今度こそ守る…
―――領主の話を聞いたあと、私達は話し合っていた。
「どうする?討伐に行く?」
「そうねぇ…私は良いけど」
「いいよ!お姉ちゃんについていく!」
「まぁ、いざとなったら私が守ってあげる」
フェリスの心強い言葉を聞いて、安心する。
「じゃあ、行こう」
そうして武器を持って、門の方へ向かう。途中に同じように武器を持っていく人を見かけた。
…同じ冒険者だろうか、経験豊富そうである。
本当に大丈夫だろうか…。そんなことを思う。恵を守って魔物を倒せるだろうか…。
そんなことを考えていたら、門についていた。
そこは、見るに耐えない光景だった。私達は死体も、内臓も見ない世界から来た。そんな私達が見たのは、腸が飛び出ている兵士の亡骸…、体の一部を失って血を流している兵士や、逃げ遅れた市民。
辺りは血と死が溢れていた…。
「ひっ…」
恵が小さく息を漏らす。
…はっ、そうだ…私は恵を守るんだ…。こんなことで臆している暇はない。
決意を固め、進む。
「恵、無理しなくていいよ。」
振り返らずに言う。誓ったんだ、あの時に。何があっても守るんだって、そう誓った。
「待ってて」
「いや、…お姉ちゃん」
恵を恐怖が支配していた。
そんな恵をフェリスに任せる。
「フェリス、恵をお願い。安全ところまで連れて行って」
「わかったわ、雫。すぐ戻るわ」
「お姉ちゃん…」
恵の心配そうな声が聞こえる。それに私は…
「大丈夫だよ」と、一言だけ残して魔物に、立ち向かう。
…怖い。嫌だ。死にたくない。そんな感情が湧き上がってくる。
でも、それ以上に、守る。という決意がそれを堰き止めた。
「はぁぁぁぁ!」
魔物に斬りかかっていく。魔物にめり込んだ武器は、重かったが、全身を使って振り抜く。すると、赤黒い血が飛び出す。
魔物は半分になって、崩れ落ちた。
一匹倒して安堵しそうになるが、まだ魔物は残っている。油断せず次の魔物へと斬りかかる。
倒して、倒して、倒し続けて…辺りは血の池と化していた。それに気付かないくらい、集中していた。
私は、足を滑らせてしまう。土が、血によってぬかるんでいた。
しまっ……
そう思ったとき、目の前に魔物の、私を引き裂くための鉤爪が、迫っていた……。
フェリスside
「恵、行くわよ」
そう言って恵の手を取り、走り出す。領主の館を目指して。
「フェリス、でも、お姉ちゃんが!」
「大丈夫よ、雫なら。あんたのお姉ちゃんでしょ。それに恵を、送ったら私も加勢するから」
恵を、落ち着かせようとそう言う。
「わかった…」
恵は、そう言って走り出す。
――――領主の館についた。そこには、避難民がたくさんいる。
「じゃあ、恵。待ってなさいよ、すぐ戻るわ」
笑顔で、告げて、走る。
少し心配である。雫のステータスを見たとき、実力は有ったが、幸運値が低すぎた。世界最弱のステータスのスライムにすら劣っていた。
雫に何かあるかもしれない。そう思って走る。
さっきは、恵に合せてたから、時間がかかってしまった。フェリスのスピードなら、ものの数分で門にたどり着く。
門について、雫を探す。雫を見つけたと思ったら、足を滑らせて魔物に切りかかられようとしていた。
「危ない!!」
叫んで、全速力で魔物を殴る。魔物は粉々になって、赤黒い液体が顔を汚す。
だが、そんなことよりと、雫の方を向いて声をかける。
「大丈夫かしら?」
心配を隠して、意地悪いような笑顔で。
雫side
来る…と思っていた、鉤爪はこず目の前で魔物が粉砕されていた。
「えっ?」と、思わず声に出るが、よく見ると、フェリスがいた。
フェリスは、こっちを向いて少し返り血のついた顔で、意地の悪いような笑顔で「大丈夫かしら?」と言う。
それに、安心感を抱きつつ「ありがとう」と言う。
「フェリス、顔に返り血がついてるよ」
「あら、気付かなかったわ」
そう言って顔を拭う。
…さて、どうしようか。このまま討伐を続けようかな…。
「恵のところに戻る?」
「そうね、戻りましょう」
恵のとこへ戻ることにする。
「急ごう」と言って、駆け出す。
…なんだろ、騒がしい…?
急ごう。私の勘が、嫌な予感を告げている。
悲しいことに私の勘は、よく当たる。
悪い事は特に。
「おいっ!!!こいつがどうなってもいいのか!!?」
そう言っているのは、フードを目深にかぶっている男。他にも4人程いるようだ。
人質がいるけど…あれは………?
…恵!!!?
「いるんだろう!ここに、この国の王女セルヴィア・ノス・アストが!」
恵が捕まって、首にナイフを当てられている。何を言っているのかよく分からない。恵のことで頭の中が一杯だ。
「………。」
「雫?」
「………を………」
静かに怒りと焦燥が湧き上がってくる。
「恵を………せ…!」
前に出て、男達の前にでる。
「おねえ…ちゃ…」
「あ?!なんだよ!てめぇ!!」
「……………」
「なんだ?命乞いか?いいぞ?言ってみろよ。もしかしたら気が変わるかもな?げへへへへ」
男達が品のない笑い声をあげる。
「恵を……」
「あ?なんだっ?」
「恵を離せ!!!」
「は?何言ってん――――」
男がなにか言いかけた瞬間、男達に雷が直撃した。
「かっ……は………」
男達が、地に崩れ落ちる。雷は何故か恵を避けたようで、恵は無事だった。
「恵!!!」
駆け寄って抱きしめる。
「良かった!!!」
「お姉ちゃん…。私は大丈夫だよ」
「――――捕らえろ!」
後ろで声が聞こえるが、気にせず恵を抱きしめる。
「けほっ…苦しいよお姉ちゃん」
そう言って笑う恵は、少し震えていた。
「恵…無事で良かったわ」
「フェリス…」
「雫、1度宿に戻りましょう」
「……うん」
踵を返して、宿に向かおうとしたら、呼び止められる。
「済まない、話を聴きたいのだが」
女騎士が、話しかけてくる。だが、今は時間が欲しいので、断る。
「ごめんなさい。今日のところは許してもらえませんか?」
「……そうですか。わかりました。では、明日の、八の鐘に、冒険者ギルドにて、お待ちしています」
「…わかりました。では」
そうして、宿に向かう。
…本当に良かった。今度は守れた。
宿に着く。部屋に入って恵に、話しかける。
「恵、疲れたでしょ、もう寝よっか」
「お姉ちゃん…」
「ん?」
「…一緒に寝てもいい?」
「…うん。寝よっか」
「うん!」
寝間着に着替えて、ベットに入る。
恵は少し震えていた。




