第16話 ゲームの推しはだ〜れ?
いつも通り、瑠々華視点です。
まだ暫く登場はしませんが、新しいキャラの名前は出て来ます。
漸く、もう1組の攻略対象者と、そのキャラに対する悪役令嬢が、見つかりましたわ。我が家の使用人と立木家の使用人が、協力した結果なのですわ。こういう時には、お金持ちって素晴らしいと思いますわね。一般市民でしたら、ヒロインの立場でしたら、私ならば…ビクビクと怯えながら、攻略対象キャラや悪役令嬢キャラに会わないようにと、ただ単に願っていただけでしょうね。
前回は私と麻衣沙の2人でご検討致しましたが、今回はエリちゃんにも、参加していただくことになりましたのよ。私が追いかけていたのを、光城さまにバレてしまいまして、麻衣沙には「暫く、大人しくするように」と、言われてしまいましたのよ。お陰で、隠しキャラの確認をしていただく際に、私は…お留守番でしたのよ。残念……。エリちゃんの家に伺うことになるのでしたら、私も無理矢理付いて行きたかったですわ。……ぐすん。
私も、エリちゃん家に…行きたかったなあ。私の前世は一般市民でしたから、エリちゃんのお家にも、興味があったんですのよ。どんなお家なのか、見たかったのになあ…。エリちゃんのお部屋も、見たかったなあ。私はどうやら、ブツブツとそう呟いていましたようでして。エリちゃんがそんな私に、苦笑されておりました。
「そんなに、私の家に来たかったんですか?…ルルお姉様のお家とは、月とスッポンというくらいに、かけ離れた家ですよ。…ふふっ。それじゃあ、今度は我が家に、ルルお姉様もご招待しますね?…その時はまた、お2人で来てくださいね?」
「…!…やったあ!…エリちゃん家にご招待されましたわ!」
1人だけお留守番でした私に、エリちゃんも同情をされたようでして、エリちゃんがご招待してくださいました。…わあい!…飛び上がりたいほど、嬉しいですわ。実際には…現世ではお嬢様なので、そこまでは…致しませんが。エリちゃんのお家に行くのが、凄~く楽しみになりましたわ。
因みに今日は、我が家に集合しております。私が基本的に、あまり外出させてもらえない為、仕方ありません。麻衣沙の家よりも私の家の方が、落ち着くということもありまして、何せ…前世のお話ですからね、両親にも誰にも聞かれたくありませんし、知られないようにしなければ。私の場合、何か起こると…樹さんが飛んで来られますので。その為、今回は我が家に集まろう、ということになりました。
私のスマホは相変わらず、緊急先が樹さんのままになっておりますのよ。変更しようと思ったのですけれども、両親からも反対されてしまいましたのよ。樹さんまでも、「そのままの方が、ルルに何か遭った時に、俺が直ぐに駆けつけられるから、いいんじゃない?」と、仰られてしまいまして、変更させてもらえませんでしたのよ…。樹さん、どこまで心配性なのでしょう?…そこまで仮の婚約者に、お気を使われなくとも良いのですよ?…本当に樹さんのお優しさには、感動ものですわ。
最後の攻略対象のお人は、『矢倉 聖武』というお名前で、会社員の父と専業主婦の母という、ごく一般的な家庭です。私と麻衣沙と同い年の、大学1年生ですね。本来ならば親の転勤で、ヒロインと幼馴染になる筈だったのですが、何故か…その親の転勤が、無くなっておりますね…。当然ですが転校はされず、同じ地方の公立の学校に、ずっと通われておられたご様子で。乙女ゲームでは、ヒロインの通う小学校に転校となるのに、この違いは…どういうことなのでしょうか?
これでは、ヒロインと…出会いませんわね…。彼を好きな幼馴染である悪役令嬢さんも、ずっと同じ学校に通うこととなった為、態々…ヒロインの邪魔をしに行く必要もありません。ヒロインの家の隣に引っ越し、ヒロインと幼馴染となる…というゲームでの設定も、抑々が引っ越しておられない為、ヒロインとは全く接点のない人、という状態でして…。彼がヒロインを追いかけ、彼女と同じ高校に進学して、同じ大学にも受験する…という設定も、無くなっています。彼が無理をして…堀倉学園付属大を受験する意味も、ないですわ。道理で、お見かけしない筈ですね…。
彼の親の転勤が無くなったことと、何か関係があるのでしょうか?…何となく気になりますわ。私だけではなく、麻衣沙もエリちゃんも、気になさっているご様子でしたので、後で使用人に言って、そこら辺を詳しく調べてもらいましょうか?
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次に私達がご注目したのは、『矢倉 聖武』くんルートの悪役令嬢さんですわ。厳密に言いますと彼には、ゲームの悪役令嬢は…2人おられます。1人は、引っ越す前の元幼馴染さん。もう1人は、ヒロインと同じ高校に通われていた、女子生徒ですが、この女子生徒と彼は、現在は知り合っておられない筈ですので、この際…関係ないでしょう。そうしますと、彼が引っ越す前からの幼馴染さんが、私達がお会いすべきお人になりますかしら?
