第11話 3人目悪役令嬢、現る?
いつも通り、瑠々華視点となります。
後半は、新しいキャラが登場します。
あれから合宿中は、何も起こらず無事終了し、事なきを得ましたようですね。
あの例のヒロインも、あの後は来られなかったようですわね。……やれやれ。
それよりも、やっと他の攻略対象者の存在が、分かりましたよ。隠しキャラのことは、私達が何も思い出せないので、今回は対象外となりました。しかし…我が家の使用人と、麻衣沙の家の使用人が、一緒に探したそうなのですよ。
藤野宮家も立木家も、使用人達が優秀過ぎですよねえ。乙女ゲームの情報を知らない使用人達が、具体的にどうやって探したかと言いますと、麻衣沙が似顔絵を描いたのですのよ。そうなのです。乙女ゲームのキャラの顔を、しっかりと覚えていたのです、麻衣沙は。…凄~い。私なんて、ご本人の名前を聞かない限り、思い出せなかったのに。
先ずは、裕福な一般家庭の2年生として、『右堂 相良』ではないか、という報告が上がって参りました。彼の両親が国家公務員の為、彼の家は案外と裕福な一般家庭だと、報告されています。現在は、この大学の近辺にある、有名な『秀南大学』に通う大学2年生。使用人達が、本人の写真も撮って来ておりますが、麻衣沙が描かれたイラストによ~く似ておりますわ。これは…間違いがないのでは、なくて?
ですが今回は、攻略対象者を探すのが、最終目的ではないのです。実は、それぞれの攻略対象に対して存在する、悪役令嬢を探しておりますのよ。そして、『右堂』君に対する悪役令嬢は、彼の年下の幼馴染で現役高校生でした。幼馴染の右堂君に片思いしており、ヒロインとデート中に邪魔をしたりする程度の、可愛い女子高生でしたわ。右堂君が攻略された場合は、家の没落ルートがありましたけれど、逆に言えば…その程度の罰で、終わりでしたのよ。
その彼女の家の没落も、右堂君が何かしたとかでは全くなくて、偶然にも彼女の家の父親が仕事で失敗して、父親が失業して借金が残り夜逃げする、という流れでしたわね。麻衣沙の似顔絵から、その彼女に似た人物も見付かりました。実際のその人物は、父親が弁護士という裕福な一般家庭の娘です。右堂君の幼馴染でもあり、最近になり…彼女が高校生になった頃から、幼馴染の右堂君と付き合っている、と報告を受けておりましてよ。…何と!攻略対象くんと悪役令嬢ちゃんのカップル、1号ですかあ。…ふむふむ。乙女ゲームという壁を、乗り越えたんですのね…。
きっと、Newヒロインが現れたとしましても、貴方達は大丈夫……とは、まだ会ってみないと分からないですが。
その悪役令嬢である彼女は、『雨川 英里菜』さんと言うお名前で、現在は地元の公立高校に通う、高校2年生だそうですわ。使用人の報告書に依りますと、高校に入って少ししてから、右堂君から告白されたようでして、もう付き合ってから1年は経っておりますのね…。…ふむふむ。彼の方が溺愛しておられる、と。これは…例のヒロインは、入る余地はなさそうでしょうか…。なるほど、なるほど…。
彼女の写真も撮られておりますので、麻衣沙のイラストと照らし合わせて見れば、正しくそっくりでしてよ。麻衣沙、貴方の絵心は…素晴らしい出来栄えでしたわ。
これで、攻略対象のお1人と、悪役令嬢がお1人の正体が分かり、ホッと致しましたわねえ。
「これで、例の乙女ゲームの登場人物が2名、確保出来ましたわね。後のお2人は、未だ捜索中ですので、彼らに対しては報告が上がり次第、その時に検討を致しましょう。取り敢えず、このお2人に…と言いますか、この悪役令嬢であると思われる彼女、『雨川 英里菜』さんにご連絡をお取り致しましょうか?…ルルは、それで宜しいかしら?」
「ええ、そうですわね。麻衣沙がそれでよろしければ、私はOKですわよ。」
「そういうことでしたら、決まりですわね。わたくしが雨川さんに、ご連絡をお取り致しますわね。お会いする日は、わたくしが勝手に決めても宜しいかしら?」
「ええ。大丈夫ですわよ。私は暇ですから、麻衣沙に合わせられますもの。」
…ということで、麻衣沙が悪役令嬢さんに、ご連絡してくださることになりましたのよ。あれから直ぐに、麻衣沙は予定通りにご連絡を取られ、私と麻衣沙と悪役令嬢さんは、漸く初めてお会いすることになったのでした。
悪役令嬢さんが私達みたいに、前世の記憶をお持ちの転生者であることを、願いまして。その方が、お話が早くて済みますものね?
