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婚約破棄する期間は、もう既に締め切りました!  作者: 無乃海
【後半】 物語は佳境に入ります…編
47/66

第39話 私の一押しキャラは…

 34話からの引き続きです。(同一日。)いつも通り、主人公視点となります。


前回からの夢のお話(?)が、前半途中まで続いております。

 「僕は…そんな酷いこと、出来ないよ。ルルは大事な……お友達だよ。そんなルルに、『婚約破棄』する為に『婚約』なんて出来ないよ。」

 「あのね。『こんやく』は、しなくていいんですの。『こんやく』は、仲良くする為のものだもの。『こんやくはき』だけでいいんですの。」

 「………。ルルは…僕のこと、そんなに…嫌いなの?…どうしたら、好きになって…もらえる?」

 「…?……え~と、樹さんが、私に()()()()()()()()のなら、嫌いではないですの。樹さんを好きになるかは分からないけど、私は…優しい人が好き。誰にでも優しくして、困っている人にも助けてあげて、絶対に…叩いたり殴ったり怒鳴ったりしない人!…そういう人が好き!」

 「……そうなんだね。…分かった。僕、将来はそういう人に…なるよ。頑張ってルルに認められるような、ルルを守れるような人になるから、僕が…ルルの好きなタイプになったら、僕のこと…嫌わないでくれる?」

 「……うん…。それなら…いいよ!…樹さんのことは、本当は…怖かっただけだから、嫌いじゃなかったんだもの。分かってくれて、よかったあ~。」

 「………。ごめんね、ルル……。」


幼い私は、婚約のことをまだ理解できておらず、婚約をしないまま、婚約破棄すればいいと、無茶苦茶なセリフを吐いておりました。樹少年は辛そうなお顔で、どうしたら好きになってもらえるのか、問われたことに対し。幼い私は、何故か…優しい人に拘っていて。今の私の周りには、暴力的なお人は誰1人おられませんのに。前世の私の周りに、暴力的なお人がいらしたのかも、しれません。幼い私は、前世のことをまだ覚えていて、乙女ゲームの樹さんと()()()()()()()()()()…。


樹少年は最後に、悲しそうなお顔でぽつりと小さく呟いて。もしかして、この時に婚約を、決意されたのかもしれません…。婚約破棄をする為には、婚約をする必要がありますもの。樹さんは幼い時から、既に聡明なお人でしたから、私のお話する内容を、よく理解されておられた筈ですし…。この時既に優しい樹さんに、更に優しくして…とは、私は幼かったとはいえ、残酷です…。


今まで樹さんは、私との約束を守ってくださっていたの?…それなのに、私は…。怖がってばかりで、樹さんと面と向かって、この世界の樹さんとして見ようとは、して来なかったのですね…。私は本当に…愚かでしたわ……。


その時、遠くで私を呼ぶ声が、聞こえて来ました。微かに…私の名を、呼んでいると聞こえるぐらいですのに、私には…自分が呼ばれていると、理解出来たのでしたわ。…誰?…誰が、呼んでおられますの?…この声は……。


段々と目の前が暗くなり、辺りが真っ暗になる頃には、遠くから細くはっきりと、光が溢れて来て、その声の方に私は歩いて行き。目を開けると、そこはまたベットの上でした。私は先程の夢と同じく、ベットの上で寝ていたのです。…あれっ?…また夢…なの?…それとも、此処は……現実?


周りを見渡せば、夢と同じ…見覚えのあるお部屋でした。此処は…斎野宮家のお客様用の寝室です。私は過去に何度か、この部屋にお泊りしたことがありますのよ。あの夢も…私の過去であり、現実でしたのよ。あの時も、このお部屋で目覚めたのですもの…。何故、忘れていたのでしょう、私は…。


身体を起こしてベットから降りたところで、部屋の扉が開いて入って来たお人と、目が…合いましたのよ。あの時と同じく…。彼は無言のまま、大股で私の方へ歩まれると、私をギュッと抱き締められたのです。私は瞬時に固まりましたけれど、私を抱き締めた彼の身体が、小刻みに震えておられるのを知って…。私の緊張がゆっくりと解けて行くのを、感じたのでしたわ。


 「…ルル……。良かった…。君も、蛇に噛まれたのかと……。毒蛇だったら、どうしようかと……。君を失うなんて、絶対に嫌なんだ!…それぐらいならば、俺がどうにかなった方が、マシだ……。」


私の耳元で、血を吐くような低い声で呟かれ、()()()()()()()混じっているにも関わらず、私は…ゾクゾクと興奮するような気分でして…。とても…嬉しかったのですわ、私は。樹さんのセリフが、頭に浸透して行くうちに、時間を掛けて漸く…意識を失う前の記憶が、戻って参りましたのよ。ハッとして、樹さんから身を離しながら、彼の肩を目視致しまして。グルグルと包帯で巻かれた状態ですので、治療はされたのでしょう。毒蛇では…なかったの?


