前日譚3 幼馴染の幸せを守りたい
今回は、美和乃視点での過去のお話となります。
瑠々華達と、知り合う前のお話となります。
私は幼い時に、前世の記憶を思い出したみたいなの。けれど、幼かった私はまだ理解しておらず、幼馴染の彼には、おかしなことばかり言ったようなのよね…。「そういうことは、他の奴らには絶対に言うなよ。」と、彼からは時々注意されていたのよ。きっとその時から、彼は…心配してくれていたのだと思う。
私も、少しずつ大きくなるにつれ、徐々に…自分が何者なのかが、理解出来て…。要するに…転生者だったんだね、私は。然も、前世の世界と今の世界は、如何やら違う世界みたいなんだよね…。微妙に色々と細かいことが、違っているんだもん。そう言ったら、呆れられたんだよ、彼には。
「…お前なあ。普通は…自分が転生者だという事実を、必死で隠すもんだろ…。いくら俺が以前から知っていたって、そういうことは…気軽に話すものでは、ないんだからな。」
ある日突然、私に…決定的なことが起こったんだ。私が小学生の頃に、聖 ちゃんが転校するという記憶を、思い出したのよ。何年生の時かは、よく覚えてないんだけど、乙女ゲームの情報だから、間違いないのよねえ。
「……はあ?!……此処が…乙女ゲームの世界だって?!……マジかよ。聞くところに依れば、そう話す転生者もいる…らしいとは、噂には聞いたことがあるけどさ…。まさか、自分の幼馴染が、乙女ゲームだとか…言い出すとは、夢にも…思わなかったなあ…。」
「聖ちゃんは…信じてくれるの?…そうなんだよ、乙女ゲームなんだよ。実は…私が一番、驚いているんだよね…。乙女ゲームの世界に転生するお話は、前世でも色々とあるけど、まさか…自分がゲームの登場人物になるなんて、夢にも思ってなかったんだよ。それに、自分が悪役令嬢でなければ、傍観出来たのに…。」
「…おい、その悪役令嬢って…何なんだよっ!…普通は転生するんなら、主人公とか脇役とか…だろ。マジで…そうなのか?」
「うん。聖ちゃんはヒロインの攻略対象で、美和乃は…聖ちゃんルートで出て来る、歴 とした悪役令嬢でね~。初めに、聖ちゃんが街の小学校に転校して、その後1人になった美和乃は、聖ちゃんに会いに行くんだけど、聖ちゃんはヒロインと仲良くなっていて、美和乃はその邪魔をしに行く、というキャラなんだ~。」
「……はあ?!……ちょっと待てっ!…情報量が多過ぎっ!…混乱しそうだよ。整理したいんだが、俺が転校っていうのは…何のことだ?…俺、転校する予定なんて、全く…ないぞ。」
私が悪役令嬢だと言った途端、聖ちゃんが慌て出した。信じてくれようとするのは嬉しけど、聖ちゃんも関わる話に、混乱しちゃったみたい…。あれ?…転校する予定がないって、どういうことなの?…転校は…しないの?
「あれっ?…小父さんの仕事で転勤になって、聖ちゃんも転校する筈では…?」
「…いや、何も…聞いてないよ。それも、乙女ゲームの情報なのか?…今日、父さんが帰って来たら、一応確認してみる…。じゃあ、次に…攻略対象というのは、俺が…ヒロインと恋愛するとか…なのか?」
聖ちゃんは元々、乙女ゲームには興味がない。というより、今の私も聖ちゃんも、まだ小学生だったから…。この世界にも乙女ゲームはあるけど、流石にまだ遊んだことは、ないんだよ。但し、男子が遊びそうなゲームならば、聖ちゃんと遊んだことはある。ゲーム的には、前世とあまり変わらなかったけれど、どこか違うところとか、あるのかな?
聖ちゃんも流石に、自分が攻略対象だったこと、気になるみたいだね。聖ちゃん、もしかして…誰か気になる子でも、いるのかな?…小学生と言えども、聖ちゃんは既にイケメン候補だし、クラスの女子にも…既に狙われている可能性が。
「うん、そうだよ。攻略対象は何人かいるけど、ヒロインが聖ちゃんを選べば、そうなるよ…。聖ちゃんの引っ越す家が、ヒロインのお隣で、幼馴染の関係から始まることになるんだよ。」
「………。俺の幼馴染は、美和だろ…。これも…引っ越した前提だよな。じゃあ次に、俺ルートで出て来る悪役令嬢って、どういう意味だよ?」
「それはね…。ヒロインが聖ちゃんルートを選ぶと、私はライバルとして登場するんだよ。聖ちゃんを奪っていくヒロインを、私が邪魔したり虐めたりする役で、聖ちゃんルートに限っての悪役令嬢、ということかな…。」
「………。」
…あれっ?…私は出来るだけ、分かりやすく説明したつもりなんだけど、何故か…聖ちゃんは、死んだ魚のような目をしていた。…え~と、どうしたんだろう?
