第18話 隠しキャラを攻略中?
いつも通り、瑠々華視点となります。
前回から続いています。隠しキャラとの遣り取り中です。
隠しキャラこと光条さまが、私に絡んで来られたのは、実は…これが、初めてではありません。夏季休暇に入る前からちょこちょこと、私が大学で1人になった時に、まるで見計らったかのように、私に声を掛けて来られるのです。最初のうちは偶然だと、私も思っていたのですけれど、何回も遭遇するうちに、これは…態となのでは?…と、思うようになりました。それに、隠しキャラだと分かる前は、一度も遭遇していないのですもの。
正直に言いまして、光条さまが何を思ってそうされておられるのかが、私には…理解出来ません。私、ヒロインじゃないんですが…。ヒロインとお間違えでは、ないですよね?…実は、光条さまも転生者だとか…。いや、彼が転生者ならば、私の怪しい行動で、私も転生者だとバレている筈なので、こんなまどろっこしい行動はされませんよねえ…。
兎に角、私が1人の時にだけ、話しかけて来られる為、麻衣沙にも…どうお話したものかと、今のところはまだ誰にも伝えておりません。…はあ〜。本当に光条さまは、何をお考えなのかしら?…はっ!…まさか、私のオドオドする様子が見たいとか、揶揄う為だけに会いに来られてますの?…え〜〜。悪趣味ですよね…。
それに、今回の社交ダンス教室へのご入会は、私を揶揄うだけにしては、悪趣味過ぎます。…う〜む。益々、光条さまが何をされたいのか、分からなくなりそうですわね。私に婚約者がおりますことも、知っておみえでしたのに、歴とした婚約者のいる女性に、態と近づくなど、本来は許されない行為ですのよ。まあ、私達の場合は仮初ですし、樹さんはNewヒロインと恋人になられる筈ですから、別に私は…気にしておりませんけれど。
光条さまと何曲か踊った後、ダンス教室の講師の許可を得て、私はただ今、休憩しております。当然のように、光条さまも私の隣に座られて、他の生徒さん達の練習風景を眺めておられます。何故、私の隣をキープされるのですの?…これでは、まるで…恋人同士みたいでは、ありませんか…。実際には、このイケメンと並んでいても、平凡な私では…恋人には、見えないでしょうけれども。…いいんですのよ。見られなくとも、悲しくなんてありません。…シクシク。
「その顔は、俺がどうしてこのダンス教室に入会したのか、分かっていないようだね?」
「はい。光条さまとは、まだお知り合いになったばかりもの。分かる筈もありませんわ。」
「なるほど、そう来たか…。確かに、君とは知り合ったばかりだけど、俺は君のことは…以前から知っていたよ。君達は有名だったからね。」
ちょっとだけ感傷に浸っておりましたら、光条さまがダンス教室に入会された理由を、私が理解しているのかと聞かれまして。…はあっ?…光条さまとはこの前、知り合ったばかりですわよ。私が分かる訳が…ありませんわ。意味不明ですのよ。…ん?…やはり、私を揶揄う為に入会されたの?…このお人。
…と、不愉快に思っておりましたら、私達が有名だと言われまして…。…はっ?!有名って、私は含まれていない筈ですから、樹さんと岬さんのことなのかしら?…それとも、麻衣沙も…含まれておられるのかしら?
「……はい?……私達が有名?…それって、樹さんが有名ということですの?…私は…関係ありませんよね?…どちらかと言いましたら、岬さんや麻衣沙の噂ですわよね?」
「いや…君もそれなりに有名だよ。あの藤野花家のお嬢様で、斉野宮家のご令息と婚約していて、その彼からは溺愛されていて、お似合いだと噂されているよ。もしかして、自分の噂を…知らなかったのかい?」
「………。」
いや、いや…。訳が分かりません。私も…思いっきり噂されてますねって…、どういうことなんでしょうね?…樹さんに溺愛されてるって、多分…彼の心配性なところが、そういう風に見えるんですかね。う〜ん。樹さんはただ単に、誰にでも優しいだけなんですけれど、婚約者というフィルター越しに拝見されますと、私にだけ特別に見えるということなのでしょうか? …麻衣沙なら兎も角、お似合いというのも、私の家柄を気にして、おべっかを使われていらっしゃるのかしら?…う〜ん。悪役令嬢っぽくなりそうなので、辞退しても…よろしいかしら?
