で麻衣沙が息を呑み、一瞬にして彼女の身体が強張る。俺は彼女の肩に触れると、俺の身体から少し離し……。顔を近づけた時、彼女が大きく目を見開いていて。彼女の唇に触れた時、何となく甘い匂いが…彼女から漂って来て、俺は…頭がクラクラしそうになる。彼女の自宅でなければ、良からぬ事を…考えてしまいそうである。これ以上は…危なかったな…。


俺が顔を離すと、彼女の顔は真っ赤に熟れている。目が合えば慌てて逸らし、唇を両手で包むように押さえて。今の麻衣沙は、瑠々華さん並みの…慌てぶりである。俺も彼女の家の客間で、こういうことをするつもりは…なかった。麻衣沙の戸惑う姿が愛らしくて、つい…手を出してしまったな…。


でも、嫌われては…いないよな…?……彼女の様子をチラッと伺うと、感触を噛み締めるような素振りで、頻りに…自分の唇を気にする様子を見せ。俺も…彼女の唇が甘かったなあ…と、脳内で先程の記憶がリフレインして。


……うっ。()()()()()()()()(つら)い……。

 今回は岬視点の前日譚編となりました。本篇では飛ばされた内容の部分を、補足した形となります。


本編でも、移動直前街道中に、樹がルルに言い寄りましたが、岬も同様に麻衣沙に言い寄っておりました…。麻衣沙達の方が、一足先に進んでいたのですね…。



※この作品が完全終了する頃に、Twitterの方で登場人物に関するアンケートを実施しようかと、計画をしております。多分、人気度に関するものとなる予定ですが、まだ考慮中でして。実施した際に1人でも多くの方々に、ご参加していただけましたら幸いです。その際にはご協力のほど、よろしくお願い致します。

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