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その後も、聖ちゃんからは色々と質問された。勿論、乙女ゲームについての情報だよ。聖ちゃんルートの悪役令嬢がどうなるのか…とか、聖ちゃんがヒロインと出逢うイベントなど、本当に根掘り葉掘り…訊かれたのよ。…ふう~。説明するこちらの方が、疲れたわ~。
聖ちゃんは早速、自分の父親に転勤するのか訊いたみたい。何でも、小父さんとは同僚の家族持ちの人が、転勤する予定らしくて。ところが、その人の子供の1人が病気がちで、もしかすると…その人が断るかもしれない、という話になっているようで。そうなれば、転勤の話が聖ちゃんのお父さんに来る、という状態みたいね。
その後、聖ちゃんは裏で、色々と動いていたらしいのよ。自分の父親から、転勤先の情報を手に入れて、転勤先には大きな病院があるか…とか、転校する学校は何処か…とか、色々と自分で調べては、父親に報告したりしていたみたい。転勤する家族が抱えてる問題を、見事に1つ1つ解決したんだよ。ある意味、凄いなあ…。
まさか、聖ちゃんがそこまでして、転校したくないなんて、思わなかったけれど。自分だけ転校するのも、確かに嫌だけど。余程、親しい友達と別れたくなかったのかな?…それとも…誰か気になる人でも、いたりして…。
実は、私も本音では、心の底からホッとしたんだよ。だって…聖ちゃんが、私の傍から居なくなっちゃったら、私は誰に相談したらいいのか、分からないんだもの。前世の事情も乙女ゲームの設定も、聖ちゃんだからこそ、安心して相談出来たんだよ…。今更、私の前から消えられても、困っちゃう…。聖ちゃん、カムバックっ!
…いや、カムバック以前に、俺…居るからっ!…っていう聖ちゃんの声が、聞こえそう…。ヒロインの邪魔をするつもりは、なかったのになあ…。現世の私は寧ろ、ヒロインの応援をする自信が、あったのに…。私はヒロインの味方で、絶対に邪魔をする気はなくて。聖ちゃんのことも大好きだから、幸せになってもらいたいの。唯の幼馴染である私を、本気で心配してくれる聖ちゃん。馬鹿なことをする私を、自分の事のように考える聖ちゃんには、心優しいヒロインと…お似合いだよ。
だから私は、2人の仲を応援するんだ。私の代わりに、ヒロインを虐める人が存在するならば、私がヒロインに加勢するんだもん。私の大事な大事な聖ちゃんを任せられるのは、ヒロインぐらいしか…今のところ、居ないんだからね。ならば私は、何時でもヒロインの味方で居よう。そう…決意したのに。
その後、聖ちゃんの作戦は成功し、問題が解決した同僚と家族は、予定通り転勤して行ったらしい。これで…聖ちゃんの転校は、無くなったんだね。果たして、これで良かったのかな?…そう思うものの、彼自身が望んだことなんだし、仕方がないよね…。ヒロインとの出逢いは、きっと今後もある筈だわ。聖ちゃんは攻略対象なんだし。だけど私は、忘れていた。他にも攻略対象が…居ることを。
よく考えてみれば、この時に聖ちゃんが引っ越さなければ、ヒロインにとっては…あまり意味のないことを。他の攻略対象は聖ちゃんとは違って、相当なお金持ちなんだよね。乙女ゲームの販売時に、『幼馴染を選ぶのか、将又、お金持ちの令息を選ぶのかは、貴方次第』と銘打って、発売していたような気が……。
…しまったあ~!…そう気が付いても、後の祭りだね。私、完全に忘れていたよ。他の攻略対象の存在を…。誰だって、少しでも裕福で優しい人を選びたいよね?…ヒロインに選ぶ権利が与えられた以上、聖ちゃんを選ぶとは…限らないんだよ…。聖ちゃんは、そういう事実を知らなかったのに。その事実に気が付いたのが、大学を受験する直前だった。高3になって、何処を受験するか決める時になってから、なんだよ。私、思い出すのが遅すぎたよ…。
「……はあ~。美和はまた、何か…おかしなことを、考えてるだろ?…受験が終わったら話を聞いてやる。それまでは、受験勉強に集中しろよ。…ほら、ここ…。間違ってるぞ。」
あの後も、聖ちゃんとの関係は、全く変わっていない。聖ちゃんは相変わらず、女子にモテモテだけど、特定の彼女は…いないみたい。中には、私と聖ちゃんの仲を疑う人もいたけど、私達は主に…私の悩みを相談するような、関係なんだよね…。要するに、唯の幼馴染のままなんだよ。私では、聖ちゃんの彼女には…慣れないんだもん。大学に入学したら、聖ちゃんはヒロインに夢中になる筈だもの…。
ところが、彼は…私と同じ成井沢大を受験して、合格した。…あれっ?…堀倉学園付属大、受けてないの?…成井沢大は、滑り止めじゃないの?
「美和。お互いに無事に大学生となったし、そろそろ俺達…付き合おうか?」
…はい?…今、何て…言ったの?…私と聖ちゃんが付き合うの?……何で?
「何でって、そんなの…決まっているだろ?…俺は、美和が好きだ!…美和は俺のこと、どう思っているんだ?」
「……へっ?!…どうって…好きだけど……。」
「んじゃ、好き同士だってことで、今日から…恋人同士だなっ!」
……へっ?………どうして…こうなった?!……ううっ。まあ、嬉しいけどね…。こうして、付き合うようになった私達…なのでした!
矢倉君との馴れ初め、というところですね。
初めての美和乃視点でしたが、ルルと異なり、一般人らしい砕けた口調となってます。ちょっと行動が…ルルに似ていますが、筆者的には…微妙な違いがあります。ルルが語りよりも、美和乃の方が落ち付いた感じになりました。
※昨日と今日で、英里菜・美和乃の心情を書きましたので、次回以降には、相良・聖武の方も書きたいと思っています。




