表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄する期間は、もう既に締め切りました!  作者: 無乃海
本編終了後の番外編
53/66

前日譚4 兄と慕う幼馴染への想い

 今回は、相良視点での過去のお話で、瑠々華達と、知り合う前となります。


『前日譚2』と対になるお話です。

 俺には、3歳年下の幼馴染がいる。家が隣同士ということもあり、よく彼女は俺の家に遊びに来ていた。幼い頃の俺は当初、彼女を妹のように見ていたのは、事実だ。しかし、いつ頃からだろうか。彼女のことを、()()()()()()()()()()()()()のは…。気が付くと俺は、彼女の姿を目で追うようになっていた。


俺は…彼女から距離を置くようにしたというのに。彼女は、俺の気持ちなどお構いなしに、俺の部屋に1人で遊びに来ては、勉強を見てほしいと、堂々と部屋に入って来る。俺は、徐々に少女らしくなっていく彼女を見ては、1人…戸惑っていたというのに。


俺は中学生頃から、よく女子に告白されるようになった。まあ、見た目は悪くない方だと、自分でも思うけれど、幼馴染からそういう風に意識されないのは、意味がないだろう……と。同年代の他の女子とも付き合ってみたが、結局最終的には振られてしまった。「右堂(うどう)君。誰か…他に、好きな子がいるでしょ?」と、言われて。俺はやはり…英里菜(えりな)を、意識しているのか…?


その頃の俺は中学生だったが、彼女はまだ…小学生なんだよ。意識はしているかもしれないが、別に…他意はない。そう楽観的に思っていたのだが、ある頃から彼女が俺を無視し始めた。最初は偶然かな…と思ったが、態と無視している…ようである。但し、目が合えば、挨拶は普通に返してくれる。それ以上、話掛けて来ないだけで…。あれだけ、毎日のように押しかけて来たのに、今では…全く来なくなっていた。勉強も1人でしていると、彼女の弟や自分の弟から聞いた。俺達が全く話さなくなり、弟達は逆に心配していたようだ。


俺も最初は、「そういう年頃なんだろう。」ぐらいにしか思っておらず、深刻には考えていなかった。しかし、こちらから話し掛けても、彼女は話を直ぐ終わらせようとするし、不自然な言動が目立っている。おかしい…。何か…怒らせるような態度でも、取っていただろうか、俺は。…いや、ここ最近は…殆ど真面な話も出来ていないし、怒らせる以前の問題だな……。


そんな時、彼女の口から…思いがけない言葉を、聞かされることになる。彼女は…気になる男子がいると、俺に告げたのだった。然もそれは、俺の後輩で…良く知る人物で。「まだ…早いんじゃないのか?」と助言するのが、精いっぱいだった俺。その後輩は悪い奴ではないが、お前が付き合うのは…まだ早いだろ?


そういう意味で、俺は…忠告したのだが。俺のその忠告に、彼女はケラケラと笑いながら、「別に、付き合う訳じゃないんだよ。」と、(ただ)の片思いだと告げるのだ。俺は冷静に振舞うのが、やっと……で。


一時期はこの事実に、ショックを受けていた。その時になって俺は…漸く、自分の気持ちに気付く。彼女がどう思おうと、俺は彼女が好きなのだ…と。彼女には、まだ決まった相手が居る訳ではなく、これは…()()()()()()()()()()、チャンスでもあったのだ。


そう決心してから、俺の迷いは一切消えた。彼女からしてみれば、先に距離を置いた俺が、また急接近して来て、戸惑ったことだろう。その証拠に、彼女は物凄く複雑な表情をしていた。それでも一度気が付いてしまうと、諦める気には中々なれなくて、未練がましく彼女に迫る俺は。彼女には…どう映っているのだろう?


高校3年生で大学に進む俺と、中学3年生で高校に進む彼女は、受験勉強を一緒にする丁度良い理由となった。思いやりのある彼女は、俺の受験の負担になりたくないと、身を引こうとした。彼女が俺ではない誰かと、一緒に勉強すると考えるだけで、俺にはその方が辛く、勉強に集中出来そうもない。それに、彼女と2人で勉強することで、逆に身に入らないような程、俺は…中途半端な人間ではない。


今後少しでも共に、居られる可能性があるならば、大学ぐらい同じ所に通いたい。何処(どこ)の大学を受けるのか…と聞けば、自宅から通える範囲の 秀南大(しゅうなんだい)で、彼女が行きたい学部が唯一あるらしい。そういう理由があるのならば、彼女の決意は固いことだろう。彼女は案外とこうと決めれば、てこでも動かない頑固なところがあるからな。


秀南大ならば、俺の行きたい学部もあり、俺にも都合が良い。俺が大学4年生の時に、英里菜は入学することになる。俺は特別行きたい大学はないし、幾つかの大学を視野に入れている。最終決定にはまだ間に合うし、秀南大ならば妥当だろうな。俺が秀南大に入学後、勉強を教えてほしい…と、英里菜が言ったのだから、冗談だと済ませないように、責任を取らせよう…。


そうして俺は秀南大を受験し、無事に合格した。後は、彼女が高校に合格した後、告白をしよう…と思っていた。何時(いつ)、告白しようかと思ってはいたが、まさか…()()()()()()()()()()()()()とは、予想外だったな…。






    ****************************






 中学卒業後、俺が先月まで通っていた高校に、無事合格した英里菜。彼女から合格したと連絡を受けた俺は、「おめでとう」と伝える為、彼女の家に飛んで行く。彼女も俺が大学に合格した時に、お祝いを言いに来てくれたし、俺もそのつもりで会いに行ったのだが…。