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早速、会う約束を取り付けまして、私達は悪役令嬢さんにお会いすることが、漸く叶いましたのよ。今日は、そのご令嬢の近くの喫茶店を、私の家の名で貸し切りましたので、私達3人以外には…他に誰もおられません。別に…我が家の名前で、貸し切る必要はなかったのでは?…麻衣沙が貸し切ると言い出されたというのに、いざ喫茶店に出向きましたら、何気に我が家の家名で貸し切られており、驚いたのですが。然も、麻衣沙が…我が家の娘みたいに、名乗っておられましたのよ…。えっ?…私が貸し切りに驚いて、呆然としていたから?…いえいえ、麻衣沙さん。貴方、私が名乗るも何もないうちから、然も自分が娘だと言うように、名乗っておられましたよね?
もう、何で…自分の家の家名を、使わないのかなあ?…麻衣沙の家の家名・立木家だって、それなりに大きな家ですし、うちとそう変わらないじゃないですか。
…なになに?…っはあ?!…我が家の家名の方が目立つって…。確かに…我が家の家名は、こっちの現実世界でも珍しい苗字ですけれど…ね。だからと言いまして、藤野花で貸し切る必要がありませんのに。…はい?…藤野花ならば一発で我が家だと、一般市民にも知れ渡っております、と?…はあ、そうですか…。もう、麻衣沙には…敵いませんので、諦めましたわ…。
そんなやり取りを、麻衣沙と私がしておりますと、貸し切りにされたお店に、誰かが入って来られた音が、カランコロン…という音が鳴りましたわ。今では珍しい…レトロな音なのですよ、また、これが。
すると、この喫茶店のオーナーさんが、私達の席の方に、そのお客様を案内して来られます。うん、間違いなく、あのお写真の娘さん…ですね。ほうほう、このお人が…なんですね~。3人目の悪役令嬢さんですか〜。事前に写真で、お顔を知っておりますけれども、やっぱり生で拝見するのとは違いますわね。表情も…何気に緊張されているのが、よく分かりますし…。
そうですよねえ。見ず知らずの全く接点のない筈のお人から、行き成り呼び出されましても、戸惑うだけですわよね?…何のご用事なのか、きっと…想像もつきませんでしょうね…。
さて、麻衣沙は…どうやって、3人目の悪役令嬢さんに、本題を切り出されるのかしらね…。私は暫く様子を見てから、会話に加わりましょうと、他人事のように観察しておりました。オーナーに案内されて来られた彼女は、私達の目の前の椅子に腰を下ろします。先ず、麻衣沙が彼女に「今回、わたくし達がお呼びしたのですから、わたくし達の驕りとさせていただきますわ。気になさらずに、ご注文なさってくださいませ?」と、お声を掛けられますが、彼女は遠慮なさっておられます。
「迷っておられるのでしたら、わたくし達と同様に、『本日のお薦めセット』はどうでしょうか?」
「……はい。それで…大丈夫です。」
そうなのですのよ。こちらの喫茶店には、ケーキと飲み物がセットになっている、『本日のお薦めセット』というメニューがありまして、今日の一押しということでしたわ。ですから迷わず、私も麻衣沙も、それを注文致しましたのよ。飲み物だけは自由に選べるので、目の前に座られた彼女にも、選んでいただきましたわ。
彼女の注文が届く前に、先ずは自己紹介を始めます。お互いにフルネームを名乗り合いまして、通っている大学などの簡単な自己紹介を致しました。目の前に座った彼女は、報告書通りに『雨川 英里菜』さんと名乗られます。その程度の彼女のことは、使用人の報告書に挙がっておりましたけれど、私達は知らない振りをして、聞いておりましたわ。自己紹介を終えた頃に、丁度注文の品が配膳されまして…。これで漸く、大切なお話が出来ますわね。麻衣沙は居住まいを正して、彼女に改めて話し掛けられましたのよ。
「雨川さん。お電話でもお話致しましたように、お話と言いますのは、貴方の幼馴染でもある『右堂』さんのことですわ。ですが…その本題に入ります前に、貴方は…『ゲーム』と言う言葉で、何を連想されますでしょうか?」
「……えっ?!……ゲーム?……乙女ゲーム…?…まさか…転生……とか…。」
おおっ!…なるほど、麻衣沙は連想ゲームの如く、雨川さんの口から転生者にしか分からない言葉を、引き出しますのね?…そして、見事に大当たりであった、ということでしょうか。彼女は、『乙女ゲーム』と『転生』と言う言葉を出されましたのよ。…おおっ!…これは、雨川さんも…転生者なのですね?
「雨川さん、この世界が何かおかしいとは、思っていらっしゃる?」
「……ええ、まあ…多分。あの…それって、つまり……前世とか…ですか?」
「では、ズバリお聞きいたしますわ。雨川さん、貴方は…転生者ですの?…前世の記憶は…ございますの?」
「……っ!………はい。私には前世の記憶がありますし、転生者だと思います。そういう貴方達も…ですよね?」
「ええ。そうですわ。これで、わたくし達にとっては、貴方は…3人目の転生者ですわ。これで、今回のお話の本題に入れますわね?」
今回の前半には、登場はしませんけれども、攻略対象キャラの名前が判明しています。後半は、その攻略対象に対する悪役令嬢が、初登場しています。
然もその令嬢は転生者で…という流れです。
これで転生者は、ヒロインを入れて4人(女子ばかり)となりました。




