第35話 到頭、見つかりました!
前回からの続き、となります。
いつも通り、主人公視点となります。
※訂正箇所を見つけた為、訂正し直した際に、ほんの一部変更しておりますが、内用には変わりありません。
予想外の樹さんのお迎えで、朝から色々とありましたけれど、結局は樹さんの家の車で、ご一緒に向かうこととなりました。麻衣沙には、岬さんがお迎えに行かれたそうなので、岬さんの家の車で向かうことになるそうです。
「昨日、岬と相談したんだよ。俺達も行った方が良いんじゃないかって、ね。」
なるほど~。それでは、麻衣沙がお知りならないのは、無理も…ありませんでしたわね。元々は、我が家の車で迎えに行く筈でしたので、今頃…彼女も岬さんがお迎えに来られて、驚いておられることでしょうか…。麻衣沙自身も、岬さんがご一緒なさることは、ご存じなかったとは…。私だけが知らない事実かと、思ってしまいましたわ。…良かったあ。ホッと致しましたら、お腹が空いてきましたわね…。
「ルルがそういうと思って、お菓子を用意して来たんだよ。うちの婆やが、ルルの為だけに作ってくれたんだよ。はい、どうぞ。」
わぁ~い!ありがとうございます、樹さん。それでは、遠慮なく頂きますね~!…はむはむ。美味しい!…流石、真登里さん(※斎野宮家の婆やさんのお名前ですわよっ!)が、作られたクッキーですわねえ。然も、色々な味や形のクッキーやビスケットが、詰められておりましたのよ。嬉しいっ!…全部、私の好きな味付けですわっ!
「君が、真登里の作った料理やお菓子を、とっても美味しそうに食べるからね。真登里は、ルルのことを俺と同じように、大切に思っているんだよ。それに将来、俺の家に嫁いで来れば、真登里の料理やお菓子が食べ放題だよ。他にも、真登里の味を引き継いだ使用人もいるから、真登里が急に暇を告げても、大丈夫だよ。」
「………。」
もぐもぐもぐ…。真登里さん、私の為に作ってくれて、ありがとう。将来、嫁ぐとか何とか…聞こえた気が致しましたけれども、今は…食べるのに夢中ですし、聞こえませんわ。無視ですよ、無視します。
「酷いなあ~、ルルは…。俺の言葉を無視しないでよ…。真登里に頼んだのは、俺なのに…。ルルが喜ぶ顔が見たくて、真登里に頼んだんだよ。今は、真登里のメニューは他の使用人も作れるけど、ルルにはバレるだろうから…と、真登里が作ってくれたんだ。うちの両親と真登里は、1日でも早くルルが我が家に嫁ぐことを、楽しみに待っているからね。毎日、料理の腕を振るうとか言って、張り切っているんだよ。…うわあっ~!…ルルっ!!」
………うっ。クッキーが…喉に詰まる~!……み、水……水!……死ぬ~~……。樹さんの思わぬセリフに、私は…お菓子を、喉に詰まられてしまったのでしてよ。樹さんも大慌てされて、私の背中をさすったり叩いたりと、彼も…パニックになられて。私が辛うじて、「水~!」と声が出せましたことで、漸く我に返られたらしく、「…そうだった!…飲み物を、持って来ていたんだよっ!」と叫ばれながら、慌ててジュースを取り出されましたのよ。……ほっ。生き返り…ましたわ。
実は、私は先程から…声に出して、呟いておりましたようでして、樹さんには筒抜けの状態となっておりました…。今の私は、先程の自分の犯した恥ずかしい出来事から、立ち直れておりませんのに…。予期せぬ、私が嫁ぐという彼の言葉に、動揺してしまいましたのよ…。彼のご両親と真登里さんの過度の期待(?)を、裏切るかもしれないと思うだけで、心苦しいですわ…。
車の中では運転手さんの他には、私と樹さんの2人っきりですのよ。私達の家柄の場合、こういう時には…運転手は存在しない、と考えるのです。婚約者との会話なども気にし過ぎて、成り立たなくなりますからね…。
斎野宮家の運転手さんも、自分がいない者として、声を挟まず運転に集中されておられます。運転手さんは、見守っておられたのでしょう。私が生き返った様子をチラッと確認され、ホッとされておられましたもの…。
「…大丈夫だった、ルル……?」
恐る恐るという風に、声を掛けて来られます樹さんに、思わず…涙目でキッと睨んでしまいましたわ。それなのに、彼の態度が…おかしいですわよ。頬をほんのり赤く染められ、私からそっと目を逸らされますのよ。…いや、何?……今の樹さんの意味ありげな、素振りは…?