 「メール、見たんだよね?…態々、来てくれなくても良かったのに。」


此方(こちら)の気が抜けることを、言って来る彼女。俺を見た途端、意外そうな顔をして。一体、何なんだ…。折角、一緒に祝おうと思っていたのにな…。結局、小母(おば)さんがご馳走を作って用意してくれていて、俺まで…英里菜の家でご馳走になったのだ。その日は特に、何も言わずに帰ることにした。


その後、英里菜の高校入学の準備の手伝いをしに行ったら、彼女はふと思い出したように、意外な話をして来た。俺が堀倉学園付属大に通うと、何故だか信じ込んでいたようで、アパート探しをしなくて良いのか、と訊くのだが。…はあ?…何で俺が、秀南大以外の大学に行くことに…なっているんだ?…それが…何で、堀倉学園付属大なんだか…。俺が行きたいとは、思ってもいないのに。あの大学は、お金持ち学校みたいなものだし、学費もバカ高くて、親に迷惑を掛けたくない俺は、元々避けていたというのに。


 「…じゃあ、何処の大学に入学したの?」

 「何処って…。秀南大に決まっている。他の大学を受けたとは、俺は一言も言ってないぞ。」


俺が秀南大に行くと話した途端、彼女は目を点にして、呆然とした。そんなに驚くことか?…その時、不意に俺は思い出した…。まさか、アイツに告白されて、付き合うことになったのか?……だから、俺が…邪魔になったのか?


 「……英里。お前、まだアイツのことが…好きなのか?…中学に入学したばかりの頃、俺の後輩を好きになった…と、言ったよな?」

 「…あ~、あの先輩ね。実は私、相良(すぐり)君とは()()()()()()()()()、他に好きな人が出来た…って、言っただけなんだよね…。ごめんね、心配掛けて。」


…はあ?!…俺と…距離を置く?…その為に、アイツの名を出した?…アイツのことは、何とも思っていない?…いいや、それよりも…距離を置くとは、一体……。


 「…俺から…距離を置くとは、どういう意味なんだ?」

 「…相良君には、何時でも可愛い妹だと、思っていてほしいから…だよ。」

 「………。何で…妹なんだ。実の兄妹でもないのに、妹だと思うかよ…。」


…可愛い妹と…思ってほしいのか?……俺を…兄だと思っている?…俺は、英里菜を妹だと…思っていない。彼女を…1人の女の子だと、思っているというのに…。


 「……酷い…。相良君にとって、私は…妹にもなれないの…?」

 「……えっ!?……い、いや、ち、違うっ!…そういう意味じゃないっ!…俺は…お前を、恋愛対象に見ていて…。…英里。俺と…付き合ってくれ。」

 「……えっ?……」


彼女を妹とは思っていない、俺が言った言葉が、突き放した言葉に聞こえたらしくて、彼女は…俺が拒否したと、勘違いしたようだ。…ううっ。完全に…()()()()()()()()な、俺は…。彼女は泣きそうな顔をしたので、慌てて弁解することにした。俺は…勇気を振り絞り、何とか…彼女に告白をした。


俺の告白に、暫し目を見開いて呆然としていた彼女は、ポロポロと涙を流し始めたのだ…。ギョッとした俺が、今度は呆然とする番で。…ええっ?!…もしかして…嫌われたのか、俺……。


 「…えっ?!…英里!?……何故…泣くんだ…。俺が…泣く程、嫌いか?…お前に嫌われたら、凹む…。」

 「……なっ?!…ち、違うよっ!……相良君のことは、嫌いじゃない。これは…嬉し涙って…言うか、その……。」

 「……っ!……それは、OKということ…か?」

 「………うん。」

 「……はあ~~。気が抜けた…。断られたのかと、思ったよ…。」


彼女が突然泣きだして驚いた俺は、断られるかもしれない…と、如何(どう)やらアワアワしていたようだ。だけど、嬉し涙だと言われると、俺も心底ホッとすると同時に、嬉しさが込み上げて来る。そんな俺を見ていた彼女が、泣き顔で笑い出す。


……おい。いい度胸だな、英里菜。お前が…そういうつもりなら、俺も…行動に出てやる……。そう決意して、俺は彼女の顔に自分の顔を近づけ、チュっと音をさせて、彼女の初キスを奪い……。


 「……相良君って、意外と…手が早いのね…。」


彼女からそう言われるのは、正直…心外だ。俺は、彼女が高校に通い出してから、手順を踏んで告白しよう…と、思っていたのに。距離を置きたいとか、妹だと思っていてほしいとか、色々と()()()()()()()()()()()()上、告白する前から振られたと、焦っていた俺は…。ロマンチックとは逆の形で、告白してしまった…。


後悔したくないから、もう我慢するのは止める。これでも、制御していた俺には。彼女にそれを、ハッキリと理解させる為に。これくらいは、許してほしい…よな。

 英里菜を意識し始めた切っ掛けが、含まれた内容となります。若干、話し口調など会話内容が違いますが、文字数の関係で変えました。どちらかと言えば、此方の方が彼の口調かと。前日譚2では、彼女が脳内で自分流に変換した…と思ってもらえれば、分かりやすいでしょうか…。


初めての相良視点なので、生真面目さはあまり話に出て来ませんが、一緒に勉強しようとするところが、真面目ということでしょうか…。本編では…彼の出番は、少なかったなあ…。トコトン、影が薄い人でした…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