その幼馴染さんは『霧島 美和乃』さんというお名前で、私と麻衣沙と同じ年の女性です。ごく一般家庭の娘で、両親は共働きの会社員のようですね。彼女の家柄では、堀倉学園付属大に通う為には、ゲームのヒロイン・矢倉くんみたいに、特待生として入学される必要がありますわ。ですが、矢倉君も霧島さんもお2人共、この大学に通うには…学生寮に入るなり、何処か下宿するなり、将又…実家から出て、1人暮らしする必要がありますのよ。…流石に、実家からは通うには、厳しいですよね。私達みたいに、毎日専用の車で通うならば別格ですが。
まあ、そういう理由から、お2人が無理してまで、堀倉学園付属大に通う必要がございませんわね。道理でこの大学に、入学されておられない筈ですわ。お2人共に近くの大学に、入学されておられますもの。使用人達が調べた結果では、お2人は大学に通うようになってから、付き合っておられるようですし、ヒロインが思い出さない限り、ゲームに登場しない大学でお2人の邪魔をするのは、物理的にも無理なように思います。ただ…ゲームの強制力が、全くないとも言い切れませんので、ご忠告だけはした方がいいのかもしれません。
「お顔と家柄等を確認する限り、このお2人で間違いないようですわね。」
「ええ、マイお姉様。そうですね。私も、このお2人の写真を見たら、急に思い出しました。実は…私、前世では…ゲームのこの『幼馴染』君が、結構好きだったんですよねえ。そのことも思い出しちゃいました。」
「あらあらっ?…ゲームの右堂さんのことは、好きではなかったんですの?」
「…えっ?!……いえ、そう言う訳ではなくて、実は…1番好きなキャラが、相良くん…でした。」
麻衣沙がこのお2人で間違いないと、太鼓判を押されます。どうやら、この場におられる3人共に、またゲームの記憶を思い出しましたようですわね。今回は3人で検証しておりますから、何かと心強いですわ。エリちゃんが、今回の攻略対象君をお好きだったと言われるので、彼女の恋人でもある右堂さんのことは良いのかと、つい…揶揄ってしまいましたわ。エリちゃんは真っ赤なお顔になられて、恥ずかしそうにモジモジとされながら、ゲームでも右堂さんが1番好きだと、認められたのですわ。
…うふふふっ。いいなあ、彼氏と両思いで。私も誰かと…両思いになりたいなあ。ゲームでも一推しだった攻略対象のキャラと、両思いになって恋人にもなれて…。超羨ましいです…。私も出来れば、ゲームの一推しだった攻略対象キャラと、両思いになりたいなあ。でも…あれっ?…私の推しキャラって、誰だったかしら?…う〜ん。何故か…思い出せないですわね。
好きなキャラがいなかった、とか?…う〜ん。自分でもよく分からないのですが、何となく…違うような気が致します。推しキャラがいたような、いないような…。今まで、それどころではなかったですので、思い出せなくなってしまったのかも。残念だわ…。
そう言えば、麻衣沙の推しは…誰だったのかしら?…前世を思い出して乙女ゲームの世界だと気付き、それからは悪役令嬢にならないように、攻略対象キャラを避けようとしたり、避けられなくなってからは、なるべく嫌われないように気をつけたり…と、常にそういうことばかりを、考えておりましたわね。ですから、ゲームで誰を推していたかなどと、考えたことすら…ありませんでしたわ。
「私の時のように、霧島さんに会いに行かれるんですよね?…私、もうすぐテスト前期間に入るので、残念ですが…行けそうにないです。もっと近いと思っていたので、行く気満々でしたけど、思ったよりも遠くに住んでみえたので、ちょっと…無理かも…。」
「あら、そういうことでしたら、夏休みにご一緒に会いに行きましょうか?…これだけ離れた場所に住んでおみえならば、例のヒロインとて、偶然出会うこともないでしょう。エリさんも夏休みならば、問題ないのではなくて?…勿論、わたくし達の家の車でご一緒しますわよ。」
「あっ、はい。夏休みならば、大丈夫です。絶対に行きます!…連れて行ってください!」
「わあ!…3人でご一緒するのね!…今から、楽しみですわ。」
最後となる攻略対象キャラ達は、日帰りで行ける範囲ではあるものの、電車などの交通手段を使用する場合は、田舎という感じの不便な地域に、住んでおられます。エリちゃんはガッカリしたご様子で、辞退すると仰られましたので、麻衣沙が夏休みに行こうと誘われましたのよ。そういう訳で、ご一緒に会いに行くことになりましたの。楽しみっ!
ルルは我が儘ではないので、「今はおとなしくしていなさい。」という親友の言葉に従いました。(樹さんの軟禁が怖かったのもある。)
今回はルルも復活して、3人で対策会議中です。(女子会とも言う。)