 「私は…大丈夫でしてよ。それよりも、樹さんは…大丈夫でしたの?…私、貴方が毒蛇に噛まれたと勘違いして、ショックで…気を失ってしまったみたいです…。逆に、ご心配をお掛けしたようで、申し訳ありません…。」






    ****************************






 「俺は大丈夫だよ。羽生崎教授が蛇に詳しかったお陰で、直ぐに毒蛇でないと分かったし。ルルも蛇には噛まれていなくて、気を失っただけだと、教授の婚約者が女医さんで、診断もしてくれたんだ。」


…えっ?…羽生崎教授=蛇に詳しい人?…教授の婚約者さん=女医さん?…然も、私の診断?…何やら…私が気を失っている間に、色々とありましたようですね…。樹さん、本当に申し訳ございませんわ…。怪我をされておられます…というのに。


 「いや、ルルが謝ることは、ないよ。元々、ルルは爬虫類は苦手だったんだし、毒蛇だと思っていたのなら、尚更だよね…。ほんと、あの女は…人騒がせだよ…。自分は反省するどころか、『悪役令嬢(※ルルのこと)が、ちょっと苦しめば良いと思って、家で飼っているペット用の蛇を、持ってきただけ。毒蛇に噛まれたと思わせて、脅かすつもりだけだったのよっ!…樹さんには、危害を加えるつもりもないのに、どうして…こうなったの?』と、平然と言い放っていたよ。」


…なるほど。ヒロインは、乙女ゲームで私に殺されそうになる前に、私に仕返しをしたつもり…ではありませんの?…実際の私は、そういう事を一切しておりませんし、またされた側ですのよ。彼女は…どういう神経を、されているの?…例え、乙女ゲーム通りにされた側でも、自分も仕返しして許される、若しくは、ヒロインは()()()()()()()()()、そうお考えなのでは…。


 「流石に今回は、見逃す訳には行かないな。ルルは、歴とした藤野花家のご令嬢で、その令嬢にあの女は害を為そうとした…。君には直接…被害が無くとも、斎野宮家の俺が被害を受け、斎野宮家の跡取りを害した…という事実から、あの女は…実刑を免れないだろう。何年かそこらでまた絡まれても困るし、世間から騒がれても不味い。転生者や乙女ゲームのことを、騒がれるのは…君達にも悪影響が出るからね。両親とも話し合った結果、あの女の罪状は…我が家に、一任されることになりそうだよ。ルルも…それで、良いかな?」

 「私は直接、被害を受けておりません。樹さんがそれで宜しいのでしたら、そうしてくださいませ。それよりも、助けてくださり…ありがとうございました。樹さんはずっと…私との約束を、守ってくださっていたのですね…。私…今まで、樹さんに酷い態度を……。」

 「そんなことは、ない!…ルルが酷いなんて、思っていないよ。ルルは出会った当初から、何か…事情があるのだと思っていた。自分だけに優しい人で…良い筈なのに、君自身が優しい人物だから、誰にでも優しい人が…良い、と言っているんだと…。本当は、俺の方が…酷い奴だよ…。君を守る為と言いながら、婚約破棄しなかった…。しかし、今はしなくて…良かったと思ったよ。婚約破棄したら、ヒロインや乙女ゲーム製作者の思う壺…だっただろうから。」


ヒロインは何て浅はかな行動を、取ってしまったのでしょうか…。咄嗟に樹さんが私を助けたこととは言えども、本格的に藤野花家と斎野宮家の両家を、()()()()()()()()()、無罪放免とする訳には…参りません。当然、何かしらの実刑を、受けていただくことになりますわ。


毒蛇ではなかった為、本来ならばヒロインは何年かで釈放されますけれども、あのヒロインの性格上では、矯正を目的とした重い罰になることでしょう。釈放後にまた、私が狙われる可能性もございますので。樹さん達が慎重なのは、当然のことでしてよ。私も今回ばかりは、許す気にはなれません。樹さんの命も脅かされた訳ですし…。


何よりも…今の私には、過去の現実を思い出したことで、樹さんには申し訳ないという気持ちで、一杯一杯なのですわ…。その上…彼は、私が優しい…と思ってくださっておられて。婚約破棄する事が…製作者達の思う壺だと、仰られたことに…。私は…嬉しくて嬉しくて、笑い泣きしてしまいましたのよ。


 「………ルル。その涙は…嬉し泣きだと、思っても…良い?…ルル、俺は君が大好きだよ、ずっと。これまでも、これからも…永遠に。大学を卒業したら、俺と結婚してくれるかな?」

 「……………はい…。」


やはり…彼には、私の気持ちなど…バレバレでしたのね。その彼から正式に…プロポーズをされた、私は。前世での()()()()()()()()が…彼でした、と漸く気付いた次第でして。…ああ。ゲームでも一途な彼が、ツボでした…。まさか、私がヒロインのように愛されるとは、夢にも思っておりませんでしたのに…。私は、彼に届くかどうかの…蚊の鳴くような声で、応えて…。


 「……っ!!……ああ!…これで…漸く、君を手に入れた…よっ!」


彼は歓喜の声を上げられて、私を再度抱き締められた後、そうして……私の唇に、初めての口づけを落とされたのでした……。

 漸く、ヒロインの退場が、正式なものとなりました。過去では樹くんも、自分のことを『俺』ではなく『僕』と、言っていたんですね…。樹少年、可愛い!


瑠々華と樹の伏線も、漸く回収しまして、後は…終了に向けてのラストスパートとなりますね。


あと少し、同日の分を回収して、ラスト部分を書いて終了予定です。

回収できなかった、他の登場キャラ達については、本編後の番外編として、少しずつ…のんびりと書こうかと思います。本人達のその後も、書きたいな~。


次回は…何と、本編の方は…終了予定となります。(本当に…終われるかな…?)

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