「…樹さん。と、嫁ぐなど…と、ご両親が…た、楽しみに…などと、ご冗談でも軽々しく…言わないで…く、くださいませ……。」
「ルル、ごめんね。…驚かすつもりはなかったのだけど、俺の両親が楽しみにしているのは、事実だよ。それに、俺も…本心から願っている。ルルは、俺が嫌いななのかな?…どうしても大嫌いと言うならば、俺も…諦めるしかないけれど、それでも…少しでも可能性があるならば、チャンスを…俺にくれないかな?」
「…えっ……。だっ、大嫌いとかでは…ないですわっ!…ただ…す、好きとか…なのかは………。」
「うん…。それで…良いよ、今は…。大嫌いではなければ、好きになってもらえるという可能性も、ゼロでは…ないよね?」
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「………ルル、…ルルっ!…聞いておられますの、ルル?!」
「…ルルお姉様?…さっきから…ボ~とされておられますけど、ご気分でも悪いのですか?…もしかして、歩き疲れましたか?」
「…えっ?……麻衣沙、…エリちゃん。大丈夫ですわ。…ごめんなさい。ちょっと…考え事を、しておりました…だけですわ。」
「ルルは普段から、ボ~と考え事をされておりますけれども、今日は一段と…おかしいですわ。本当に…大丈夫ですの?」
「…ええ。大丈夫ですわよ、麻衣沙。私は、元気ですわよ。」
如何やら、私はまた…考え事をしていた、模様ですわね。麻衣沙には普段と違うことを、見抜かれてしまいましたわ…。確かに…普段とは、異なりますわよねえ…。先程の車の中での出来事が、頭の中で…グルグルと、回っておりまして。少しでも気を抜きますと、頭から湯気が出そうな程に、脳が…パニックを起こしますのよ。
樹さんの先程のセリフが、頭から離れませんわ…。私の心の何処かで、嬉しいと思う気持ちが、存在しておりますのよ…。ハッキリと告白された訳でもありませんのに、彼の「俺が嫌い?」というセリフが、私の心の奥に…根付いたような気分でして…。彼の真剣なお顔を、思い出してしまうのです…。
それでも…今は、考え事をしている場合ではありませんわね。何とか頭の中の邪念を振り払いまして、私を心配されておられるお2人に、大丈夫だというところを、お見せしなければ。
今現在は、樹さんと共に車から降り、美和乃さん達との待ち合わせ場所まで、皆さんとご一緒に歩いております。樹さん・岬さん、麻衣沙・エリちゃんの皆さんと、私の5名です。エリちゃんにも、樹さんと岬さんにバレてしまいましたことを、先程お伝えしたばかりでして、驚かせてしまいましたわ。けれども、流石、現役女子高生ですわね…。切り替えがとても、早かったですもの…。
「初めまして!…私、『雨川 英里菜』と言います。高2の16歳です。よろしくお願いします!…貴方が…『王子』こと、樹さんなんですねっ!…そして、貴方が…『眼鏡くん』こと、岬さんなんですねっ!…あれっ?…眼鏡…掛けてない?」
「…初めまして。君が…雨川さんだね?…俺のことは知っているようだけれど、一応名乗らせて。俺は『斎野宮 樹』、大学3年生だよ。宜しくね。」
「…初めまして。俺は…『篠里 岬』、樹と同じ学年だ。宜しく。後…眼鏡のことだが、車の運転時や勉強する時しか、俺は…眼鏡は掛けない。ゲームの俺は…どうだか知らんが、今の俺はそこまでは、視力は悪くない。」
…という具合に、エリちゃんと再会して早々に、樹さんと岬さんとは初顔合わせということで、互いにご挨拶されましたわ。…う~む。ゲームのエリちゃんと違いまして、このお2人に…ズバリと、ゲームの愛称で呼ばれます。お陰で、樹さんは…苦笑されてますし、岬さんは…少々たじろがれておられましたかしら…。今時の女子高生は怖いものなし…だと、よく聞きますものね…。
「雨川さん。良かったら、君の彼氏を紹介してもらえないかな?…彼氏に知られるのは、駄目だろうか?」
「…あ〜、はい…。分かりました〜。今から、連絡しますね?」
樹さんは他の攻略対象にも、ご興味をお持ちになられたご様子です。エリちゃんの彼氏こと右堂さんには、まだバレてないようですし、エリちゃんは戸惑われる…かと、思いましたのに、以外と簡単にOKされましたのよ。…ええっ?……エリちゃん?!…本当に、右堂さんにバレても…宜しいのですの?
エリちゃんがすんなりとOKされたお陰で、樹さんの方が戸惑われたご様子です。彼の拍子抜けされたお顔を、間近で拝見致しました私は、彼の予想外というご表情が、可笑しくて。…ふふふふっ。
エリちゃんは早々と、右堂さんに電話を掛けられて、簡単な事情をお話されましたわ。ここでは流石に、詳しくお話出来ませんからね。合流されてから、乙女ゲーム事情をご説明されることに、なるでしょうね。右堂さんが、どういうご反応をされるのかが、見ものですねえ…。
漸く、美和乃さん達と合流する、待ち合わせ場所に着きますと、大勢の人混みが出来ており、騒がしい声が聞こえて参りまして…。はてさて、このような場所で、どうしたのでしょうか?…そう思って皆で覗きまして。……あらら〜〜〜。
「どうして私に、そんなに冷たくするのよ~?…私達の仲でしょ?……ああ、分かった!……その女に、何か…言われたのね?…大丈夫よ、私が助けてあげる!…幼馴染の好みで!」
…ああ、これは……。最悪の事態…です。こんな所で、見つかるとは……。私達の出番が、遅すぎたようですね…。
樹が、何やら…企んでいるようですね…。今回の最後の最後で、誰かさんが…本編に、再登場して来ましたし、次回以降は波乱な予感が…。
さて、此処からが一応、ゴールに向けてのラストスパートの始まり、となります。ちょっと乙女ゲームの終了時期が早くなりますが、1年掛けての設定は無視して、夏休み中に断罪…となりそうです。(本来の乙女ゲームの終了時期は、主人公達が2年生になる前の3月頃ですので。)
※『婚約破棄する期間は、まだ締め切っていませんが!?』の方に、成人式に纏わるお話を、昨日投稿致しました。もし、宜しければ、ご覧くださいませ。