「勿論、立木さんと篠里先輩の噂もあるよ。まあ、この2人も君達2人の噂と似たようなもんだが。但し…立木さんは、良い噂だけではなく、悪い噂もあるけど。彼女は言い方がキツイだろう?…だから、一部の女子から…反感を買っているみたいだね。それに比べると、君の噂は…良い噂ばかりだよな。まあ、少しでも君に悪意を向ければ、裏で暗躍する人物がいるからね…。」
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…んん?…光城さまが、何気に酷いことを仰られたような。麻衣沙の悪い噂がある?!…麻衣沙の言い方が…キツイ?…確かに、言いたい放題だとは、思いますけれど。麻衣沙のアレは、ツンデレみたいなもの…なんですよねえ。彼女は、素直になれないタイプなんですの。心の底では…自分の言葉にも、テンションが下がっておりますのよ。
それなのに、反感を買うなんて。乙女ゲームの麻衣沙も、同じだったのかもしれませんね。そういう意味で言いますと、樹さんも岬さんも麻衣沙も、ゲームのキャラの性格と…あまり変わらないのですね。私とヒロインだけは、全く違うけれど。
私の噂が良いのは…きっと、乙女ゲームのような瑠々華にならないようにと、只管努力した結果でしてよ。なるべく、他の人には優しく接しておりますし、教師に頼まれましたことは、出来る限りお手伝いしておりますし、他の人とお話する時は、嫌みにならないような口調を心掛け、家柄に拘らずに誰にでも平等に接し、自分は我が儘で高飛車な人間に、ならないように気を付け、常に人の目を気にして生きて来たのですのよ。
それでも、そういう努力を知らないお人からは、悪く言われたこともありましたわね。…あれっ?…でも…今、光城さまが仰った…裏で暗躍する人物とは、どういう意味なのでしょう?
首を傾げておりますと、「君は知らなくても、良いことだよ。」と光城さまが仰れますが、益々…意味が分かりませんことよ?…まさか…悪役令嬢の私が、裏の人物だと仰りたいの?…悪役令嬢たる瑠々華が、仕返ししている?……そんな馬鹿な!私…何もしておりません!神に誓って!
「………。いや、君のことじゃないからね?…兎に角、君が心配するようなことでは、ないから。…落ち着いて、瑠々華ちゃん。」
「…はえっ?…えっ、何で……私の声を読まれたんですの?!」
「……いや、君がブツブツと呟いていたんだよ。神に誓って、私は何もしてないとか、言っていたんだよ。」
…あ~~。私、呟いちゃいましたのね。ついに誰かに…心の声を読まれたか、と思いましたわよ。どうやらギリで、悪役令嬢とは…呟いていないようで。一応はセーフです。この世界には前世同様に、乙女ゲームやら漫画やらアニメなどもございますから、悪役令嬢という言葉もありますわ。意味がバッチリ通じちゃいますから、余計に…バレると恥ずかしいですのよ。乙女ゲームに嵌っている…痛いご令嬢、という目で見られそうですもの。
「いやあ、君は本当に…規格外だね。表情がころころ変わって、面白いし、ね。君みたいなお嬢様には、初めて会ったよ。君と居ると、何でもないことが…面白いことに変わって、退屈しないなあ。斎野宮先輩が、君と居たいと思う気持ちが、よく理解出来たよ。」
光城さまは、私を本気で…怒らせたいのですの?…ただ単に私を、揶揄ってお見えなのでしょうけれども、私の気持ちとしては、非常に複雑ですわ。許されるのでしたら、思いっきりビンタしたいぐらいですわね。…ふんっ!
「…樹さんは…お優しいお人ですから、私を見捨てられないだけで…。ご一緒におられたくて、私と…おられる訳では、ないのですわ。」
樹さんが私と居たい…と思っておられるって…。まさか…。そんなことがある訳がないですわ。樹さんは多分…近いうちに、Newヒロインと結ばれますのよ。一緒に居たくているんじゃない、ということでしてよ。
「……うん?…君はどうしてそんなに……。…まあ、いいか。そういうことにしておくよ。」
私が眉を顰めて、樹さんの気持ちを代わりに吐露致しますと、光城さまは私に何かを言いかけられましたわ。…え~と。…何だったのでしょうか?…私がどうしたと言われるのか…。「そういうことにしておく」とは、具体的に…どういうことにして置くのか、私の周りには…ハッキリ仰られないお人が、多過ぎますわね…。
私…超能力者ではございませんので、ハッキリキッパリ言っていただけないと、理解出来かねますのよ。私の方が…モヤモヤしてしまいましてよ。
乙女ゲームでは隠しキャラだった、光城さま。現実では何処にでもおられる、ご令息だと思われます。彼は、他の有名男子校からの外部生ですが、彼の場合…身なりや家柄から考えますと、堀倉学園小学部から御入学されていても、別段問題がないと思われます。麻衣沙が更に調べたところに依りますと、家庭環境にも何も問題はなく、何が隠し要素であったのかは、結局分かりませんでした。麻衣沙も、不思議がっておられますわ。
そうですわ!…今度、エリちゃんに聞いてみましょう。彼女は私達の中では、唯一隠しキャラを攻略した人物ですもの。きっと、何かは…知っておられるでしょう。
…と言いながらも、私の真の狙いは…エリちゃん家に、遊びに行きたいだけだったりして。…ふふっ。楽しみ~!…早くエリちゃんも、夏休みにならないかなあ。
プライベートな内容の続きとなります。
ルルと隠しキャラのチグハグな会話が、展開されています。




